電動キックボードの件は何度か取り上げていますが、
この問題、事情もろくに知らずに語る人もいるわけですが、なかなか興味深い問題であると同時に、扱い方を間違うと大変なことになりうる問題です。
まずは調べて知ることが大前提ですが。
海外の電動キックボード事情
日本の電動キックボードへの法整備は、海外に比べて後れているといわれることもありますが、より正確に書くと【諸般の事情を考慮して慎重になっている】というのが実情かと。
韓国
韓国の場合、元々は電動キックボードに乗るには免許が必要でした。
16歳以上で自動二輪免許を持っていれば乗れて、ヘルメットが必須。
ところが2020年12月から道路交通法が改正され、13歳以上であれば免許なしで乗れるように変更されています。
自転車専用道路も通行可能で、最高時速は25キロほどの様子。
韓国では電動キックボードの利用者が急増していてシェア型の電動キックボードは2018年に150台だったのが、3万5820台(239倍)に増加。
しかも死亡事故も含めてそこそこ起こっているっぽい。
韓国の場合、元々は自転車を乗る文化がありませんでしたが、何年か前に国が自転車道を整備していました。
しかし事故多発により再度規制強化に踏み切っています。
フランス
フランスは当初法整備が無い状態で電動キックボードが街中を走り出して事故が多発。
今は罰則が出来ており、歩道走行した場合は最大135ユーロ、時速25キロ以上で走行すると1500ユーロの罰金があります。
現在の為替だと、1500ユーロなので日本円だと約19万円。
自転車レーンを走行するのが義務だそう。
フランスの場合、公共交通機関が遅延などで読めないことや、街中の渋滞が酷いことなどもあって、電動キックボードの需要が高い様子。
そのような背景で歩道を爆走して死亡事故まで起きているので、罰則を強化する方向性。
そのほか、いろいろ規制があるようです。
・歩道走行厳禁
・市街地から出ることの禁止
・時速25キロ以上の走行禁止
・制限速度50キロ以下の道路のみ走行可能
・二人乗り禁止
・8歳以下は禁止
・12歳まではヘルメット着用の義務
まあ驚くべきは、小学生でも乗れてしまうんですね。
以前の無法地帯よりは罰則強化に向かっているものの、罰則自体は約19万と高いものの、それ以外は緩めなのかも。
時速25キロ以上で走ると最大1500ユーロ(約19万円)の罰金。
けど小学生も乗れたりするという・・・
ドイツ
ドイツは2019年に電動キックボードが合法化されていますが、免許不要、14歳以上であれば乗れます。
ヘルメット装着の義務もありません。
ただし問題は山積のようで、重大事故や歩行者との衝突、転倒事故などが相次いでいるらしく、今後法改正で厳しくなる方向で検討されているようです。
速度は自治体により最高速度が異なるらしいですが、概ね18~25キロが最高速度になっているよう。
オーストラリア
オーストラリアは元々は緩めの規制からスタートしているようですが、事故多発の結果、現在はこのようになっているっぽい。
・時速25キロ以上は禁止
・歩道のみ可能(?)
・12歳未満は使用禁止
・16歳未満は大人の監視の下で使用可
・ヘルメットの着用義務
スピード違反だと最高174ドル(現在の為替だと15000円弱)。
まあ、各国で車道と歩道の状況は違いますし、公共交通機関(鉄道やバス)の信頼性も異なります。
なのでふーんくらいに思ってみていたほうがいいでしょう。
そのまま日本に当てはめることは無理ですから。
海外の事故状況
こちらに海外での事故の研究結果が出ています。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility/pdf/003_08_00.pdf
なかなか面白いというか、⽶国疾病管理予防センター(CDC)の調査結果。
9月~11月の3ヶ月間で192人の怪我人発生。
頻度としては10万トリップで20人が怪我をするということになっているのですが、
飲酒運転が29%
スゲーな、おいw
酒喰らって電動キックボードに乗れば、そりゃ爆死しても文句言えないだろと・・・
37%が速度が早すぎることが原因と回答
となっています。
Bird社によるレポート(2019.4) • 電動キックボードは⾃転⾞よりも安全
(⾃転⾞は100万マイル乗⾞あたり58.9件の救急外来への搬送に対し、電動キックボードは救急以外の全ての怪我を含み37.2件)
⾃動⾞事故により2017年には6000⼈の歩⾏者が死亡しており、10万⼈が救急外来に搬送。他⽅で、電動キックボードにより歩⾏者の死亡事故が発⽣した事例は報告されていない
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility/pdf/003_08_00.pdf
