なんか「追い越し禁止(30条)」と「右側はみ出し追い越し禁止(17条5項4号)」を混同する人が多いですが、
| 追い越し禁止 | 右側はみ出し追い越し禁止 | |
| 標識等 | ![]() ![]() |
|
| 根拠 | 30条 | 17条5項4号 |
| 追い越し | 禁止(ただし軽車両の追い越しは可) | 右側にはみ出ししなければ可能 |
追い越し禁止の「30条の標識等」があるときは30条の規定が適用され、右側はみ出し追い越し禁止の「17条5項4号の標識等」があるときは、17条5項4号の規定が適用される。
シンプルな話を混同する人が多いけど、横断歩道の標識等があるときには38条の規定が適用され、一時停止の標識等があるときには一時停止(43条)が適用される。
道路交通法と標識令が照応関係にあることに気づけば理解は早い。
さて。
似たような規制が30条と17条5項4号に別々に規定されている理由。
これは関東管区警察学校教官室 編、「実務に直結した新交通違反措置要領」、立花書房、1987年9月に書いてある。
もともと車両が追越しをする場合、道路の右側部分にはみ出して行われるもの(甲の態様)と道路の左側部分のみで行われるもの(乙の態様)とがある。
乙の態様の追越しは、甲の態様の追越しに比べて危険度が低いことから昭和46年6月改正以前は、法30条の法定追越し禁止のみで一応十分であると考えられていた。
したがって法30条の規定に基づく公安委員会の追越し規制は、危険度の高い右側部分へのはみ出しによる対向車との衝突を防止することを主たる目的として運用してきた。
特に法17条5項4号の「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る。」という右側へのはみ出しの判断を個々の運転者の判断に委ねることが不適当な場合には、あらかじめ法30条の規定に基づく規制として、右側部分へのはみ出し通行することが危険な場所を追越し禁止場所として指定するという運用を行ってきたため、当該禁止場所において、危険度の低い左側部分での追越しをも一律に禁止するという結果になり、実務上においても追越し禁止の標識に「前車が二輪である場合を除く」という補助標識を付置して、実質的には右側部分へのはみ出しのみを禁止する規制が一部府県において行われていた。
右のような矛盾を解消するため昭和46年6月の改正で
○追越しのための右側部分はみ出し通行禁止(法17条5項4号)
○追越し禁止(法30条)
の2つの態様に分けて規定された。関東管区警察学校教官室 編、「実務に直結した新交通違反措置要領」、立花書房、1987年9月
右側はみ出し追い越し禁止(17条5項4号)は昭和46年改正で新設されたもの。
追い越しには右側通行する「甲の態様」と左側部分で完結する「乙の態様」がある。

そして昭和46年に「はみ出し追い越し禁止」を新設する以前、追い越し禁止規制は主に右側はみ出しを規制する意味で運用していた。
元々右側はみ出し追い越しする場合には、「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る」としているけど、運転者がそれを判断することが不適当な道路にて一律右側はみ出し追い越しをさせないために「追い越し禁止」(30条)で規制していた。
しかし「追い越し禁止」を使った場合、左側部分で完結する二輪車の追い越しも規制されてしまう。

「甲の態様」を規制したくて30条の標識を立てたら、「乙の態様」まで規制されてしまう。
そこで一部の府県では、「前車が二輪である場合を除く」という補助標識を使いだした。
その結果、本来規制したかった「右側はみ出し追い越し」が容認されてしまう笑。

「前車が二輪である場合を除く」という補助標識を使いだした理由は、道路左側部分で完結する追い越しは規制対象ではないことにしたかった。
しかしその補助標識を使うと、前車がオートバイのときには右側はみ出し追い越しが容認されてしまう。
この矛盾を解消するために、右側はみ出し追い越し禁止という規定を昭和46年に新設したという。
ところで上記解説書にあるように、右側はみ出し追い越し禁止の規制(昭和46年以前は追い越し禁止規制)は、「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る」という右側にはみ出して追い越しする際の判断を運転者にさせたくない場合(つまり運転者が見通しの判断をせず一律禁止にしたい場合)に使うものだとする。
しかし現在のイエローライン(右側はみ出し追い越し禁止)をみると、何キロ、何十キロにも渡りイエローラインの規制を使っている。
本来は「ここだけはダメ絶対」というニュアンスで「必殺技」みたいな存在なのに、やたらイエローラインを多用したからその重みが薄れたのよね。
必殺技を常に出すヒーローなんていないでしょ。
常に必殺技を出されたら、飽きるのよ。
ところで、公安委員会が「ここぞ」という場所に限定することなくダラダラと何十キロもイエローラインを使う理由を考えると、イエローラインは公安委員会の意思決定()が必要で始まりと終わりの住所地と距離を示さなければならない。
細切れにしたら面倒というだけなんじゃないかとすら思えるし、おそらく細切れにしたら施工工賃も上がる。
そういう貧乏くさい理由なんじゃないかとすら思うのよね。
ところで、追い越し禁止と右側はみ出し追い越し禁止が別々に規定されている理由は上に書いた通りですが、現代においてどのように使い分けしているかはよくわからない。
昭和46年改正後の解説書によると、追い越し禁止は前後の車両間のリスクで、右側はみ出し追い越し禁止は対向車リスクだとしてますが、
問 法17条4項4号の「はみ出し禁止」は、軽車両を追越す場合にも適用されるのか。
答 適用されます。
法17条4項4号の「はみ出し禁止」は、追越し時における対向車との衝突事故を防止するために、道路の右側部分にはみ出すことを禁止したものです。したがって前車の種類に関係なく適用されます。
これに対して法30条の「追越し禁止」は、追越し行為に伴う危険を防止するため、追越しのための進路変更または前車の側方通過を禁止したものですから、前車が小さく、遅いもので、見とおしにさほど影響を与えない場合には、特に禁止する必要がありません。このことから法30条は前車が軽車両の場合、これを追越し禁止の対象から除外しています(前同質疑回答集9ページ)。
東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974
そもそも、右側はみ出し追い越し禁止のほうが便利…みたいな安易な発想に陥っているのではないか?
両者が別々に規定されている理由は書いた通りですが、では30条の標識等を残す必要はあったのか?
そういう観点で法律を整理することも必要だと思うわけよ。
法律の解釈はちょっと調べればわかるけど、解釈を理解した後に立法趣旨や経緯を調べると理解力が上がる。
目先の解釈にとらわれず、その先にもっと大事なことがあると思う。
例えば38条1項は一時停止義務と通行妨害禁止義務を分けてますが、分けている理由を調べれば、一時停止を要する「進路の前方を横断しようとする歩行者」とはどういう状況なのか理解しやすくなるのよね。

ホント誰か、各条の立法趣旨と経緯、改正史に全振りした解説書を書いて欲しい。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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