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書類送検と書類送付の違い。

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ちょっと前に、埼玉栄高校のグラウンドで起きた事故について過失運転致死傷の容疑で「書類送検」し、傷害致死及び現場助勢の容疑で「書類送付」したという報道がありました。

男子高校生が死亡…窓から身を乗り出し、そのまま車が横転 深夜の高校グラウンドで 運転した17歳を書類送検へ 後部座席の2人、運転の17歳に加勢した疑いで書類送付へ 死亡の生徒、車体と地面に挟まれたか|埼玉新聞|埼玉の最新ニュース・スポーツ・地域の話題
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さて、「書類送検」と「書類送付」は何が違うのでしょうか?

 

まず大前提。
「書類送検」というのは正式用語ではなく、通称名です。
その上で刑事訴訟法ではこのように定めている。

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

警察が犯罪捜査したときには、書類と証拠物を検察官に「送致」しろとしている。

 

ところが告訴、告発を受けた場合には書類と証拠物を「送付」しろとする。

第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

つまり警察が告訴、告発によらず犯罪捜査した場合には「検察官に送致」するのであり、告訴、告発により犯罪捜査した場合には「検察官に送付」するという話になる。

 

では報道において、前者を「書類送検」、後者を「書類送付」と表現しているかというとまた別問題らしい。
一般に前者(告訴、告発によらず犯罪捜査した場合)については、メディアにおいて「書類送検」とするのが一般的。
ところが問題なのは告訴、告発により犯罪捜査した場合。

 

メディアの報道は告訴、告発による犯罪捜査なら「書類送付」とするわけではなくて、告訴、告発によるもののうち「起訴を求める意見を付さなかった事件」について「書類送付」と表現するのが慣例らしい。

 

なぜこうしているかを考えると、残念ながら推定無罪が働かない日本の世論では「逮捕=悪確定」、「書類送検=悪確定」という誤った概念に陥りがち。
逮捕は単に「捜査する上で逃亡や証拠隠滅を防ぐため」のもので「悪確定演出」ではないし、書類送検にしても犯罪捜査したなら書類送検することは義務なので、それ以上の意味はない。

 

しかし「逮捕や書類送検=悪確定演出」みたいな誤った考え方をする人が絶えないことから、「起訴を求める意見を付さなかった事件(つまり嫌疑なし、嫌疑不十分の可能性が高い事件)」を「書類送付」と表現し、区別する傾向にあるらしい。

 

つまり冒頭の事故については、傷害致死と現場助勢は「少なくとも警察の捜査では」犯罪と認めるだけの証拠は得られなかったが、告訴を受けた以上は検察官に送付する義務があるから送付した可能性が高いことになる。

 

推定無罪が働かない日本の世論では、警察が捜査した時点で悪確定演出みたいな雰囲気になる。
しかし法律上はそうではない。

 

ひどいのになると「この事故では現行犯逮捕されたから加害者に過失があると判断した」とか「現行犯逮捕されてないから被害者のほうが悪いと判断したのだ」などとおかしな解説をする人すらいますし、「書類送検されたから犯罪に当たるのは確実」みたいなおかしな話にすらなりますが、

 

法律上は「送致」と「送付」を分けており、メディアの報道においては告訴、告発によるもののうち「警察が起訴を求める意見を付さなかった事件」を「書類送付」という傾向にあるらしい。

 

ちなみにこちら。

運転レベル向上委員会は情報の「切り抜き」をして何をしたいのだろう。。。
いろんな意味で心配になりますが、まず一点目。この人は「書類送検」を理解してないのだろうか。刑訴法246条によると、警察が犯罪捜査をしたときには書類送検しなければならないとしている。第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法...

道路交通法の「道路」の解釈については、昭和の時代に様々な見解があり、無理筋な意見や現在では採用されてない意見もある。
その見極めには多数の解説書を見ないとわからないのですが、オススメは執務資料道路交通法解説(野下)、最新道路交通法事典(東京地検交通部)、判例タイムズ284号。
様々な見解を取り上げながら検討している点で理解しやすい。

 

最新道路交通法事典(東京地検交通部)は国会図書館のデジタルコレクションで閲覧できますが、昭和40年代の解説書としてはかなりのボリュームで、しかも宮崎注解、横井註釈、法務総合研究所、警察庁の主張を取り上げながらまとめているので、オススメ。
これらに警察学論集と月刊交通を組み合わせると、かなり理解度が上がるし、最新の事例は執務資料道路交通法解説を組み合わせれば理解しやすい。

 

執務資料を読んだだけだと疑問がぬぐえないことがありますが、これらを合わせて読むとようやく執務資料に書いてある真意が理解できることすらある。

 

例えば、執務資料にも38条1項の一時停止義務の意味は「歩行者に横断のきっかけを作った」みたいな記述がありますが、

 

当時の条文を確認して改正点を明らかにしてから、宮崎条解を見たほうが理解しやすい。

横断歩行者妨害の「一時停止」と「通行妨害禁止」を分けている理由。
ちょっと前になりますが、こんなのがありましたよね。これについてという声がまあまあありました。条文上はこうなってます。(横断歩道等における歩行者等の優先)第三十八条 (前段省略)この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横...
「横断歩行者妨害」という名前が悪いのか?横断歩行者妨害の改正史を読み解く。
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執務資料だけだと、流して読んでしまいそうになる記述が実は大事なポイントになっている。
立法理由と改正史、改正理由を見ていくほうが、横断歩行者優先規定の理解度が上がると思うんだけど、

 

そういう調べ方をする人は少数派なのよね。

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