結構前からですが、ロードバイク界には中華カーボンと呼ばれるものが流通しています。
中華カーボンと言うのは、大手ではない中華系のメーカーが作っているカーボンパーツで、フレーム、ホイール、ステム、ハンドル、シートポストあたりが多いでしょうか。
その中で最も多く流通しているのは、恐らくは中華カーボンホイールです。
中華カーボンと言っても、様々なものがありますが、中には怖いものもあるわけです。
カーボンは割れやすい?
特に初心者さんが懸念することですが、【カーボンって割れやすいって聞くから、怖いしアルミフレームを買おう】という考え方があります。
実はこれ、合っているようで間違いです。
素材的な話で言うと、カーボンはアルミよりもはるかに強度が高く、アルミよりもはるかに剛性が高いものです。
ちなみに、強度と剛性の違いはこちら。
http://roadbike-navi.xyz/archives/1245
でもよく言われることですが、
カーボンは割れやすく繊細だから、転ぶと割れる
カーボンは脆いから、オーバートルクで締めるとすぐに割れる
アルミフレームは剛性が高い
このような話はネット上でもよく見かけるでしょう。
でもよーく考えてください。
飛行機のボディは、最近だとカーボンが使われます。
割れやすい素材なら、空中で破裂して木っ端微塵になってもおかしくなさそうですが、そんな事例は聞いたことがありません。
そこで上で書いたことを解説します。
カーボンは割れやすく繊細だから、転ぶと割れる
これについてですが、カーボンフレームでも超軽量に仕上げたものなら、強度よりも軽量性を重視しているので、落車一発で割れるフレームもあります。
ただし、ツールドフランスなどのプロレースでは、プロ選手がかなりの速度で落車していますが、フレームが割れるという事例はあまりありません。
カーボンフレームが登場したての頃には、軽量性を追及して強度に不安があるものもあったのだと思いますが、近年のカーボンフレームでは、強度もしっかりと設計されているので、落車一発でフレームが割れる事例はほぼありません。
もちろん、絶対に割れないというわけではありませんが、単独落車でフレームが割れるのは、かなり運が悪いケースです。
カーボンは脆いから、オーバートルクで締めるとすぐに割れる
これについてですが、カーボンには方向性があります。
カーボンフレームは、カーボンのシートを様々な方向に並べて成型していくわけですが、強い方向と弱い方向が出てしまいます。
一般的にフレームに対してネジやボルトで留める箇所は、フレームに対して圧縮するような力を加えて固定します。
カーボンコラムのフォークだったり、シートポストだったり、ハンドルだったり、カーボンパーツに対して圧縮するような力で固定します。
その方向にはカーボンは弱いことが多いため、怪力で締め付けるとあっけなく割れます。
ただ、これについても昔ほどシビアではなくなっている気がします。
アルミフレームは剛性が高い
これはちょっと難しいところですが、素材だけで比較すると、カーボンのほうが剛性は高いです。
ただし素材ではなくフレームとしての剛性については、ちょっと話が変わってきます。
カーボンフレームの場合、ここは肉厚にして強度と剛性を高めて、ここは剛性をわざと落として・・・などという設計上のコントロールがしやすいです。
アルミフレームの場合、カーボンよりは自由度が少ないのが現状です。
アルミ自体は本来は柔らかい金属です。
クロモリ並みの細いパイプでアルミフレームを作れば、恐らくはフニャフニャな乗り味になるでしょう。
アルミフレームはパイプを大口径化して、パイプとしての剛性を高めているので、その結果【アルミフレームは剛性が高い】と表現されるのではないでしょうか?
ただし、近年はアルミの加工技術が上がってきているので、アルミフレームだから剛性が高いというわけでもありません。
またハイエンドのカーボンフレームのほうが、はるかに剛性は高いです。
エントリーグレードのカーボンフレームだと、意図的に剛性を落として乗りやすくしているモデルが多いので、そういうのと比べた場合には【アルミフレームのほうが剛性は高い】と言われるのです。
剛性については、結局は何かと比較しているわけですので、比較対象が何なのか次第で評価も変わります。
中華カーボンは割れる?
