スウェーデンの保険会社FOLKSAMが、自転車用ヘルメットに対する試験結果を公表しています。
プロ選手がレースに出る上で、ヘルメットが義務化されたのは2004年とそれほど歴史が長いわけではないですが、ヘルメット会社は、安全性をいかにして高めるかと日々研究を重ねているわけです。
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ヘルメットの検査手法
FOLKSAMでは、23種類の自転車用ヘルメットに対して、5つの力学的な力をヘルメットに加えることで、ヘルメットの衝撃吸収試験を行っています。
2つの垂直衝撃テストと、3つの斜め衝撃テストです。
斜め衝撃を行う理由としては、実際の事故ではヘルメットに垂直な力がかかるよりも、斜め方向への衝撃がほとんどだから。
斜め方向への衝撃から、回転加速度により脳損傷を引き起こすこともよく知られています。
これらが実験方法。
実際に自転車事故で頭部に衝撃が加わったときは、単純な垂直衝撃による損傷よりも、斜め方向に加わった衝撃で【脳が頭蓋骨内でズレる】ように動くことで、脳損傷を起こすとする論文も多いので、このような手法で検査したようです。
実験結果
実験結果によると、8つのヘルメットで、FOLKSAMの【推奨】と認められました。
具体的には、以下の8つです。
・Bell Super Air R MIPS
・Biltema Cykelhjälm MIPS
・Bontrager Specter WaveCel
・Hövding 3
・OCCANO MIPS HELMET
・Scott Vivo Plus MIPS
・Specialized S-Works Prevail II ANGI MIPS
・Tec Quadriga MIPS
FOLKSAMでは、斜め方向への衝撃の結果として起こる【回転荷重】をいかに減らすかが重要であるとしていて、単純な垂直衝撃による耐久性のほか、回転荷重をいかに減らす作りであるかが、脳損傷を防止することにつながるとしています。
垂直方向の衝撃は、頭蓋骨の骨折に関わる損傷で、回転荷重は脳損傷に関わるというところでしょうか。
結果では、このように記されています。
During this time the proportion of helmets
fitted with additional new technologies aimed at reducing rotational acceleration has
increased even though this was not required to pass the certification test. In the present
test 18 out of 29 had some of these technologies. In general, helmets equipped with technologies aimed to reduce rotational acceleration performed better than the others. However, all
helmets need to reduce rotational acceleration more effectively. The initial objective of the
helmet standards was to prevent life threatening injuries, but with the knowledge of today
a helmet should preferably also prevent brain injuries resulting in long‐term consequences.
Therefore, helmets should be designed to reduce the translational acceleration as well
as rotational acceleration. A conventional helmet that meets current standards does not
prevent a cyclist from sustaining a concussion in case of a head impact. In addition to
an improved performance regarding protection of rotational loading, helmets also need to
absorb energy more effectively.
以前はヘルメットの目的や基準として、いかにして命に関わる怪我を防止するかに当てられていたけど、最近では回転加速度をより効果的に軽減させて、脳への長期的な損傷を防ぐにはどうしたらいいのか?という観点でも作られているということですね。
回転加速度を軽減させるヘルメットは、脳震盪による長期的な脳への損傷を防ぐと考えられているということです。
ヘルメットの重要性
ロードバイクのヘルメットについては、その有効性はある程度立証されていると私は思っています。
まあ、いまだにいろんな理由をつけて、ヘルメットを被るべきではないと主張する少数派もいるんですが。
ロードバイクに乗る上で、ヘルメット着用は任意です。
被るかどうかはその人の判断に任されます。
レースやイベントなどでは、ほぼ100%、ヘルメット着用が義務になっていると思いますが。
昨年だったと思いますが、トレックが【もうすぐ、重大な発表があるぜ!】と謎の予告をして、新しいフレーム素材でも発表するのか??と話題になってましたが、まさかの新ヘルメットで大変驚きました。
この技術に対しては賛否両論あったようですが、今回のFOLKSAMの実験では、ボントレガーのWAVECELも推奨ヘルメットとなっており、一定の効果が高いと認められたといっていいでしょう。
MIPSのヘルメットも回転荷重を抑えることで知られています。
MIPSはMulti-directional Impact Protection Systemの略で、他方向からの衝撃に対応している構造。
ヘルメットを被っているからといって、確実に命が助かる保証はないですが、現代のロードバイク用ヘルメットは、かなりの研究に基づいて作られています。
速く走ることには危険が伴いますので、速さと安全性を両立するにはどうしたらいいのか。
その一つの答えは、ヘルメットを被ることかなと考えます。
まあ、それ以上に大切なのは、自分が制御できないスピード域にならないようにコントロールすることも大切。
公道をサイクリングする上では、車の動きもよく見て、お互いに譲り合う気持ちも大切。
ヘルメットも、安全性を高めるための【一部】に過ぎないんですけどね。
被っていればそれだけで安全だというものではなくて、安全性を高めるパーツの一つに過ぎないけど、重要な一つ。
いかにして安全性を高めて楽しむか、その一つの答えがヘルメットです。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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