実際のところ報道ベースでみると、電動キックボードで頭部の怪我が300倍増えたとかそういう記事も出てきます。
よーく読むと、電動キックボードが普及する前と現在の比較だったりするので、台数が増えればそりゃ増えるだろという記事もあるのですが、台数の増加について触れられていない記事ばかりなので正確な把握が困難。
実際の事故事例も出ています。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility/pdf/003_08_00.pdf
走行が禁止されている高速道路で事故って死んだとか、そりゃそうなるだろというのもあります。
フランスの事故事例は、規制強化される前のもの。
歩道走行して歩行者を死なせたので、以後歩道走行は禁止になってます。
あと、電動キックボードで頭部の怪我が多いという報道も出ていますね。
自転車事故
日本ではこれだけの自転車事故が起きていますが、
https://www.itarda.or.jp/contents/170/info97.pdf
自転車事故でお亡くなりになったケースでは、そのほとんどが頭部への怪我となっています。
ただし日本においては、自転車に乗るときにヘルメットは義務化されていません。
警察庁HPでも、
自転車事故で死亡するうち、頭部損傷は約6割としています。
ヘルメット着用群と非着用群での致死率も2.4倍となってますが、それでも道路交通法上はヘルメットは任意。
ロードバイク乗りの中では、既にヘルメット着用は当然のこととみなすのが一般的です。
ロード乗るならヘルメットは当たり前だよね、というのが常識と言ってもいいでしょう。
プロレースでヘルメットが義務化されたのは2004年ですので、たった17年程度の間に不要だったものが必須になるというパラダイムシフトしたと言えます。
以前は非常識だったといってもいい自転車用ヘルメットが、常識化したという話ですね。
ただし法律上はヘルメット装着義務は無く、レースやロングライドイベントに出るときにはレギュレーションとして義務化されています。
従わないなら参加できないだけですが。
要は、義務化されていなくても、必要だと感じる人は被っているというだけの話です。
私はヘルメットを被っていますが、上も下も被っているのが常識ですw
原付も、国によってはノーヘル可能だったりしますし、国ごとに事情が異なります。
ということで
海外の大まかな事情と、日本の自転車事故の状況などを書いたわけですが、こういうところまで分かっていないと、電動キックボードについては語る資格もないと思うんですね。
自転車でも頭部損傷が死亡の6割を占める原因ですが、それでも義務化はされておらず、乗り手の判断に委ねられているという現実。
海外では電動キックボードへの政策で、失敗したところもあります。
フランスなんか、無規制の状態で好き勝手やらせたら、歩道爆走して歩行者を殺すという事態まで発生して。
その結果、規制強化に向かっています。
速度オーバーの罰金が約19万ですので、スゲーなと・・・
日本で今何をしているかというと、こういう海外での状況も踏まえた上での実験なんですよね。
これの意味すら分かってないで批判するような人もいる。
結局のところ、国としては海外のような間違いは踏みたくないけど、新しい移動ツールとしての価値はあると思っている。
だから現行法で原付扱いなのがハードルになっているとも言えるので、多少は緩和する方向に行きたい。
けど、緩和し過ぎて事故多発は避けたい。
だから一定の制限を設けて、実証実験して、その結果を報告せよという段階が今。
特定のレンタル事業者の電動キックボードで、時速15キロまでしか出ないもので、ノーヘル&自転車道走行の実験をしているのが今。
期限付き実験です。
要は製薬会社がやっている治験と似たようなもので、ちょっと規制緩和するとどうなるかの実験しているだけなんですよ。
これを理解せずに批判し出す残念なやつとかが出てきて、世論をコントロールしようとする。
実験の結果や方法について検証するのはいいと思うけど、実験であることも理解していない人が批判とかしだすともう目も当てられない。
調べるって大切だなぁと痛感します。
知りもしない政策を批判するとか、ありえないし。
実験の結果や手法について論ずるのはいいと思うんですけどね。
前の実証実験、確か走行距離が2600キロで事故ゼロとなっているはずですが、
距離として妥当なのかどうかがイマイチ分かりませんw
電動キックボードの移動距離から考えると多いと見て取れるのかもしれませんが。
この電動キックボードなんですが、
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility/pdf/003_08_00.pdf
このような4輪のものもあるので、こういうのを使ったほうが事故は少ないんじゃないかと思うのですが。
コーナーリングで転びやすいのかどうかはわかりません。
あと、二輪のものでもそうなんですが、
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility/pdf/003_08_00.pdf
何か買い物して手提げ袋をハンドルに掛けて走行すると、ハンドル取られてふらつくなど、かなり危ないはず。
私なりに考えると、
・時速15キロ程度しか出ない
・ヘルメットは任意
・出来れば4輪の電動キックボードを推進
・歩道は不可(自転車道と自転車レーンは可)
・自賠責必須
このあたりをしっかりやれば、新しい法区分として電動キックボードがあってもいいんじゃね?と思うのですが。
危険だと思う奴は乗らなければいいだけで、それは自転車も同じ。
自転車のほうが現状では圧倒的に事故が多いし、死亡者も多いわけですが、調べもせずに批判する人って、自転車禁止論に向かわないのも不思議。
速度が出ている状態で小石などに引っ掛けると、車輪が小さい分吹っ飛びやすそうな気がしますが、問題なのはそれの発生頻度がどれくらいなのか?というところ。
自転車でも、グレーチングに引っ掛かって吹っ飛ぶ人も普通にいるわけですが、
だからといって自転車を禁止にすべきとか、ヘルメットを義務化しろという話にはならない。
そういう事故の発生頻度がどれくらいで、ほかの乗り物に比べて事故リスクがどうなのか?というところが問題なので。
そしてそれを知るためにも、速度を下げて実証実験しているだけ。
やっていないとわからないことがあるので、いきなり法改正で解禁するのではなく、まともな業者に限定して規制緩和して人体実験・実証実験しているだけなんだよね。
とりあえず言えるのは、今は実証実験中で、結果次第で日本での扱いが変わる可能性があるということ。
国も警察も、海外での状況を知っているからだと思いますが、相当慎重に進めている。
海外のように、とりあえず解禁してみたら事故多発みたいなのは避けたいのでしょうし、日本人特有の生真面目さみたいな感覚から、法改正には慎重なのかもしれません。
実証実験で事故多発なら、恐らくは現状の原付区分のままに落ち着くでしょうけど。
そりゃ最高速度を上げて自由に走らせれば、事故多発は目に見えている。
海外での事例を見る限り、乗りなれていない人が自損事故起こしているケースが多いようですが、乗りなれていない奴が乗ってみたり、酒飲んで乗れば事故が増えるのは当たり前。
乗り慣れてなくて転倒事故を起こしても、基本は自己責任なんですよね。
それもあって私は乗りたいと思いませんが、短絡的な見方しか出来ないような残念な人も世の中にはいます。
最低でも、今、何をしている段階なのかは調べて理解する能力が無いと、語るのは難しいところですね。
単なる人体実験中みたいなもんですし。
新薬でも治験と称した人体実験を重ねて製品化されるわけですが、それと同じ段階。
まあ、調べることを放棄しているような人だと、そりゃ全体像は掴めないからおかしくなるだろうなと思います。
表現の自由って、責任を伴うと思うんだけどなぁ。
調べないと公言する人って、責任持たないと公言しているのと同じなわけで、個人だからいいんだなどと逃げセリフを使うだけなんだろうな。
第三者の個人が間違っても、許されないと言いながらも。
とんでもない矛盾ですね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
キックボードはサイクリストにとっては、スケボーやその他車輪付き遊具と一緒で、動くシケインになるので、あまり広がってほしくないというのが本音です。
とは言え合法化するならするで、しっかりと実情に沿った法整備して欲しいです。
ヘルメット義務化については、一長一短があり、近年の韓国でこんな事がありました。
中国のシェアサイクル市場拡大に習う様に、韓国でもしれサイクル事業が軌道に乗り始めていました。
しかし2018年9月に自転車のヘルメット着用義務化が施行され、シェアサイクル事業が壊滅的なダメージ受けて伸びなくなったそうです。
ヘルメットを持ち歩くのも手間ですし、備え付けヘルメットは衛生的にかぶりたくないってのが理由ですね。
そもそもヘルメットかぶってまで自転車通勤をするなら駅から会社まで歩く人が殆んどですし。
自転車の文化を広げるには、初期においてヘルメットは足かせになるという事例です。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、しっかりした法整備にはしてほしいところですね。
できればフル電動自転車の連中も駆逐して欲しいところですが・・・
韓国の事例ですが、シェアサイクルのヘルメットの多くが、借りパク状態でかなり盗まれたという話も出てますね。
なかなか難しいところなのかもしれませんが・・・