もうメチャクチャだなあ…
救護義務違反(道路交通法72条1項前段)と報告義務違反(同後段)が併合罪だと解説してますが、最高裁は併合罪ではなく観念的競合だとしているのよね。
一 所論は、原判決は、被告人が普通乗用自動車を運転して歩行者に傷害を負わせる交通事故を起こしながら、負傷者の救護もせず、事故を警察官に報告することもせず現場から逃走したといういわゆるひき逃げの事実について、道路交通法七二条一項前段、後段に違反する各罪が観念的競合の関係にあるとした第一審判決を是認したものであつて、右は最高裁判所昭和三七年(あ)第五〇二号同三八年四月一七日大法廷判決・刑集一七巻三号二二九頁の判断に違反するというものである。
たしかに、所論引用の判例は、車両等の運転者がいわゆるひき逃げをした場合において不救護、不報告の各罪は併合罪となる旨判示したものであつて、本件と事案を同じくすると認められるから、原判決は右判例と相反する判断をしたものといわなければならない。
二 ところで、刑法五四条一項前段にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいい(当裁判所昭和四七年(あ)第一八九六号同四九年五月二九日大法廷判決・刑集二八巻四号一一四頁参照)、不作為もここにいう動態に含まれる。
いま、道路交通法七二条一項前段、後段の義務及びこれらの義務に違反する不作為についてみると、右の二つの義務は、いずれも交通事故の際「直ちに」履行されるべきものとされており、運転者等が右二つの義務に違反して逃げ去るなどした場合は、社会生活上、しばしば、ひき逃げというひとつの社会的出来事として認められている。前記大法廷判決のいわゆる自然的観察、社会的見解のもとでは、このような場合において右各義務違反の不作為を別個の行為であるとすることは、格別の事情がないかぎり、是認しがたい見方であるというべきである。
したがつて、車両等の運転者等が、一個の交通事故から生じた道路交通法七二条一項前段、後段の各義務を負う場合、これをいずれも履行する意思がなく、事故現場から立ち去るなどしたときは、他に特段の事情がないかぎり、右各義務違反の不作為は社会的見解上一個の動態と評価すべきものであり、右各義務違反の罪は刑法五四条一項前段の観念的競合の関係にあるものと解するのが、相当である。最高裁判所大法廷 昭和51年9月22日
要するにこれ、昭和38年最高裁大法廷判決では救護義務違反と報告義務違反を別のものと捉え、両者は併合罪の関係にあるとした。
しかしその後判例変更がなされ、最高裁大法廷は両者は併合罪ではなく観念的競合とした。
参考までに昭和38年最高裁大法廷判決。
よつて、審案するに、道路交通法は、道路における危険の防止と交通の安全、円滑を図ることを目的とするものであり、右目的達成のため、同法七二条は、その一項前段において、車両等の交通による人の死傷又は物の損壊の交通事故のあつたときの措置として、「当該車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定し、その後段において、「この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。)は……警察官……に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」と規定している。右規定の趣旨を前記道路交通法の目的に照らして考えると、同条項前段は、交通事故があつた場合、事故発生に関係ある運転者等に対し、先ず応急の処置として救護等の措置を執るべきことを命じ、その後段は、この場合、すなわち、右前段にいう交通事故があつた場合において、人身の保護と交通の取締の責務を負う警察官をして、負傷者に対する万全の救護と交通秩序の回復に即時適切な処置を執らしめんがため、運転者に右のような報告義務を課したものであつて、両者は、その窮極の目的を一にしながらも、その義務の内容を異にし、運転者等に対し各別個独立の義務を定めたものと解するのを相当とする。これがため、各義務違反に対する罰条も、前者に対しては同法一一七条、後者に対しては同法一一九条一項一〇号と各別に規定しているのであつて、要するに、交通事故があつたときは、前記運転者等は、救護等の措置と報告の措置の双方について、これが履行を義務づけられ、前者の義務を履行したからといつて、後者の義務を免れないのは勿論、前者の義務の履行を怠つた場合においても、後者の義務を免れず、これを怠るときは当然報告義務違反の罪が成立し、これと救護等の義務違反の罪とは併合罪の関係に立つものと解すべきである。
最高裁判所大法廷 昭和38年4月17日
救護義務と報告義務は社会的見解として一個の行為にあたるとして、昭和51年に判例変更され併合罪→観念的競合となっている。
要するに救護義務を果たさず逃亡する人は事故の発覚遅延や犯人性の回避を目的とするのだから、救護義務を果たさず警察に報告するということはあり得ず、両者は一個の行為なのよ。
けど謎なのは、執務資料をみればこれはわかる話だし、それこそ最近の救護義務違反の判例をみれば併合罪として処理されていないことくらい気づくのよね。
例えばブレスケアひき逃げ事件の東京高裁判決をみても、両者が併合罪として処理されてないことは容易にわかる(運転レベル向上委員会は同東京高裁判決を支持していたようですが…法曹界では東京高裁判決の矛盾を指摘する意見が見られ、最高裁が破棄したのはご存じの通り)。
執務資料は持っていることに価値があるのではなく、必要に応じて調べて理解することで価値を成す。
しかも普段から救護義務違反の判決文をみていれば、併合罪として処理されていないことくらいわかるのだから、思いつきで語る前にきちんと調べたらいかが?
運転レベル向上委員会の人は、動画を高頻度で作成公開するために調べることを犠牲にし、間違いが多発しているのよね。
ガセネタをインターネット上に大量投入している自覚はないのだろうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。

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