よく言われることですが、車両通行帯がある道路の場合、ロードバイクは第一通行帯の中であれば好きな位置を走ってもいいとされます。
これについて、どうも一部のロード乗りに悪用されているような気がしてまして。
車両通行帯とその根拠
根拠はこれですね。
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
一般的には車両通行帯=複数車線道路と解釈されますが、法を厳密に見た場合、この解釈は違います。
車両通行帯は公安委員会が指定して初めて、道交法上の効力を発揮するからです。
第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。5 道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。
これについては以前も書いていることですが、一般道だと車両通行帯指定されていない複数車線道路ってそれなりに多いそうです。
実例でいうとこれですね。


実際、車両通行帯として公安委員会が指定していないにもかかわらず、警察が違反を取って問題になった事例もあります。
複数車線道路だから車両通行帯ではないという実例ですね。
県警によると、05年末に三郷ジャンクション―三郷南インターチェンジの約4.5キロ間で、本来必要な県公安委員会の決定がないまま、片側2車線の車両通行帯と定め、追い越し車線を理由なく走り続けたドライバーを取り締まっていた。
今年4月、県警が高速道路の車線を調べる中で発覚。
東京外環道で2400人誤摘発 埼玉県警、車両通行帯違反 - 日本経済新聞埼玉県警は22日、三郷市の東京外環自動車道で、2006年1月~今年4月、誤って約2400人を道路交通法の車両通行帯違反で取り締まっていたと明らかにした。科した反則金は計約1400万円に上り、約80人は違反点数累積で免許停止や取り消しとなった...
埼玉県警は20日、県内の交差点3カ所で必要な手続きを経ずに原付きバイクの2段階右折違反の取り締まりをしていた、と発表した。資料が残っている過去8年間で計342件あり、対象者に順次連絡を取って反則金の還付や点数抹消などをするという。
交通規制課などによると、3カ所は和光市と新座市の国道や県道の交差点。道路交通法では片側3車線以上の道路などで原付きバイクに2段階右折を義務づけているが、警察庁の交通規制基準によって、県警が違反を取り締まる際には県公安委員会が事前に道路の車線数などを認定している必要がある。3カ所はいずれも3車線だったが、その認定がされていなかった。
一方、このほか県内151カ所の交差点でも車線数が正しく認定されておらず、全容を調べている。
原付きバイクの違反取り締まりに不備 反則金を還付へ:朝日新聞デジタル埼玉県警は20日、県内の交差点3カ所で必要な手続きを経ずに原付きバイクの2段階右折違反の取り締まりをしていた、と発表した。資料が残っている過去8年間で計342件あり、対象者に順次連絡を取って反則金の…
以前、ある県警の公安委員会に対して、どの道路が車両通行帯指定されているか知りたいと質問したことがあります。
これについてですが、それは管轄の警察署じゃないとわからないとのことで、それぞれの警察署に確認してくれと言われました。
コピー可能かどうかはわからないと・・・
この話の中で言われたのですが、一般道でも、交差点付近だけ車両通行帯指定されているケースもあるし、一覧を出せと言われても難しいんじゃないかと言われました。
この道路は車両通行帯指定されていますか?という質問なら答えられるだろうけど・・・と。
警察署を全て回るのは無理なんで、この時点で諦めました。
ちなみにですが、自転車レーンというのは、車両通行帯ですよね。
自転車専用通行帯ですから。
神奈川県警では自転車レーンの一覧を公開しています。
これらは指定を受けているそうです。
交差点だけ指定されているケースもあるとなると、リストの量は膨大でしょう。
なので一覧を入手することは諦めましたが、上で出した報道内容や、公安委員会の話を聞いても、複数車線道路だからすべてが車両通行帯ではないということについては間違いない認識です。
車両通行帯と、指定されていない複数車線道路の違いについては、道路をみて判断することは不可能です。
ロード乗りがいう、車両通行帯
ロード乗りの中では、複数車線道路=車両通行帯とみなす⇒第一通行帯の中ならどこを走ってもいいという認識が常識化しています。
けど法を厳密に解釈すれば、公安委員会が指定していない複数車線道路については、左側端しか走れないはず。
前から【常識】と化している部分について、どのような根拠なんだろうと疑問に思っていました。
ここからは推測なんですが、恐らく理由は二つです。
見分けが不可能だから
見分けが不可能な以上、車両通行帯とみなしてもいいんじゃないか?という説。
ただこの論についてはちょっと無理があると思ってまして、見分けがつかないんだから左側端を走っていたほうが無難と考えるほうが合理的なはず。
