自転車道関連の話は何度も書いていますが、道路に自転車道がある場合、自転車は自転車道の通行義務があります。
第六十三条の三 車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽けん引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
やむを得ない場合というのは、工事中などを指します。
なのでロードバイクで車道を通行しているときに、同じ道路上に自転車道がある場合には自転車道を通行しないと通行区分違反となります。
これについてちょっと不可解なことがあったので調べていたのですが、一旦解決したので説明を。
【結論】自転車道の通行義務
先に結論から。
自転車道がある道路の場合、基本的には道路標識325の2があります(無くても成立しますが)。
なのでこの道路標識がある場合は、一部例外はあるものの自転車道以外を走ったら違反と考えればいいです。
自転車道の定義はこちら。
縁石や柵などで仕切られた自転車道がある場合には、自転車道を通行しないと違反となります。
この道路標識について、公安委員会が指定して設置する場合と、道路管理者が設置する場合の2種類があるのですが、これについて調べていましたがやっと解決しました。
道路標識の有無
上で書いた内容の解説になります。
自転車道には原則として、道路標識325の2があります。
これの効力について調べていました。
この道路標識ですが、公安委員会が設置する場合と、道路管理者が設置する場合の2パターンあります。
道交法4条によると、道路標識が道路交通法上の効力を持つには、公安委員会が指定することが要件になります。
第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。
つまり道路管理者が設置した自転車道の標識(公安委員会が指定していない)では、道交法の自転車道とはならないのではないか?という疑念。
実際、ある警察署からは、公安委員会が指定していない自転車道については道交法では自転車道ではないと回答がありまして。
いろいろ調べた結果、この解釈自体が間違いでした。
理由は自転車道の定義にあります。
例えば車両通行帯の定義はこうなります。
横断歩道の定義はこうなります。
四 横断歩道 道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。
これらは道路標示もしくは道路標識で示すことが要件なので、道交法4条の規定により、公安委員会が指定した標識じゃないと効力を発揮しません。
つまり車両通行帯や横断歩道として認められるには公安委員会の決定が必要になる。
ところが自転車道の定義。
道路標識も道路標示も求められていない。
なので自転車のために縁石や柵で仕切られているなら、道路標識の有無に関わらず道交法上では自転車道になるという話です。
これについては国土交通省のHPにも記載があります。
自転車道は、道路標識の設置の有無に関わらず、縁石等により構造的に車道及び歩道を分離し整備することにより、道路交通法による普通自転車の通行義務が発生します。道路標識(325の2)は、道路管理者、公安委員会のいずれが設置しても、普通自転車の自転車道の通行義務は適用されます。
道路: 「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」についてよくあるご質問と回答 - 国土交通省
なので道路標識325の2がある場合は、原則として自転車はそこを通行しないと違反と考えることが出来ます。
実際、国道16号相模原の自転車道についても、公安委員会の指定を受けていないそうです。
道路管理者(国道なので国土交通省)が道路標識を設置したに過ぎない。
しかし通行義務は発生します。
縁石や柵などで仕切られているなら、自転車道としての要件を満たすからです。
道路標識は必須要件ではありませんが、道路標識325の2が付いていることが普通。
ところが例外もあります。
国道357号の金沢区エリアには自転車道があります。
管轄の金沢署に確認を取ったところ、ここについては警察的には道交法上の自転車道とは考えておらず、車道を通行しても違反とはしないそうです(R3.5.28金沢署回答)。
前にも書いたように、国道357号の自転車道。
片側にしか自転車道が無く、かつ中央分離帯も大きいため反対側に自転車道の存在があることはどうやっても気が付くことは不可能。
しかも、ガードレールに阻まれて直進できない箇所があったり、
自転車道の入り口で気が付かないと、何キロにも渡って自転車道に入れない。
とは言え、国道357号の【自転車道】についても、どうみても柵で仕切られた構造なので、道交法上も自転車道になるはず。
一部、歩道との間に柵がない場所もありますが、そこについては自転車道の標識が【ここまで】となっていて、自転車歩行者道になっています。
これについて相模原署と金沢署で意見の食い違いがあると思うので確認を取ってもらったのですが、金沢署の考えでは道交法上の自転車道とは考えていないため違反とはしていないそうですが(金沢署回答)、事故などが起きて民事裁判になった時には自転車道と判断されるかもしれないとのこと(相模原署回答)。
なぜ国道357号金沢区エリアの【自転車道(自称)】を、警察が道交法上の自転車道と捉えていないかについて。
この自転車道ですが、元々は歩道と車道に挟まれた緑道だったそうです。
元々の扱いは公園?歩道?みたいな存在なんですかね?
https://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama/report/2008/20080425-01.pdf
相模原署の方も非常に苦しい回答になると言ってましたが、諸般の事情を考慮すると、国道357号の金沢区エリアについては、歩道の一部と捉えることにしているようで、道交法上の自転車道として規制対象とまでは考えていないという結論だそうです。
関係する要素があるとしたら以下の点かと。
・元々が緑道で、ガードレールに阻まれて車道からの進入が困難。
・道路の片側にしかない。
・一部、歩道との間に柵がない場所もあるから?
