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物損事故は安全運転義務違反になるか?

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交通事故を起こした皇治氏の処分は「安全運転義務違反」(法70条)となったそうですが、

皇治は昨年12月下旬、午前3時半頃に東京・世田谷区で愛車のフェラーリ・プロサングエを走行中に交差点で運転を誤り、街路樹などにぶつかる事故を起こし、大破した車を残してその場を立ち去ったことが問題視されて騒ぎとなっていた。

今年3月31日に書類送検されて事故が公になると、皇治は謝罪動画で「車が動かないため、レッカー移動を頼もうとしたが、連絡先が不明なため、スタッフに電話したところ誰も出ず、すぐ近くの自身の事務所に連絡先等を取りに行った。その間に警察から連絡があり、すぐに戻るように言われた」と説明した。

(中略)

安全運転義務違反だと、違反点数(基礎点数)が2点、反則金は普通車で9,000円といったところか。今回は物損事故になるため、これは保険適用になるのかもしれない。

皇治、“当て逃げ事故”騒動に決着!気になる疑惑と処分は?(イーファイト) - Yahoo!ニュース
格闘家の皇治が昨日18日、自身のSNSにおいて所属するTEAM ONE名義の書類を添付して「この度はお騒がせして大変申し訳ございませんでした。これからの人生安全運転で行きたいと思います」と謝罪コメ

一定数の人が勘違いしているのは、この場合は交通事故なので反則金(青切符)の対象ではない

(通則)
第百二十五条
2 この章において「反則者」とは、反則行為をした者であつて、次の各号のいずれかに該当する者以外のものをいう。
三 当該反則行為をし、よつて交通事故を起こした者
(危険防止の措置)
第六十七条
2 車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(以下「交通事故」という。)

反則通告制度(いわゆる青切符)について勘違いしている人が多いんだけど、反則通告制度は本来は検察送致して裁判所で処分を決める交通犯罪について、軽微な違反については反則金を支払うことで刑事訴追しないという特例制度

 

違反に伴い事故を起こしたなら既に「軽微な違反」とは言えないので、125条2項3号で「違反によって交通事故を起こした者は反則者として扱わない」としているのね。

 

なのでこの場合、反則金の対象ではないから安全運転義務違反の嫌疑で書類送検され、それとは別に行政処分として安全運転義務違反の点数2点が付与されるのが正解。

反則者とは

反則行為をした者であって、この制度の適用を受ける者である。一定の違反行為者を行政の分野からとらえた概念である。ただし、次の者は、反則行為をした者であっても反則者とはしない。その趣旨は、本来この制度が一定の比較的軽微な違反行為を反則行為とし、これに関して処理手続を定めることとしたものであるが、車両等の運転者の道路交通法違反事件につき、事案の軽重、性質に応じて合理的に処理するという目的からみれば、違反行為についてだけでなく、その違反行為をした者についても、反社会性または危険性に応じて処理することが適当と考えられたからである。このような観点から、反則行為をした者であっても、悪質または危険性の高いまたはこの制度の適用になじまない次の者を反則者から除外し、この制度を適用せず、当初から刑事手続により処理することとしたのである。

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

反則金制度は刑事手続きに移行しないようにする特例ですから…

 

ところで今回の事故は物損事故のようですが、物損事故は安全運転義務違反になるか?が問題になる。

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

安全運転義務は前段と後段に分かれる。

◯前段

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作しなければならない。

◯後段

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

前段の違反と捉えた場合には「ハンドルを確実に操作しなければならない」に違反するとも言える。
後段の違反と捉えた場合、物損事故が「他人に危害を及ぼさないような速度又は方法」に違反するのかが問題になりますが、下記判例がある。