車両通行帯指定されていなければ、左側端通行していなかったということで通行区分違反ですよね。
一か八かのチャレンジみたいでなんか変。
罰則が無いから
車両通行帯ではない場合は左側端通行義務があります。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
(罰則 第二項については第百十九条第一項第二号の二)
実はこの左側端通行義務については、罰則がありません。
第1項の罰則が無いんです。
左側端というのがどこまでなのかも明らかではなく、罰則が無いことを理由にしているのではないかと考えてまして。
ケーススタディ
ここからは正しい法の適用から検討してみます。
<車両通行帯指定アリ>
まずは車両通行帯として公安委員会が指定している場合。
AとBは第一通行帯の中にいるので違反ではありません。
Cは実は違反。
車両通行帯がある道路の場合、歩道近くの白線は車両通行帯最外側線になるので、第一通行帯の外を走っていることになるからです(通行区分違反)。
<車両通行帯指定なし>
車両通行帯指定がない場合、ロードバイクは左側端を走る義務があります。
この場合、歩道近くの白線は車道外側線で、単に目安を示すのみで規制線ではありません。
そのためCは左側端通行の範疇、Bは違反、Aはギリギリセーフくらいのイメージでしょうか。
警察に聞くと
車両通行帯がある道路でのロードバイクの走行位置について警察に聞くと、ほぼ100%、【左側端】と言われます。
ずいぶん前に県警本部の人と話をして聞いても、ここは左側端のみと言い張ります。
これについて推測すると、そもそも一般道で車両通行帯指定されている道路なんて限られているので、事実上、左側端に固定されるのが正解なのではないかと。
たぶんですが、片側3車線以上であれば、原付の二段階右折問題が出るので、車両通行帯指定されているケースがあるのかもしれません。
けど上で紹介したように、公安委員会が指定していない片側3車線道路も普通にある。
普通に考えれば、車両通行帯かどうかが不明⇒左側端を走ろうとなるのが筋な気がしますが、実に不思議だなと思うわけです。
ところで、そもそも警察がなんでこのように言うのかについて調べていくと、下記が関係している可能性が高いのかと。
交通の教則によると
道路交通法108条の28の規定に基づき、国家公安委員会は交通の方法に関する教則というものを定めています。
教則自体は道路交通法の規定をわかりやすく解説したみたいなものですが、道交法の規定に基づいて国家公安委員会が定めているので、法的な意味を持つものです。
第2節にこのような表記があります。
(2) 自転車は、車道や自転車道を通るときは、その中央(中央線があるときは、その中央線)から左の部分を、その左端に沿つて通行しなければなりません。ただし、標識(付表3(1)32、32の2、33、33の2)や標示(付表3(2)14、14の2、15)によつて通行区分が示されているときは、それに従わなければなりません。しかし、道路工事などでやむを得ない場合は別です。
交通の方法に関する教則
左端の除外になっている道路標識と道路標示をピックアップしました。
種類 | 番号 | 表示する意味 |
車両通行区分
|
32 | 車の通行区分の指定 |
特定の種類の車両の通行区分
|
32の2 | 標示板に表示された車の通行区分の指定 |
専用通行帯
|
33 | 標示板に表示された車の専用の通行帯の指定 |
普通自転車専用通行帯
|
33の2 | 普通自転車の専用の通行帯の指定 |
種類 | 番号 | 意味 |
車両通行区分
|
14 | 車の種類別の通行区分の指定 |
特定の種類の車両の通行区分
|
14の2 | 特定の種類の車の通行区分の指定 |
専用通行帯
|
15 | 特定の車の専用通行帯の指定 |
この教則は道交法108条の28に基づくものですが、そもそも車両通行帯って、複数車線であれば必ず車両通行帯ではない。
これを見ると思うのは、単に複数車線だからと言って車両通行帯になっているケースなんてほとんどないんじゃないかとすら思えます。
自転車が左側端通行ではなくてもいい車両通行帯は、全て道路標識か道路標示で示されているものに限定されていますね。
とりあえず国家公安委員会が、左側端通行の除外として指定しているのは、上で挙げた7パターンの車両通行帯のみとなっているのでご注意を。
第百八条の二十八
4 国家公安委員会は、道路を通行する者が適正な交通の方法を容易に理解することができるようにするため、次に掲げる事項を内容とする教則を作成し、これを公表するものとする。
一 法令で定める道路の交通の方法

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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