先日もちょっと触れた内容なのですが、
T字路での【正しい】右折方法についてです。
正直なところ、今更感がある内容なんですが、間違った情報を鵜呑みにされると大変ですので、正しい情報を確認しました。
T字路での自転車の右折方法
この件ですが、そもそもは読者様からの問い合わせに基づくものです。
少し前の事になってしまいますが、Twitterで気になる投稿を見かけたのでよろしければ質問させて下さい。
https://twitter.com/vostok061/status/1260929533617692679?s=20こちらの一連のツイート、CASE4は間違いで、右折先の信号に従わないといけないと思うのですが、いかがでしょうか?
バズっているわりに指摘する声が殆どなかったので不安になりまして。
CASE6は、交通の流れ的にはAの待機位置がいいですが、法的にはBの位置で問題ないかと思います。
こちらのツイッターの方、札幌の警察署に聞いてきたとの話で、T字路で二段階右折する必要がないと回答されたとしています。
先に正解から書きます。
T字路では、自転車は二段階右折が必須です
二段階右折しない場合は、違反になります。
ちなみに信号機がないT字路の場合、当たり前ですが二段階右折する必要はありません(出来ないので)。
前の記事でも書いたように、
道交法2条で、交差点の定義があります。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
五 交差点 十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう。
つまり交差点と書かれているところは、T字路も十字路も扱いは同じです。
道路交通法34条の3で自転車の右折方法が定義されています。
道路交通法第三十四条
3 軽車両は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
原付の右折規定は、道交法34条の5です。
道路交通法第三十四条
5 原動機付自転車は、第二項及び前項の規定にかかわらず、道路標識等により交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につき交差点の側端に沿つて通行すべきことが指定されている道路及び道路の左側部分(一方通行となつている道路にあつては、道路)に車両通行帯が三以上設けられているその他の道路(以下この項において「多通行帯道路」という。)において右折するとき(交通整理の行われている交差点において右折する場合に限る。)は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。ただし、多通行帯道路において、交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につきあらかじめ道路の中央又は右側端に寄るべきことが道路標識等により指定されているときは、この限りでない。
読んでもらえばわかるように、条文自体は全く同じです。
原付の場合は、一定条件の場合のみ【あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない】で、自転車の場合は条件付けがありません。
この条文で原付では二段階右折しないと違反なので、自転車だとシングルターンOKになるわけもありません。
道路交通法施行令には信号機の意味が規定されています。
第二条 法第四条第四項に規定する信号機の表示する信号の種類及び意味は、次の表に掲げるとおりとし、同表の下欄に掲げる信号の意味は、それぞれ同表の上欄に掲げる信号を表示する信号機に対面する交通について表示されるものとする。
一 歩行者は、進行することができること。
二 自動車、原動機付自転車(右折につき原動機付自転車が法第三十四条第五項本文の規定によることとされる交差点を通行する原動機付自転車(以下この表において「多通行帯道路等通行原動機付自転車」という。)を除く。)、トロリーバス及び路面電車は、直進し、左折し、又は右折することができること。
三 多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。
なのでT字路で信号が青の場合、軽車両(自転車)はそもそも直進と左折しかできない規定になっています。
直進の中には【右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む】とあるのですが、これに加えて赤信号の規定。
一 歩行者は、道路を横断してはならないこと。
二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。
三 交差点において既に左折している車両等は、そのまま進行することができること。
四 交差点において既に右折している車両等(多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両を除く。)は、そのまま進行することができること。この場合において、当該車両等は、青色の灯火により進行することができることとされている車両等の進行妨害をしてはならない。
五 交差点において既に右折している多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、その右折している地点において停止しなければならないこと。
これにより軽車両は二段階右折しないといけない規定になっていると読めます。
道路交通法34条の3に基づくと、
・あらかじめ道路の左端に寄って
・交差点の側端に沿って徐行
そうして右方向に進路を変えれば、その方向の信号は赤ですので、そこで停止して信号待ちしないと違反です。
ちなみに確認先は、北海道警察本部交通企画課です。
また神奈川県警にも確認を取っています。
どちらも【地域により解釈や適応が変わることは絶対にない】と明言されています。
道路交通法には、各都道府県の法の適用ために【道路交通法施行細則】などと呼ばれる条例があります。
一通りほとんど全ての都道府県の条例を確認しましたが、左折・右折について条例で定義している事例はゼロです。
なので大元の道路交通法に従うものになるので、地域差が出ること自体があり得ません。
道警本部の担当者さんには、一時間近く掛けて、法の条文から調べていただきました。
こんな件でご迷惑おかけし、法令をきちんと調べた上でご回答頂き、大変感謝しています。
現場レベルの警察官でも、信号機があるT字路での右折方法を間違って教える可能性は基本あり得ないとのことですが、このツイッターの方、聞き間違いかなんかではないでしょうか?