フレームでもリムでもそうですが、カーボンパーツはカーボンシートを様々な方向に並べて成型します。
それにより、剛性と強度を確保しているわけです。
大手メーカーのカーボンパーツは、こういう強度については設計段階からしっかり考えられていて、それでいて製品に対する耐久性テストもかなり行います。
衝撃を加えたときのテストなどですよね。
中華カーボンが安い理由ですが、設計や開発のコストを抑えているからです。
耐久性のテストも、大手のようなことはしません。
中華カーボンといっても、しっかりしているものもありますし、粗悪なものもあります。
それを一緒くたにするのも問題はあるかもしれませんが、ネット上で【中華カーボン 割れた】で検索すると、結構ヒットしてきます。
まずはこちら。
https://plaza.rakuten.co.jp/nanchattefire/diary/201711180000/
中華カーボンフレームが、使用2ヶ月で割れたそうです。
走行中に割れたら、結構危ないもんです。
2ヶ月で割れるというのは、一般的には初期不良レベルの話です。
続いてはこちら。
https://nyroadbike.blogspot.com/2017/11/blog-post_29.html
家でテレビを見ていたら、バンッ!という音とともにリムが割れたようです。
しかも5ヶ月間は使っておらず放置していたとあるので、走行中じゃなくて不幸中の幸いでしょうか。
前後で1000g以下の決戦用登りホイールのようですが、怖くて使えませんね・・・
続いてはこちら。
https://soranekobik.blog.so-net.ne.jp/2017-07-02
落車しているようですが、中華カーボンハンドルが折れたようです。
ハンドルについては、粗悪な中華カーボンだと、持っただけで危険なにおいすらするような薄さのものもあります。
安すぎるものと、軽すぎるもので中華かな買わないほうがいいかと。
こちらでは、荒っぽい作りの中華カーボンリムのトラブルのようです。
中華カーボンでは、精度が悪すぎるものや、雑な作りなものもあります。
こんなリムで走るのは怖いですよね。
中華カーボンフォークが割れたという事例です。
製造上の不備のようですね。
続いてはこちら。
https://ameblo.jp/puchimetaborider/entry-11852010957.html
中華カーボンリムが割れたようですね。
続いてはこちら。
http://paagee.com/tyuka-handoru-danmen/
中華カーボンハンドルを、ステムで締めすぎたら割れたという話ですが、これについては指定よりもオーバートルクで割れたのか、指定トルク内で割れたのかによっても話が変わるので、問題点がどっちなのかはわかりません。
大手メーカーのハンドルでも、全力で全体重掛けて締めれば、割れますので。
続いてはこちら。
https://ameblo.jp/jakmania/entry-12240533812.html
中華カーボンリムが割れたという事例です。
リムの場合、負荷が大きくかかるのはニップルホール付近です。
大手メーカーのカーボンリムだと、ニップルホール付近はカーボンの積層を厚くして盛っておいてから穴を開けます。
そのため、ホール数が異なるリムだと、どこを盛るか変えているわけですが、中華カーボンリムの場合、粗悪なものだとどのホール数でも同じものを使い、指定のホール数分だけ穴を開けるものもあるそうです。
そういうものだと、ニップルホール付近に亀裂が入りかねません。
こういうことを書くと必ずと言っていいほど、以下のような意見が来ます。
俺はもう何年も中華カーボンホイール使っているけど、割れたことなんてないし。
使う奴の荒さも関係するんじゃね?
ちゃんと使えば割れないから。
割れるかどうかについては、正直なところ運次第です。
粗悪な中華カーボンパーツでも、たまたま何らかの事情でそこそこまともなものを手にしただけの可能性もありますし、乗り方の荒さと言うものが関係する場合もあります。
1m以上の高さからジャンプして飛び降りたりすれば、それは荒っぽい乗り方ですし、アルミリムでも壊れるでしょう。
大手メーカーのものでも、壊れる可能性がゼロではありません。
ただし、一般的な使用環境に耐えられるだけの強度は設計段階で確保され、耐久性試験や衝撃試験などを行っているのが大手メーカーのカーボンパーツです。
耐久性試験や衝撃試験は、それなりの時間もコストもかかるので、中華カーボンメーカーはしません。
せいぜい、作った人がちょっと乗ってみて、【Oh!Good!】とか言っているレベルでしょう。
ENVEのカーボンリムに対する衝撃試験の様子です。
実験設備がないとできませんし、時間もコストもかかりますよね。
こっちの動画は、アルミフレームとカーボンフレーム、どっちが強いか?ということで実験していますが、これはメーカーなのかちょっとわかりません。
最後のほう、フレーム持ってバットのごとく打ちつけていますが笑
手のほうが痛いのではないでしょうか?
まともな中華カーボンもあれば、粗悪な中華カーボンもある
前に台湾在住の方に聞いたのですが、台湾にはかなりの数のカーボン工場があるそうですが、レベルが低い工場もあれば、ハイレベルな工場もあるそうです。
上のほうのリンクでも、カーボンリムの中にゴミと思われるものが混入して成型されたリムがありましたが、ゴミや埃が混入する環境でカーボンシートを貼り合わせたら、出来上がる製品がどうなるかはお察しの通りでして。
FFWDのリムも中華カーボンと言われます。
ただ、そこそこいい中華カーボンリムのようです。
SACRAも中華カーボンリムだと自称しているようですし、ホイールの出来については別として、リムが割れたという事例は聞きませんね。
ただ1つ言えることですが、どんなパーツでも、安いものには安いだけの理由があります。
粗悪なカーボンパーツを高値で売ろうとしても売れませんので、作りが雑でもその分安くしてたくさん売ることで利益を上げている可能性もあります。
なので安いカーボンパーツには、それなりのリスクがあると思っていいでしょう。
中華カーボン自体を全て否定するわけではありません。
そもそもですが、ほとんどのメーカーのフレームは、台湾や中国でOEMで作られています。
そういうのは、レベルが高くて品質がしっかりしているカーボン工場で製造されるわけです。
(一般的には、そういうのは中華カーボンとは言いませんが)
スペシャライズドでもキャノンデールでも、フレームは台湾で製造されているわけですので。
ただ、とにかく安値で売ろうというカーボンパーツは、雑な作りであることも多いわけです。
なので、
・安すぎるカーボンパーツは、手を出さないほうが吉。
・軽量すぎるカーボンパーツは、疑ってかかったほうがいい。
フレームにしろホイールにしろ、走行中に割れたら爆死する可能性もあります。
走行中にリムが割れると、こんな風に大落車しかねません。
5万円くらいで買える中華カーボンホイールもありますが、私は怖くて乗れませんね・・・
まともな中華カーボンもあれば、まともではない中華カーボンもあります。
比較的まともな中華カーボンでも、製品不良を掴むこともあります。
安易に安いからといって飛びつかないほうがいいでしょう。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント