先日のコレ。
法律論 対 感情論としか思っておらず。
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法律論 対 感情論
違反否定派(法律論) 対 違反肯定派(感情論)の醜い争いとしか。
後段のみ抜粋するとこうなります。
Twitterのケース。
とりあえず、「一時停止」までを果たしているのは明らかですが、車両が一時停止している状況なので歩行者が優先通行権を行使して進めばよい。
しかし、本心がどこにあるのかはわからないものの、歩行者は明らかに車両に対して「先に行け」と指示している。
先に行けと指示する側が、妨害された状態と言えるの?という法律論になるわけです。
一時停止して歩行者が先に行くことが可能な状態を作り出したにも関わらず、自ら一時放棄していることが法的に「妨害」と捉えるセンスは理解し難い。
何かを譲渡した人が、あとになってから「盗られた」が通用するのか?
嫌々譲渡したのか、進んで譲渡したのかなんてわからないので、法的には譲渡したという事実しかない。
そもそも「嫌々譲渡する」という状況もわからないし、譲渡せんでもいいような環境は整えたのだから。
先に行けという人は、妨害されてんのか?
他の条文で「妨げ」とか「妨害」が出てくるモノをテキトーにピックアップ。
第十七条
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
第二十一条
2 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、軌道敷内を通行することができる。この場合において、車両は、路面電車の通行を妨げてはならない。
(以下略)
第二十五条
3 道路外に出るため左折又は右折をしようとする車両が、前二項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。
第三十一条の二 停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車の進路の変更を妨げてはならない。
第三十四条
6 左折又は右折しようとする車両が、前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
歩道を横切る際に一時停止し、歩行者から「先にどうぞ」と言われて進むことが妨害だと考える人とか、路線バスが発車するために合図したけど、バスの運転手が「先にどうぞ」と促したから進むことが妨害だと考える心理はよくわからない。
マンション建設現場とか、ガードマンが歩道の歩行者をせき止めてから工事車両の出入りをさせることは何ら珍しくないけど、あれは工事車両の運転手とガードマンが結託して歩行者の通行を妨げた違法行為と考えてみたり、それこそスーパーの駐車場の出入り口ではガードマンが歩行者を妨げまくるけど、あれも運転手の犯罪(17条2項)と考える人もいるのかな?
まあ、道路交通法上の交通整理には該当しないでも、判例上は問題無さそうだが。
けどこれについても、歩道上と横断歩道上を同視して考えるべきなのか?という問題も出てくる。
原則として車両(普通自転車を除く)が通行していない歩道上で歩行者が立ち止まり譲る行為と、車両が通行する車道上にある横断歩道上で歩行者が立ち止まり譲る行為の危険度を考えないといけないかもしれないし、Twitterの件のようにリスクが低そうなバスターミナル?みたいな場所と、それ以外を同視するのか?
実際のところ判例によると、「横断しようとする歩行者」に当たるかどうかをこのように判断している。
右法条にいわゆる「横断しようとしているとき」とは、所論のように、歩行者の動作その他の状況から見て、その者に横断しようとする意思のあることが外見上からも見受けられる場合を指称するものであるが、論旨第一点において説示したとおり、老人が横断歩道で立ちどまつたのは、そのまま横断すれば危険であると考え、その安全を見極めるためにしたものにすぎず、横断の意思を外見上明らかに一時放棄したものとはいえないから、この場合は、前記法条にいわゆる「横断しようとしているとき」に該当するものというべきである。そこで右主張もまたこれを容れることができない。論旨は理由がない。
東京高裁 昭和42年10月12日
「外見上明らかに一時放棄」であれば、「横断しようとする歩行者」ではない可能性はあります。
違反肯定派の意見ってスゲーなと思って見てました。
→譲って一時放棄した事実には何ら変わりないし、一時停止して先に横断する権利は確保されてますけど?
→車が一時停止している以上、歩行者が立ち止まらないと危険を回避できない状況にはなく、歩行者が自らの意思で先に行かせたいようにしか見えませんけど?
立ち止まらせたら違反になるなら、一時停止している車両の前で横断中にわざと立ち止まるような当たり屋的プレイで違反を量産出来ますが?
「立ち止まらせた」は妨害だが、「勝手に立ち止まった」は妨害と言えるの?
→道路交通法違反の容疑なので、違反になる対象が違うなら切符を切り直してやり直す必要がある。
違反事実を確定させてないと違法取り締まりにしかならない。
→普通の感覚ならそうは思わないけど、強いていうならイチャモン避けのために窓を開けて確認して合意を取るべきだった
→歩行者が譲る権利を持ち合わせていないというなら、歩行者蔑視、歩行者の人権すら否定しちゃってるけど。
よっぽど歩行者を下に見てるのか?
横断歩道を自由に横断できる権利があるのだから、譲って先に行かせるのも歩行者の権利だと気がついてないのかな。
そこに関わる動機や思想などは人それぞれ。
動機がなんであれ、一時放棄した事実は変わらない。
けどこれ、まともに歩けないくらいの身体の状態にならないとわからんかも。
車を待たせるのが申し訳ないとかよりも、「今渡りきれる自信すらないからちょっと休んでから渡りたい」という状況なのに、迂闊に横断歩道に近づいて何回も失敗したけど笑。
自由に横断できるはずなのに、一時放棄して先に行かせること、先に行くことに違法性を求める発想がわからん。
もはや自由ではない場所なんかな。
当たり前だけど、わざと横断歩道上で立ち止まり通行の妨害するような話は「自由」ではないからね笑。
自由を履き違えた人ってなぜかいるので。
なかなかな
判例っていろいろ参考になる面はありますが、なかなか凄いところをツッコミ人もいらっしゃる。
昭和54年11月22日の大阪高裁が除かれてる理由が気になります…概要だけ読んだ所感は恐らく動画の状況に近いのではないかなと https://t.co/ssuhEfV1p4
— EFITZ (@EFITZkancolle) July 1, 2022
この判例については以前書いてます。
こういう人って執務資料だけ読んで語るのかな?という疑問がありますが、この判例は業務上過失傷害被告事件。
南行車線が渋滞で停止車両があり、停止車両の隙間から横断歩道を横断しようとし、横断歩道の中央付近で姉が顔を出して反対車線を確認。
姉は横断を躊い横断歩道中央付近で立ち止まった。
車の運転者は時速8~10キロで進行していたものの、姉が横断中に立ち止まったことから横断歩行者がいないと考え進行。
弟(8歳)が姉の横からスキップしながら横断したために起こった事故です。
イメージ図(正確性は保証しません)。
このように横断歩道上を横断しようとしてその中央付近手前まで歩んできた歩行者が、進行してくる被告人車をみて危険を感じ、同歩道の中央付近手前で一旦立ち止まったとしても、横断歩道における歩行者の優先を保護しようとする道路交通法38条の規定の趣旨にかんがみると、右は同条1項後段にいう「横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者」にあたるというべきである。
そして、同女が横断歩道上の前記地点で立ち止まったとしても、前記認定のような当時の状況に徴すると、同女の後方からさらに横断者のあり得ることが予想される状況にあったのであるから、自動車運転者である被告人としては、同女の姿を認めるや直ちに、右横断歩道の手前の停止線の直前で(仮に、被告人が同女の姿を最初に発見した時点が、所論のように被告人車の運転席が停止線付近まで来たときであったとしても、事理は全く同様であって、その時点で直ちに)一時停止し、横断者の通行を妨げないようにしなければならなかったのである。
大阪高裁 昭和54年11月22日
この判例は、反対車線が渋滞のため時速8~10キロで横断歩道に向かって進行したところ、渋滞の列からひょっこり歩行者(姉、子供)が出てきたものの、横断を躊躇して立ち止まったことから「一時停止しなかった事案」。
そのまま進行しようとしたところ、姉の後ろから弟(8歳)がスキップしながら出てきたことによる事故です。
「一時停止しなかった事案(判例)」と「一時停止後に歩行者から先に行けと促された事案(Twitter動画)」の違い。
「見通しが著しく悪い横断歩道(判例)」と「見通しが極めて良好な横断歩道(Twitter動画)」の違い。
「危険を感じて立ち止まった事案(判例)」と、「歩行者自らが先に行けと促した事案(Twitter)」の違い。
これらを考えたら、弁護士さんが挙げた映像とは「事案も前提も異にする」と思うし、ちょっと前に書いた記事でも参考程度にという意味合いで触れたけど、
ごく一部の抜粋だけ見て考える人のダメな点がモロに出ているように感じます。
「除かれている」というよりも、「論点がそこではない」から弁護士さんもイチイチ挙げてないのかな?と思うけど。
判例ガー!という人は、まずは抜粋ではなく全体を読んでから語るべきなんだけど、どんな状況なのか次第で判断は変わりうる。
Twitterの動画 | 大阪高判S54.11.22 | |
歩行者の位置 | 横断歩道上 | 横断歩道上 |
歩行者の挙動 | 車に対して先に行くよう促している | 危険を感じ自ら停止 |
車の状況 | 一時停止 | 8~10キロで進行 |
横断歩道の見通し | 良好 | 著しく悪く横断歩道右側は視認不可能に近い |
歩行者の年齢 | 成人 | 学童 |
前提を異にする判例なので、共通項だけに着目しても。
成人と子供でも、予想される動きも違う。
ちなみにこの判例、最終的な結論はこのようにしています。
所論は、しきりに、横断歩道上、右側への見透しがきかない状況にあった点を強調し、一時停止しても、結果は同じであった旨主張するが、そこが、歩行者優先の横断歩道である以上、前記のとおり見通しが困難であれば、一層、安全確認のため一時停止すべきであり、更に進行するに際しても、最徐行するなどして横断歩道上の右方の安全を慎重に見極めつつ進行すべき業務上の注意義務があった
大阪高裁 昭和54年11月22日
一時停止しなかった事案と、一時停止した後に歩行者から先に行けと促された事案。
見通しが極めて悪い横断歩道と、見通しが良好な横断歩道。
危険を感じ立ち止まった事案と、歩行者自らが先に行けと促した事案。
Twitterの件とは事案を異にするのは明らかかと。
昭和42年東京高裁でも立ち止まっただけなら同様の判断をしています。
ちなみに対向車線が渋滞していたのは、道路右側の歩道方向で花火大会があったからです。
なので、渋滞して見通しが極めて悪い横断歩道な上に、横断歩行者がいることは予見可能。
個人的にこの弁護士さんを庇うつもりはないけど、弁護士さんなら判例の全体をみて判断すると思うのね。
本に掲載された抜粋だけ見てドヤ顔とか、なかなか凄い実力を発揮していらっしゃるのは気になりました。
ただTwitterの件に関連して、大阪高裁判例も参考になる判例の一つにはなるかと。
上で挙げた東京高裁昭和42年と、福岡高裁昭和52年、大阪高裁昭和54年の3つが参考にはなりますが、結局のところ歩行者が自ら「先に行け」と促した場合については、東京高裁昭和42年の考え方からすると「一時放棄」とも取れる。
大阪高裁昭和54年については、仮に立ち止まった「姉」が「先に行け」と促したところで、横断歩道右側の見通しが悪いから注意義務としては一時停止せざるを得ない。
後ろからさらに歩行者が横断してくることは予見可能なのだから。
なので、事案を異にする判例としか。
なお、横断歩行者に関する判例のまとめはこちら。
Twitterの動画で唯一気になる点は、歩行者が既に横断歩道上に進行していた点にありますが、とりあえず判例とは前提を異にするとしか。
無能な思考
例えばですが、こんな場面を想定します。
・歩行者が車に先に行くよう促した
↓
・車のドライバーは歩行者の意思を確認し、低速進行した
↓
・歩行者が「急に気が変わった」として横断開始
↓
・車と接触
この場合に38条の違反になるのかは正直なところビミョーです。
ただまあ、民事の過失なると、ドラレコ映像がありきちんと譲る意思を確認したのが明らかなら、歩行者側の責任になる可能性はあるかと。
何せ譲って「先に行け」と促したら、車が発進することは予見可能。
車が動き出したのを見てから横断開始すれば、衝突や接触するのはバカでもわかるので。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
故意と見なされたら、民事責任は歩行者側になる可能性あり。
民事責任は道路交通法違反を争っているわけでもないし、容易に回避できる事故なら歩行者にも過失をつけるし、このような状況だと故意とみなされても不思議ではない。
この手の話って時々あるというか、たいした怪我でもないのに不必要なほど通院して治療費を請求してる判例とか普通にある。
当然のように「請求棄却」とか。
刑事でも詐欺に問われたり。
魔が差す人っていますよね。
ちなみに以前挙げた判例。
すみませんが詳しく書くと「手口」を広めることになるため書きません。
なぜ交通事故被害者に、支払い済み治療費等を全額返金せよという判決が出るか。
事故自体は何ら不自然な点はなくても、そこだけが問題になるわけではない。
世の中思っている以上に当たり屋さんはいることを考えると、譲られても頑として先に行かないほうがドライバーにとっては「自己防衛」になると思うけど。
自転車はその点、ラクですよね。
降りて押して通過すれば歩行者だし。
ちなみに、被害者が加害者に損害賠償請求したところ、反訴されて支払い済み分を返金せよという判例は普通にあります。
病的思考
38条絡みの話はなぜか病的思考を発揮する人が多く、まあまあ困惑してます。
横断歩道では自転車も38条の優先対象だとか、横断歩道が赤信号でも優先対象だとか。
赤信号を無視して横断歩道を横断する歩行者がいた場合、当たり前ですが最大限の注意義務を果たし事故を回避する義務がありますが、38条により優先なわけがない。
多数の資料を提示しましたが、あの人が理解できるとは到底思えませんので期待はしていません。
というより、無理でしょう。
赤信号でも優先権を持つなら、誰も信号なんか守らんだろ。
単に違反になるか否かの話から、歩行者が譲るのは良くないだとか権利否定するような人もいますが、誰が何をしようと違法性がないなら勝手。
歩行者の権利、理解してないのでは。
先に行く権利を持っていて、後から行くのも自由。
先に行く権利を持っていて、車両を先に行かせるのも自由。
先に行く権利を持っていて、先に行くのも当然自由。
先に行く権利を持っていたけど先に行かせたときに、先に行った側は妨害してんの?
そこに何の違法性があるのやら。
ただまあ、法律がどのように運用されているのかは判例が一番かと思うけど、一つの判例だけみて語るのは愚そのもの。
類似判例、他条の解釈、実態など総合的にみて、譲ったのに妨害されたと解釈するセンスはよくわからない。
けど、明確な判例があるわけではないし、当たり屋警戒した方がドライバーには自己防衛になるかも。
もちろん、Twitterの件が当たり屋と言っているわけではありません。
昭和の判例ってまあまあ無理がある主張ってあります。
Uターン禁止の場所で、スイッチバック式転回なら後退と右折だろ!とか。
横断歩道で急ブレーキをかけなかったことを緊急避難と主張しているのもあります。
どちらにせよ、判例って全体を読んでから価値を考えるべきかな。
前提を異にする判例って、考える上で参考にはなるけどあまり意味がない。
一時停止した動画と、一時停止しなかった判例を同視する?
結局、判例は無いという結論になるけど、せめて「判例ガー!」という人は抜粋よりも全体を読んでから語るべき注意義務くらいはあると思う。
全体読んでいる人と、抜粋だけの人の間で正常な議論って難しいことが多いので。
けどこれ、過去に警察本部に聞いたら「一時停止して譲られたなら取り締まり対象ではない」と普通に言われてしまうのだけどな。
要は現場レベルと本部で見解の統一がないことが問題なのでは。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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