それか前提条件を誤解されたか。
これ、例えばなんですが、
対面に渡って歩道に入って走る話なら、ある意味ではこのツイッターの方の話で間違っていません。
もしくは、信号機がないT字路の話と誤解されたのではないでしょうか?
信号機がないT字路だと、渡ったあとに信号機がないので、二段階右折と言ってもいつ発進すればいいんだ??となりますから。
左追い越しの件
こちらのケース6についても、Bまで進んで何ら問題はありません。
というのも道路交通法の追い越しの定義はこうだからです。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる
二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
追い越しの定義は【その進路を変えて】なんで、進路を変えずに左からすり抜けする行為は、追い越しにならないので、違反ではありません。
これ、道交法では定義されていませんが、追い越しと分ける意味で【追い抜き】と言われることが多いです。
で、前車が完全停止している場合は、原則として追越し自体に当たらないので、側方通過とされます。
このケース、前車が完全停止している状態とみているのか、停止に向かって徐行なのかがわかりませんが、どちらにしても追越しにはならないので、違反にはなりません。
ただしこのツイッターの件、Bの位置で待っているほうが安全なことも多いです。
お互いが直進すればどうせ速度差の関係で、車に追い越しされるので、それなら無理に前に出ないほうがよい。
前車が左折するのであっても、ロードバイクが前にすり抜けて出るタイミングを間違うと、危険ですし。
後ろで待っていて左折完了してから進んでもいいわけですし、このあたりは道路構造、後ろの車の状況、横断歩道の状況など様々な要素で変えるべきかと。
この件、大変失礼ながら非常に不可解なことを書いていらっしゃって、
見解は全国一律ではないこと
左折、右折の方法などについては、見解は全国一律です。
これは道警本部も、神奈川県警も絶対に間違いないと言ってますし、法や条例を確認しても、都道府県の条例で左折・右折が定義されている事例を見つけることが出来ませんでした。
というより、左折・右折方法が全国一律ではなかったら、怖くて違う都道府県なんて走れないですが。
ある都道府県では二段階右折不要で、違う都道府県では二段階右折必須とかだったら、怖くて走れません。
このツイッターの方、何かを聞き間違えたのか、対応した警察官が何かしら前提条件を間違えたのかわかりませんが、不正確なのでご注意ください。
というより、ロード乗りなら常識だと思うのですが・・・
二段階右折の意味
二段階右折する意味は、対向車との関係性だけの話ではありません。
道交法上、車両が右折するときは出来る限り道路の中央寄りに移動してから右折することが求められています。
自転車で二段階右折を求めている理由は、速度が遅い自転車が道路の中央に寄る行動が危険という話。
対向車がいないT字路だから二段階右折不要ということはありませんのでご注意を。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
>左追い越しの件
>Bまで進んで何ら問題はありません。
wayback machineでツイ消しされた当該ツイートを見ましたが、当該ツイートはどの図も簡略化されていて横断歩道の記載が省略されているので具体的な状態が不明でなんとも言えないですが、通常考えられる横断歩道のある信号での信号待ちの場合、道交法第38条第3項で横断歩道から30m以内での側方通過は自動車側は第30条で規定されている場所を除いて軽車両の側方通過は出来てもその逆に軽車両での側方通過は除外されているので、昭和42年以降は自転車での側方通過(B地点までの走行)は違法ですね。
すいません、よくよく見ると自転車がここで追いつく場合常識的に考えると車両は停止してるのでこの場合はセーフですね…見なかったことにしておいてください
コメントありがとうございます。
38条2項と3項は、横断歩道が赤信号の場合が除外されていることも合わせてご確認ください。