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「自賠責保険2台分」というのは絵に描いた餅。

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なんかまたおかしな解説をしてますが、

「赤信号でも行ってやろうと…」富山母子死亡事故。危険運転致死の成立要件と1.8億円超の損害賠償
2026年3月7日早朝、富山市八町の国道8号交差点で発生した、痛ましい衝突事故について独自の視点で解説します。赤信号を無視して交差点に進入した普通乗用車(シビック)と軽乗用車が衝突し、軽乗用車に乗っていた母子2名が亡くなりました。逮捕された...

この事故は赤信号を故意に無視し、しかも法定速度超過で交差点に進入し、青信号だったと考えられる「母親車(子供同乗)」と衝突。
母親車を運転していた母親と同乗していた子供が死亡したという痛ましい事故です。

 

なおこちらに衝突時の防犯カメラ映像があります。

猛スピードで交差点に突っ込み衝突する映像 親子2人死亡事故 赤信号無視の男を送検 危険運転致死容疑(2026年3月9日掲載)|KNB NEWS NNN
おととい富山市の国道8号で車同士が衝突し親子2人が死亡した事故で、赤信号を無視して交差点に侵入したとして危険運転致死の疑いで逮捕された26歳の男の身柄がきょう検察に送られました。

で。
運転レベル向上委員会は母親車に同乗していた子供が死亡したことについて、母親車と信号無視車の共同不法行為と捉えて、自賠責保険が2台分から計6000万支払われるとしている(自賠責保険は死亡時に3000万まで支払われるが、2台分から支払われるなら6000万だという主張)。

 

これは以前書いたけど誤りです。
自賠責保険というのは、自賠責基準という弁護士基準よりもはるかに低い算定額までしか支払われない。
自賠責基準で計算した場合、6000万になることはまずないので(せいぜい3500万~4000万程度)、2台分から支払われるとしても6000万にはならない。

 

そして自賠責保険は自賠法3条の賠償責任が生じたときに支払われるとしている。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずるただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
(責任保険及び責任共済の契約)
第十一条 責任保険の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。

母親車は青信号を普通の速度で交差点に進入し、信号無視車は赤信号を無視し著しい高速度で交差点に進入した。
母親車は急ブレーキでも衝突を回避することは不可能だと考えられるため、「自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと」が証明可能
そして信号無視車に問題があることは明らかなので、「被害者(※子供)又は運転者(母親)以外の第三者に故意又は過失があつたこと」は明らか。

 

つまり、母親は自賠法3条による子供への賠償責任を負わない「無責事故」になることはほぼ間違いないでしょう。
なお自賠責保険無責事故(支払い対象外)の三大要因は、信号無視、追突、センターラインオーバー(逆走)。

 

母親車は対子供の関係において自賠法3条但し書きにより賠償責任を負わないと考えるのが自然なので、「自賠責保険が2台分」というのはこの事故についてはほぼあり得ないでしょう。

 

この事故態様で、母親を共同不法行為者だと断定する神経もいかがなものかと思ってしまいますが…

 

ところでもうひとつ。
危険運転致死傷罪の改正で数値基準ができる件について、運転レベル向上委員会は「当初は進行制御困難高速度(2号)に数値基準ができる話だったのが、別規定になることになった」みたいな解説をしてますが、

危険運転致死傷罪「高速度類型」の新設案と、世間の誤解。
危険運転致死傷罪にかかる有識者会議の途中経過が報道されてますが、今回目指す改正の一つに「高速度類型」がある。これが全く理解されてない上に誤解の原因になっているので、ちょっと解説しようと思う。高速度類型の危険運転致死傷罪現行規定にある高速度類...

それは運転レベル向上委員会の勝手な思い込みで、当初から「進行制御困難高速度とは別に対処困難高速度を作る」という話だったのよね。
なぜなら、数値基準を設けたら過去に進行制御困難高速度危険運転致死傷罪として有罪になった事案の中に、危険運転致死傷罪が成立しなくなるケースが出てきてしまう。
上記事にも挙げているけど、状況によっては時速45キロでも同罪は成立しますが、

 

「制限速度+◯キロ」と規定したら、福岡地裁 令和7年9月22日判決や東京高裁 令和4年4月18日判決は危険運転致死傷罪が成立しないことになってしまう。

「限界旋回速度」と「進行制御困難高速度」は必ずしも一致しない。
以前書いた件ですが、危険運転致死傷の進行制御困難高速度については、カーブの場合「限界旋回速度」(カーブを曲がりきれるギリギリのスピード)を上回っていたか?が争点になることが多い。(危険運転致死傷)第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負...

だから進行制御困難高速度(2条2号)とは別に、対処困難高速度態様の数値基準をどうするかの議論をしていたのだから、最初から「別」なのは明らかなのよ。
運転レベル向上委員会が勝手に勘違いしていたに過ぎない。

 

そういうところもごまかそうとするのはどうかと思うし、自賠責保険2台分というのも、解釈がおかしい上にこの事故態様ではほぼあり得ない。
おかしな解説を繰り返して何をしたいのかわかりませんが、

 

個人的にはこの事故、被害者遺族の心境を考えたら勝手に賠償額を計算するようなことは無神経だと思ってしまうのよね。
解釈が明らかにおかしいから指摘しておきますが、この事故で母親車の無過失が立証できないと考えるのなら、かなり不勉強だと思う。

 

被害者のご冥福を。

コメント

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