・ゴニョゴニョ(苦しい話w)
ただしロードバイクが車道を走っていて何らかの事故が起きた場合に、裁判になってどう判断されるかは不明だそうです(相模原署回答)。
柵で仕切られているので、道交法上は自転車道とみなされてもおかしくない。
そうなると車道を走っていて事故を起こした場合に、自転車道があるにもかかわらず通行区分違反を起こして事故を起こしたと認定され、過失が増える恐れもゼロとは言えない。
けど諸般の事情を考慮して、金沢署では自転車道とまではみなしていないという苦しい解釈のようで。
お互いに苦笑いしながら、苦しいっすねwという感じで話を聞いていました。
このように曖昧な感じなので、自転車道があるときは、そこを通行しておけば確実。
国道16号相模原については、道交法上で通行義務があるため、指導対象としていることは確認済み。
国道357号金沢区エリアについては、指導対象とはしていないという結果です。
ちなみに、自転車道の定義。
前に書いた国道16号の解説でちょっと紛らわしい表現になっていますが、元々歩道だったか車道だったかという話ではなくて、縁石や柵など工作物で仕切った自転車道は車道とみなしますよという意味が正解。
例えば、元々異常に歩道が広い片側1車線道路があったとして、
歩道を縮小して片側2車線道路にしたとします。
拡張されて出来た第一通行帯に当たる部分が、
こんなバカな話になるわけもない。
元・歩道でも、今は車道だよねということになりますよね。
元・歩道だから、歩道通行で違反だ!と車の取り締まりを出来るわけもなく、歩道と車道は工作物で仕切ればそれで成立します。
なので歩道上に自転車道を作っても、その自転車道は車道にすることも出来る。
けど国道357号金沢区エリアについては、警察の考えは歩道扱いのようで、そうすると自転車道の要件を満たさないという解釈にしているそうです。
けどまあ、元々歩道だったのか車道だったのかが関係するとも言い切れず、警察が車道だと思っていれば道交法上も自転車道、柵で仕切っていても歩道だと考えているなら道交法上の自転車道にはならないみたいな感じのようです。
まあ、歩道上で【自転車専用】の標識を付けて柵で仕切った歩道・・・どうも納得いく話でもありませんがw
自転車専用の歩道って・・・車両なのに歩道?と謎解釈にしか思えませんが、国道357号金沢区エリアについては歩道の一部と解釈するそうです(同じ道路のほかのエリアについては不明です)。
ロードバイク的にはこっちのほうが助かるわけで、個人的には【まあいいや】というところです。
それだけ道路交通法というのは曖昧な部分もあるという話でもいいのかも。
昔歩道だったか車道だったかなんて考えだすと、戦前は・・・とか意味不明なことになりますし、警察がどう考えているか次第で取り扱いが変わると思うほうが合理的かもしれません。
もしかしたらほかにも、警察が自転車道とは考えていない自転車道がどこかにあるかもしれませんが、これは単に取り締まりや指導対象とは考えていないというだけで、法解釈上は自転車道になってしまうケースもありうるのでご注意を。
非常に微妙な場面も
国道16号相模原については、道路の両サイドに自転車道があり、しかも進入も容易。
管轄の相模原署も、自転車道の通行義務があるとして指導しているそうです。
自転車道のすぐ横にはご休憩用有料施設も完備。
国道357号金沢区エリアについては、私なりの意訳としては自転車道の要件を満たしているように思うのですが、警察的には道交法上の自転車道とみなしていないそうです。
諸般の事情を考慮すれば、自転車道の通行義務があるとまでは言えないので指導も注意もしていない状況なのかなと。
道交法は非常にあいまいな面も大きいため、諸般の事情を考慮して指導対象とすべきかどうかは変わりうるものです。
相模原署の方が言うには、自転車横断帯についても、車道を走っている自転車はそのまままっずぐ走るべきと言ってました。
イチイチ、こうすることまでは求めていないだろうと。
これについては過去にも書いていますが、
自転車横断帯違反には罰則がなく(法63条の6,7)、警察官から指示されて従わない場合のみ罰則があります(法63条の8)。
なので指示されない分には、下手に自転車横断帯を通行するほうが危険だからそのまま進んだほうが良いというのが私の考え。
警察が指導対象としているかどうかと、違法かどうかはまた別なこともあるのでややこしい。
違法かどうかというのは、事故が起きたときの過失割合に影響する話です。
警察が指導対象としていないモノについては、取り締まりしませんから。
とりあえず自転車道については、この標識がある場合は
通行義務があると思っていたほうがいいかと。
注意指導の対象としているかどうかはまた別問題になるので、注意指導対象かどうかは自転車道がある管轄の警察署に聞くしかありません。
