毎日のように、交通事故関係の報道があります。
言論の自由が憲法上保証されていますが、交通事故関係の報道に対して、報道されていない事実を加えて批評したがるのがインターネットの特性なのかもしれません。
私もこれについては大失敗したことがあるので、自戒を込めて。
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事実と真実
法律の考え方によると、事実と真実は意味が異なります。
調べたい人は、調べてください。
ちょっと前に、大学生の事故を取り上げました。

この事故の報道があった直後、インターネット上では様々な見方をする人がいました。
そこそこ目に付いたのは、「無謀な高速走行練習をしていたんだろ?」みたいなの。
確かに、「大学生」、「自転車部」、「曲がりきれず事故」というキーワードから推測すると、競技的な高速練習により起こった事故ではないか?と、一つの可能性としてはあり得る話。
けど。
大学が発表した中間報告によると、違いますよね。
無謀な高速走行練習をしていたとは到底読み取れない。
中間報告を見る限り、まだ警察の捜査が継続しているとあります。
報道されていないことを勝手に妄想して付け加えると、真実とは掛け離れた事実だけが飛び交い、関係者を苦しめることになる。
ヤフコメなんてその「独壇場」とも言える場所だし、Twitterなんかも同じ。
自転車が巻き込まれた事故なら、とりあえず自転車を叩く。
報道されていないことを勝手に妄想して付け加えることは、ホントやめたほうがいい。
けど一番ややこしいのは、「妄想を付け加えて苦しめている自覚がない人」なのかもしれません。
この事故については、いろいろ再確認させられることがありました。
自分が制御出来ない速度にはしないという大原則ですが、逆に制御する実力がない場合にはどうすべきなのか?
最近、やたらと誇張して世論をコントロールしたがる人って多いなと感じます。
これなんかもそう。


「例外なく一方的に車両が悪い」と主張されてます。
これは不正確そのもので、「原則として一方的に車両が悪い」が正しい表現。
まあ、あまり判例調べたり法律解釈を調べたりしない人には難しいだろうけど、例外が普通に存在する。
過失割合の大小ガー!とかいくらでも言い訳は出来るでしょう。
例えば5:95なら「ほぼ一方的」とも言えなくはないけど、被害者にとっての5%って金額にしたら大きいこともある。
誇張した情報を鵜呑みにして、困る被害者がいることを知っていれば、正しい情報を流すように努めるべきだと思う。
勉強しない人には理解できないだろうけど。
最近、歩行者を書類送検したり、歩行者に過失100%をつける事例もあるので、何がどうなってそうなるのかは理解したほうがいい。
横断歩道以外で横断した事故も、よくある過失割合の表によれば車の過失が大きい。
けど、こういう判例も普通に存在する。

自賠法では、無過失の証明をすれば賠償責任が無くなります。
横断歩行者が常に保護対象ではないのは、法律上も明らかですから。
ちなみにいまだに民事の過失割合は、道路交通法違反がなければ無過失だと思っている人がいるようですが、民法709条の不法行為責任=道路交通法違反という法律はありません。
予見可能なことを回避しなかったことを、法律上は過失と呼びます。
ついでなので、電動キックボードの話
今年の通常国会にて、電動キックボードに関する改正道路交通法案が提出される予定です。

これ、今さら騒いで反対する人もいますが、正直遅いです。
この流れを止めたいなら、国会で否決する以外にはありません。
それは事実上、不可能です。
このような意見を頂きました。
いつも参考になる話題をありがとうございます。全て自分で調べきれていないのに尋ねるのは恐縮なのですが、“普通自転車”が法律で定義されているのと同様に“キックボード”は定義があるのでしょうか。(今のところ見つけられていません。)「見りゃわかるだろ。オマエはキックボードと自転車の区別をできんのか?」ということが“常識”であるためにキックボードの法的定義は不要であるということでしたらゴメンナサイ。以下も無視してください。■ここまでが前振りです。疑問に思ったのは、普通自転車の格好をした特定小型原動機付自転車も「アリ」ですよね?ということ。電動アシスト自転車は、文字通りペダルをアシストする機能を持ちますが、特定小型原動機付自転車が人間の力無しでも時速20km/h以下で走行できる乗り物であるならば、性能の低い原動機付き自転車が無免許・ノーヘルで、あまっさえ6km/h以下ならば歩道も走れてしまうことになるのかな?と。電動キックボードよりも質量の大きな物体が20km/hで走り回る姿は恐怖です。
報道を見ている限り、道路運送車両法(及び保安基準)にて定義されるものと思います。
たぶん、座席の有無や出力により「特定小型原動機付自転車」に該当するかどうかが決まるようです。

2色の灯火により規格をクリアした電動キックボードであるかの識別と、歩道モードを切り替えたかの識別をするそうです。
型式認定も実施するとあります。
ここまで具体的に進んでいるので、今さらストップは無理です笑。
私自身は、乗る気はゼロですが、反対はしません。
強いていうなら、免許制は維持して欲しかったかな。
青切符対応、自賠責必須なことは評価します。
いわゆる「自転車」の形をした「特定小型原動機付自転車」が登場するのかはわかりませんが、報道をみると重量制限は設けないとあります。
道路運送車両法による形式認定をクリアすれば、理屈の上では自転車の形をしたものもあり得るかもしれませんが、詳しくはわかりません。
この問題で危惧しているのは、特定小型原動機付自転車の基準を満たさない電動キックボード(原付扱い)が、高速度で歩道を走り回ることかなと思ってます。
あと、上の報道によると、「歩道モード(時速6キロ以下しか出ない)」を歩行者扱いとしてます。
改正案を見る限り、法律上の区分は「歩行者」ではないように見えるのですが、改正案がわかりづらいため、何か見落としてるのかも。
歩道モードのときは「小型低速車」になるみたいに書いてありますが、確かに改正案59ページに、「移動用小型車」という謎カテゴリーもあります。
正直なところ、改正案わかりづらい。
かなり大々的に道路交通法の改正を見込んでいるように思うのですが、道路交通法施行規則の改正案や、道路運送車両法の保安基準も見ないと意味がわからないのです。
以前書いたと思いますが、お隣韓国では電動キックボードについて迷走しました。
当初ヘルメット無しで法制化されたのですが、施行前日に改正されました笑。
そのため、半年後にはヘルメットが義務化されてます。

日本は海外の失敗事例を研究した上で、まずは実証実験からスタートさせた点は良かったのですが、世間の関心がそれほど無い状態でスタートし、ある程度方向が固まってから騒ぎ出して反対する人が多いように感じます。
ぶっちゃけ、反対するならそれでは遅いのです。
私としては、実証実験もしっかりやっているのが理解出来たので反対はしません。
日本の場合、一度決めた法律をすぐにひっくり返すことは無いと思います。
16歳以上が免許無しで乗れる予定ですので、高校生が乗って道路交通法を理解しているかなど問題もありますが、むしろ高校単位で道路交通法の勉強をするチャンスにもなりうるので、自転車ルールも含めて教育するチャンスにもなりうるのかなと。
チャンスにしていったほうが、建設的じゃないですかね。
高校側も、こんなのを学生が乗り回して爆死しまくりじゃヤバいですし。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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