起訴状公訴事実中第二の「大型貨物自動車を運転し、大阪市(略)道路を時速30キロ乃至35キロで北進中道路上に約50センチ突出た同人所有ビニール製固定式テントが設置されてあり反対側に駐車中の乗用自動車があつたのを前方約20mに認めた。此のような場合自動車運転者としてはこれら車輛及びテントの間はきわめて狭隘であるから前方特にテント及び前記自動車との間隔に留意して之等を注視し最徐行して進行し危険の発生を未然に防止しなければならない業務上の注意義務があるのにこれを怠り前記自動車のみに気をとられ漫然同一速度で前記自動車とテントの間を通過しようとしたため自車運転台上部右前を同テントに接触させて之を破損し、以て道路交通の状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなかつた」という点は事故が物的損害を発生させたのみであり、当時通行人もなかつたようで他人に危害を加えるような虞れはなかつたから道路交通法第70条に該当しない、従つて同法第119条第1項第9号によつて処罰することは出来ない。右第70条は他人に危害を及ぼさないような云々と規定されているので人の生命身体に対して危害を加える場合にのみ限定すべきである。因に同条は他人に危害云々といつており之は人を対象とする言葉であつて物を損壊した場合を含ませることは無理である。物の損壊の場合は損害と規定すべきで、人及び物の双方を対象とするときは損傷という字句がある。しかるに同条は其の表現を採用していないのは他人を人に限り他人の物を含ませない趣旨だからであると思う。

 

大津地裁彦根支部 昭和41年7月20日

70条後段は実際に他人に危害を及ぼしたことが要件ではなく、他人に危害を及ぼすおそれがある速度か方法で運転したことを違反とする(速度と方法を求めているのだから、速度又は方法に問題があれば違反は成立する)。
たまたま物損事故で終わったとしても、他の通行人がいたりすれば他人に危害を及ぼすおそれがあったことに変わりないので安全運転義務違反は成立する。

 

ちなみにこういう「事故を伴う交通違反」は起訴されるか?という問題があるのですが、統計データは「道路交通法違反の起訴率」という雑な括りになってしまい、事故未発生の否認事件も含まれてしまうため起訴率は明らかではない。
ただまあ、こういう事案の判例が残っていることを考えると、安全運転義務違反として起訴(略式起訴含む)することはあり得る。

 

けどなかなか不思議なのは、「交通事故の場合には反則金制度を適用しない」と法に書いてあるのに、交通事故の場合でも反則金を求められると勘違いしている人がわりといること。
反則金を支払ったら書類送検できなくなるわけで、あり得ないのよね。

 

ちなみに今回の事案は事故報告義務違反(72条1項後段)や危険防止措置義務違反(72条1項前段)も考えられますが、そちらは問題になっていない模様。
理屈の上では「直ちに」に違反すると考えられますが、そちらは情状酌量的な話なのか、それとも「レッカー移動する目的で事務所のスタッフと連絡を取ろうとしていた」ことから、危険防止措置/事故報告義務を取ろうとしていたことに変わりないという評価なのかはわかりません。

 

例えば以前話題になった「ブレスケアひき逃げ事件」。

「コンビニブレスケアひき逃げ事件」、最高裁が原判決を破棄し有罪確定に。
以前から注目し何度も取り上げてきた「飲酒運転発覚回避のため事故後コンビニにブレスケアを買いに行った事件」。かなり複雑な経緯を経た裁判なので先にまとめておきます。時期出来事2015/3横断歩道で被害者をはねて死亡させた<過失運転致死罪(自動車...

この事件は交通事故を起こした後に、被害者がどこにいるか捜索したものの見つからず、捜索を中断してコンビニにブレスケアを買いにいき「飲酒運転の発覚回避」を図ろうとした。
もしコンビニに行かずに捜索を続けてもしばらく発見できなかったなら、直ちに救護してないけど救護義務を果たすために捜索していたことになるのだから、仮に数分間発見できなかったとしても救護義務違反にはならない。

 

それと同じで、レッカー移動する目的でスタッフの連絡先を探しに行く行動を危険防止措置義務違反と言えるのかは難しい。
まあ、110番して警察の指示を聞くのが一番なんだけど、事故で気が動転して「110番の電話番号を教えてくれ!」と真顔でいう人もいますから…

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