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右直関係における「直進車の交差点安全進行義務」。

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読者様から質問を頂きました。

読者様
読者様
右直事故の基本過失割合は直進車にも20%あり、その理由は事故になった以上は交差点安全進行義務の過失がある…という解説をみて思ったのですが、直進車が減速していたら直進車有利に過失修正されるのでしょうか?

結論からいうと、直進車が減速していたことを理由とする過失修正要素はありません。

 

そもそもの話。

(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

交差点安全進行義務は前段と後段に分かれている。

◯前段

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意しなければならない。

◯後段

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

この場合、直進車が交差点安全進行義務懈怠と評価されるには、前段の「当該交差点の状況に応じ、反対方向から進行してきて右折する車両等に特に注意しなければならない」と、後段の「当該交差点の状況に応じ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない」の問題になる。

 

一方、最高裁は「特別な事情がある場合を除き、交通法規に反する車両があることを予見すべき注意義務はない」とし、直進車は右折車が進行妨害しないことを信頼して通行することが許されるのは「信頼の原則」として確立されている。
この信頼の原則は業務上過失致死傷罪(過失運転致死傷罪)だけの概念ではなく、安全運転義務違反を考える上でも適用されることは最高裁判所第一小法廷  昭和46年10月14日判決が示す通り。

結果論で考えない道路交通法の義務と違反。
道路交通法の一部規定には、義務の発生と違反の成立が一致しないものがあると思ってまして、違反の成立を基準に考えるといろいろ間違う気がしてます。今回はそんな話を。合図車妨害たぶんこれが顕著に出るのは合図車妨害禁止の話。(左折又は右折)第三十四条...

交差点安全進行義務は昭和46年に安全運転義務から「交差点限定」として独立させた経緯からしても、交差点安全進行義務の懈怠を考える上では、信頼の原則が前提になっていると考えるのは当然のこと。

 

さて。

◯前段

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意しなければならない。

◯後段

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

これらから言えるのは、要するに右直関係における直進車の交差点安全進行義務とは、「右折車が進行妨害することを予見して通行しろ」という話ではなく、「右折車が直進車の進路を塞ぎ衝突する場合は、回避可能なら回避しなさい」という意味なんだと理解できる。
現に民事基本過失割合として直進車に20%が設定されている理由は、「事故が起きた以上過失がある」という発想ではなくて、多くの右直事故では軽度の前方不注視や若干の速度超過など何らかの「過失」があることを前提に設定したとなっている。

 

前方注視義務というのは、発見時点で急ブレーキを掛けた場合に衝突回避できたことを意味する。
また速度超過があったとしても、制限速度内であっても衝突回避不可能だった場合には「過失」にはならないのだから、結局ここでいう「過失」とは直進車が制限速度内で急ブレーキを掛けた場合に、回避可能だったのを怠ったことを意味する。

 

多くの右直事故では、直進車にも回避可能性が認められるから20%を前提にしてますが、回避不可能だった場合には既に基本過失割合の前提が崩れているのよね。

 

さて、さらに掘り下げます。
以前も書いたように、旧37条には2項がありました。

(直進及び左折車両等の優先)
第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、第三十五条第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該車両等の進行を妨げては ならない。
2 車両等は、交差点で直進し、又は左折しようとするときは、当該交差点において既に右折している車両等の進行を妨げてはならない

右折車は、左折車と直進車を進行妨害してはダメ(1項)。
けど、左折車と直進車は「既に右折した車両」を妨害するのもダメ(2項)。

 

これの解釈ですが、多数派はこうだったみたい。

青の位置は「未右折、右折中」、赤は既右折。

未右折車、右折車 既右折車
直進車を優先させる義務(1項) 直進車は既右折車を妨害禁止(2項)

右折しながら優先関係が変化するように見えてしまう。
これの何が問題かというと、未右折車→既右折車になるには1~2秒もあればなれる。
そうすると、直進車は「37条2項の違反」になることを恐れて、直進なのに徐行するしかなくなる。

本来は1項で直進優先のはずが、2項違反を恐れて直進車が徐行して、右折車が優先するという意味不明な状況に陥ると佐野判事が指摘しています。

 

なので「途中から優先関係が変わる規定じゃないんだ」という論文を出したわけ。

2項は、1項による直進車の優先関係が発生する以前に既右折状態に入った右折車がその後に発生した事情によって直進車の進路上にとどまらざるを得なくなった場合には、直進車はそのような状態にある右折車の進行を妨げてはならないことを規定したもので、運転者が直進中に、自車進路上、制動距離外に障害物を発見したときには、これとの衝突を回避すべきは条理上当然のことで、成文による規定を待つまでもなく、2項は不要の規定である。

 

判例タイムズ284号「交差点における他の車両等との関係(東京地裁 朝岡智幸氏)」、佐野判事の論文からの引用

直進車がいないから右折したけど、思いの外横断歩行者が途切れなくて停止が続いたとします。

この状況で直進車が現れたときに、「既右折車を妨害するな」というのが本来の2項だと指摘。
優先関係が途中で入れ替わる規定ではなく、直進車妨害にならない間に右折した車両にアタックするなという話なんだと。

けどそもそも、自分の進路前方に停止車両がいたら速度を落として事故らないようにするのは「条理上当然」。
2項のせいで優先関係が入れ替わるかのような誤解を生んでいるから、2項は削除されるべきと指摘したわけです。

 

結果、2項は削除。
その上で36条4項に交差点安全進行義務を新設した。

4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

「状況に応じ」、「対向右折車に特に注意し」となっているのは、要は佐野判事が指摘した内容をそのまま新設したような形になる。

 

そして信頼の原則や37条との兼ね合いから、「右折しようとする車両に特に注意」ではなく「右折する車両に特に注意」としたのだと考えられますが、

 

冒頭の読者様から頂いた質問って、運転レベル向上委員会が語る矛盾そのものなのよ。
あそこの人は「事故ったら過失」という都市伝説が好きみたいですが、あの人の話から交差点安全進行義務を「実践」するとしたら、右折「しようとする車両」が見えている状況では徐行(概ね時速10キロ以下)にする以外に方法はない。
そしてそれが37条の趣旨を蔑ろにし、むしろ右折車が強引な右折をするようになると指摘した佐野判事の指摘通りになる。

 

で。
右直関係において、直進車が交差点に進入しようとする際にアクセルを緩めて警戒すること自体は悪いことではない。
しかしそれをしても事故が起きたなら、減速したことを理由として過失修正するわけでもない。

 

そうすると結局、制限速度内できちんと前方注視していたなら、直進車に過失はないのよね。
それをきちんと立証している裁判事例を見たことはない。
要するに、多くの右直事故では直進車にも回避可能性が認められるから無過失を立証できないだけだと思われる。

 

この話はさらに続きますが、後日。
ちなみに大分の時速194キロ右直事故について、「右折車の方が過失が大きい」と語る人は著しい勉強不足なんだと捉えていいです。

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