ちなみに以前、国道16号の自転車道について質問した時に、こちらの内容をベースに問い合わせした記憶があるのですが、
こちらの内容では、歩道を区画して設けた自転車道や、一部分でも歩道と一体化した自転車道は通行義務はないとしています。
これは法解釈としては誤りで、歩道を縁石や柵で区画しても自転車道の要件を満たすことも出来ます。
国道357号の自転車道についても、管轄の金沢署では【元々緑道だった】ことも一つの要素にしているようですが、歩道を削って車道にすることも出来るわけで、法解釈としては間違いです。
今考えるとこれを鵜呑みにしたのが大きな間違いだったように感じますが、こちらのサイト、どうもロードバイクに有利なように法解釈を捉える傾向にあるので、鵜呑みにすると危険かもしれません。
三 車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくは柵その他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。
幅の広い歩道を「歩道」と「自転車道」に再配分する事例
自転車道の整備にあたっては、場合により図Ⅰ-7に示すような既存の幅広歩道などを活用して歩道と自転車道に再配分することが考えられる。この場合には、自転車道の幅員を一律に最小幅員とするのではなく、歩行者と自転車の交通量のバランスを考慮して、それぞれの幅員を検討することが望ましい。 (1-16)
縁石や柵など工作物で仕切れば道交法上は自転車道になります。
しかし警察が指導対象としているかについては、別問題と考えたほうがいいのかもしれません。
国道16号相模原の自転車道を模式図にするとこうなります。
形式上、歩道の中に自転車道があるようにみえます。
しかし【縁石で仕切られている】ため道交法上は自転車道に該当し、お店などへの出入り口や交差点付近では、自転車通行可の歩道として指定されている。
途中が歩道扱いになっていても、その場所は【自転車通行可】の標識があるので自転車が通行可能になっている状態で、かつ自転車道を表す標識(325の2)も【ここまで】と書いてある状態。
これで道交法上の自転車道の基準を満たしているので、通行義務があるとなります。
ちなみに、自転車道や自転車レーンを設けた道路においては、歩道上に【自転車通行可】の標識があるのは当然おかしい話になります(併設の話)。
具体的には、車道、中央帯、路肩、停車帯、歩道、路側帯、植樹帯等の幅員構成を見直すものとし、車道、歩道等の見直しを行う幅員については、道路構造令で規定する最小幅員を考慮して検討するものとする。その際、自転車道及び自転車専用通行帯を適用する区間では、既設の歩道の普通自転車歩道通行可の規制を解除するものとする。
しかし実態として、あえて残しているケースもあるようです。
法律上は当然おかしいわけですが、自転車レーンの場合、一通行性になってしまいます。
しかし逆走が増える懸念などを考慮して、歩道上にあえて【自転車通行可】を残す事例も多くはないもののあるけど、国は推奨していないということになります。
現場を知る人間が、実態を見て臨機応変にしているとも言えますが、矛盾した道路標識を残す時点で、自転車に対する取り締まりをさほどしていない実情が見えるとも言えますね。
たぶんですが、自転車の違反のうちでも無灯火、信号無視、逆走などは何とかしたいけど、こういう通行区分についてはさほど積極的に取り締まる方向ではなく、用意した枠組みで安全にしてくれ程度にしか思ってないのかもしれません。
なので結論。
ただし実態などを考慮し、注意・指導対象としていない自転車道もあるようで、それについては管轄の警察署に聞かない限りはわかりません。
また警察が自転車道ではないと考えているところでも、事故が起きた場合に裁判で【自転車道があるにも関わらず車道を通行した】として過失が増える可能性も残されています。
自転車道の成立要件は、【自転車のために縁石や柵など工作物で区分】だけで十分なので、道路標識も不要です。
ちなみに、国道16号相模原の自転車道についても、ロードバイクが車道を通行するのを認めることはないか?と聞いてますが、当然断られましたw
自転車道はロードバイク殺しの構造ですが、ママチャリの通行という面で見ると合理的なので、しょうがないですね。
正直なところ、こんな件で取り締まりに遭うとも思えませんし、どうでもいいと言えばどうでもいい話。
しかし、今後自転車少額違反金制度が導入された時に、通行区分違反だとして違反金の対象にもなりうるのでご注意を。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント