以前から書いているように、自転車が車の横をすり抜けて前に出ることはオススメしていません。
その上での話。
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違反とは言えないが
自転車がすり抜けて前に出るのはほとんどの場合追い越しではなく「追い抜き」なので違反とは言えません。
強いて例外を言うなら、先行車が適切な左折動作に入っているにも関わらず左側から追い抜きすれば違反ですが。
この判例は交差点の少なくとも60m手前で自転車を追い抜きし、交差点の29m手前で左折合図した大型車に対し、自転車が強引に左側から追い抜きしたことによる事故。
ドライバーはミラーで左後方を確認したけど、自転車が強引に左側から追い抜きしたことが原因です。
しかしながら、交差点で左折しようとする車両の運転者は、その時の道路および交通の状態その他の具体的状況に応じた適切な左折準備態勢に入つたのちは、特別な事情がないかぎり、後進車があつても、その運転者が交通法規を守り追突等の事故を回避するよう適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足り、それ以上に、あえて法規に違反し自車の左方を強引に突破しようとする車両のありうることまでも予想した上での周到な後方安全確認をなすべき注意義務はないものと解するのが相当であり、後進車が足踏自転車であつてもこれを例外とすべき理由はない。
昭和46年6月25日 最高裁判所第二小法廷
先行車が交差点での左折、道路外への左折として適切な動作に入っているなら、追い抜きは違反になります。
それ以外だと違反となる場面はあまりないと思いますが、違反ではない行動が必ずしも適切とは限らない。
違反ではないなら問題なしという価値観は持っていないので、オススメしていません。
信号待ちでもやたら前に出たがるロードバイクもいますが、多くの場合メリットがないように感じます。
以前こんな感じですり抜けて前に出ようとしていたロードバイクを見かけたのですが、
と思っていたら、途中で失敗して歩道側に倒れてました笑。
自業自得の極地というか、「そりゃそうなるだろ」くらいにしか思えない。
ドライバーもびっくりですよね。
左側端が広い道路構造なら別として、
違法ではないことと、安全性が高いことは別。
違法ではないことと、適切な行動は別。
これが私の価値観。
走行中の前車に対する追い抜きも、やたら左側端が広いなら別として、全くオススメしません。
実際のところ、先行大型車が時速35キロで通行中に、左側から時速36キロで追い抜きし事故になった判例があります。
左側は防音壁がある幹線道路ですが、ちょっと無理があるとしか。
この判例、報道では先行大型車が幅寄せしたみたいになっていました。
幅寄せした事実はなく、このような速度で隙間を追い抜きする自転車があることを予見する義務はないとして無罪に。
第3 過失の有無についての検討
1 前記第2の1のとおり,本件道路は,交通頻繁な国道で,西側に防音壁が設置され,その西方に歩道が整備されていることからすると,歩行者や自転車の通行が想定されていないものと認められる。
また,本件事故現場の第1車両通行帯は幅約3.8m,被告人車両は幅約2.49mであるから,被告人車両が第1車両通行帯の中央を走行した場合,被告人車両の左側面と外側線との幅は約0.6m,これに外側線と縁石までの幅約0.7mを併せても約1.3mである。証拠によれば,実際に,被告人車両と車両諸元が同一の大型貨物自動車を本件道路の第1車両通行帯に置き,被告人に本件事故時の走行状況を再現させて,同車両左側面と縁石との通行余地の幅を計測したところ約1mであり,自転車(28インチのロードバイク)に乗車した警察官に,同通行余地を走行させたところ,時折その着衣等が大型貨物自動車側面に接触するなど,安全走行が極めて困難な状況であったこと,本件道路の第1車両通行帯を通行する標準的な大型貨物自動車等を任意に抽出,調査したところ,車両左側の通行余地は約1mであったこと,本件道路を通過するロードバイクライダーを抽出し,第1車両通行帯を時速約35kmで走行する大型貨物自動車の左側通行余地1mの条件で,同車両の左側を追い抜いたり接近したりするか聞き取り捜査をしたところ,いずれの対象者も否定したことが認められる。
これらの事実からすると,被告人において,本件道路の第1車両通行帯を走行するに当たって,走行中の被告人車両左側面と縁石との間のわずか約1mの隙間を左後方から自転車等が進行してくることを予見して,その進路を妨害しないよう留意して進行すべき注意義務があるとはいえない。
2 また,検察官は,被告人が,ハンドルを的確に操作して適正に進路を保持することなく,被告人車両を本件道路の左端に寄せて走行させた旨主張し,被告人はこれを否定しているところ,被告人があえて被告人車両を左端に寄せる理由は見当たらない。本件擦過痕に基づき,被告人車両が本件道路の左端に寄って第1車両通行帯外側線付近で被害者自転車に衝突したとするEの見解が採用できないことは,前記第2の3のとおりである。
なお,証拠によれば,本件道路は直線道路ではあるものの,わずかに左に湾曲しているため,第1車両通行帯の中央付近を走行するためには,本件事故現場の南方でやや左にハンドルを操作する必要があり,意図的に車体を寄せるつもりがなくても,車体が左右に振れることは十分あり得る。
一般に,自動車運転中に走行車線内で車体が若干左右に振れることは不可避であり,走行車線からはみ出すような場合はともかく,走行車線内で走行位置が若干左右に振れたことをとらえて,ハンドルを的確に操作し進路を適正に保持しなかったということはできない。被害者自転車においても,被告人車両同様,走行中に車体が若干左右に振れることは避けられないと
ころ,本件道路のように第1車両通行帯の外側線と縁石との幅が狭い場所を走行する際には,もとより被害者自転車のハンドルや被害者の身体が外側線から第1車両通行帯内にはみ出すことになるため,被告人車両が殊更左に寄らなくても,被害者自転車が被告人車両左側面と接触してしまう可能性は否定できない。
以上によれば,結局のところ,そもそも被告人がハンドルを的確に操作して進路を適正に保持することなく被告人車両を本件道路左端に寄せて走行させた事実は認められず,仮に,走行中に被告人車両の車体が若干左に振れたために本件事故に至ったとしても,被告人に結果回避義務違反があったとはいえず,被告人に過失は認められない。
名古屋地裁 平成31年3月8日
リスキーな行動は全くオススメしません。
リスクを
ロードバイクの事故やトラブル事例がSNSなどにアップされたときに、「違反だ!」「いや違反ではない」などと始まることはもはやお約束です。
明確な違反行為があれば、ロードバイクに限らず全ての車両が非難の対象にはなりますが、そもそも、違反とまでは言えないけど適切なプレイとも言い難いことなんていくらでもあるわけでしてね。
自転車の場合、「違反だけど適切な行動」もあるからちょっとややこしい。
代表格は自転車横断帯ですね。
こんな直進方法をしたら、後続車が巻き込むこと必至。
普通に直進したほうがはるかに安全なのは言うまでもなく。
結局のところ、法律自体におかしな点も多々あるのですが、違反とまでは言えないけど適切とも言い難いプレイもあるし、違反だけど適切なプレイすらある。
どちらにせよ、法律を知っただけでは不十分だと思っていますが、無理にすり抜けて「違反ではない!」と言い張ったところで何かいいことがあるのでしょうか?
けど違反ではない以上、価値観の問題でしかないんだろうな。
ちなみにこのオートバイは明確に違反です。
この場合、歩道がないので路側帯になりますが、オートバイは路側帯を通行できません。
自転車は路側帯を通行出来ますが、「歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」と規定されているので、そこそこの速度で通行する先行車を追い抜き目的で通行するのは問題があります。
法律を知ることは大切ですが、それを踏まえた先にあるのが安全なんじゃないですかね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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