まあまあどうでもいいんだけど、自転車が優先だと勘違いするのもな。
公式コメントしましたが
昨日も横浜で不幸な事故が起きました。大型車に乗る方は
確認の徹底
必要ではあれば一時停止を行うこと自転車の乗る方も
大型車の運転者が見ているとは限りません
不安を感じたら止まるという選択肢も
持って下さい。過失の有無ではなく
他人の命
自分の命を守る運転を! pic.twitter.com/LD5fjybP8w— 上西一美@YouTube番組ドラレコ交通事故防止 (@kazumi_decreate) October 7, 2022
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横断歩道での自転車
このケースは
・車両が交差点を左折
・自転車は歩道を通行し横断歩道を直進
・信号機あり
類似判例はこんな感じ。
道路交通法上、自転車は軽車両に該当し(同条2条1項11号)、車両として扱われており(同項8号)、交差点における他の車両等(同法36条)との関係においても、車両に関する規定の適用により、四輪車や単車と同様の規制に服する(自転車の交通方法の特例が定められているものは除く。)。交差点を左折する四輪車にもその進行にあたっては前方を確認すべき注意義務があることは当然であるが、歩行者用信号規制対象自転車であっても、横断歩道では歩行者が横断歩道により道路を横断する場合のような優先的地位(同法38条1項)は与えられておらず、また、他の車両との関係においてはなお安全配慮義務(同法70条)を負うと解されるから、安全確認や運転操作に過失がある場合は、自転車の運転者は、相当の責任を負わなければならない。
神戸地裁 令和元年9月12日
原告は、道交法38条1項が、横断歩道における歩行者及び自転車の優先を定めているから、自転車にとっても横断歩道上は聖域であると主張する。しかし、同条項は、横断歩道を横断する歩行者と自転車横断帯を横断する自転車を保護する規定であると解され、横断歩道上を横断する自転車について、歩行者同等の保護を与える趣旨とは解されない。もっとも、本件歩道は自転車通行が許されているにもかかわらず、本件交差点には横断歩道のみが設けられ、自転車横断帯は設けられていないことからすれば、本件歩道上を走行してきた自転車がそのまま横断歩道を進行しようとすることは自然な成り行きということができ、かかる道路条件に照らすと、本件交差点を左折しようとする車両においても、本件歩道上を走行してきた自転車が本件横断歩道を横断することがあり得ることを想定して、より十分に注意を払うべきであったということができる。
仙台地裁 平成29年5月19日
歩道通行自転車ではないけど似ているのはこちら。
道路交通法12条1項は横断歩道がある場所での横断歩道による歩行者の横断を、また、同法63条の6は自転車横断帯がある場所での自転車横断帯による自転車の横断義務をそれぞれ定めているので、横断者が右の義務を守り、かつ青色信号に従って横断する限り、接近してくる車両に対し優先権が認められることになるのであるが(道路交通法38条1項)、本件のように附近に自転車横断帯がない場所で自転車に乗ったまま道路横断のために横断歩道を進行することについては、これを容認又は禁止する明文の規定は置かれていないのであるから、本件被害者としては横断歩道を横断するにあたっては自転車から降りてこれを押して歩いて渡るのでない限り、接近する車両に対し道交法上当然に優先権を主張できる立場にはないわけであり、従って、自転車を運転したままの速度で横断歩道を横断していた被害者にも落度があったことは否定できないところであり、被害者としては接近して来る被告車に対して十分な配慮を欠いたうらみがあるといわなければならない。しかしながら自転車に乗って交差点を左折して来た者が自転車を運転したまま青色信号に従って横断歩道を横断することは日常しばしば行われているところであって、この場合が、信号を守り正しい横断の仕方に従って自転車から降りてこれを押して横断歩道上を横断する場合や横断歩道の側端に寄って道路を左から右に横切って自転車を運転したまま通行する場合に比べて、横断歩道に接近する車両にとって特段に横断者の発見に困難を来すわけのものではないのであるから、自動車の運転者としては右のいずれの場合においても、事故の発生を未然に防ぐためには、ひとしく横断者の動静に注意をはらうべきことは当然であるのみならず、自転車の進路についてもどの方向に進行するかはにわかに速断することは許されないのであるから、被告人としては、被害者の自転車が同交差点の左側端に添いその出口に設けられた横断歩道附近まで進行したからといって、そのまま左折進行を続けて◯✕方向に進んでいくものと軽信することなく、同所横断歩道を信号に従い左から右に横断に転ずる場合のあることをも予測して、その動静を注視するとともに、自車の死角の関係からその姿を視認できなくなった場合には右横断歩道の直前で徐行又は一時停止して右自転車の安全を確認すべき注意義務があるものといわなければならない。
昭和56年6月10日 東京高裁
こういう関係性において、双方に課された義務はこちら。
交差点左折車 | 横断歩道直進自転車 | |
速度 | 左折時徐行義務 | 歩道通行時徐行義務 |
確認義務 | 歩行者の有無確認義務(38条1項) | 道路横断時確認義務(25条の2第1項) |
確認義務、事故回避義務 | 安全運転義務 | 安全運転義務 |
自転車が優先する要素は特になくて、双方に確認義務があるんだけどな。
民事の過失割合は「違法行為責任」ではなく「不法行為責任」な上、優者危険負担の原則が働くので道路交通法の義務とは必ずしも連動してないし。
「民事上も道義上も車の責任が大きいから車がより注意すべき」ならわかるが、道路交通法上の優先だけでいうなら自転車が優先される要素なんてどこにもないのだが。
ちなみに、「交差点を直進」と「横断歩道を直進」は全く別ね。
後者は「道路を横断」なので。
一貫しない話
民事の過失割合の話と、道路交通法上の義務を混同しながら語る奴も多いし、状況次第で使い分けて自説を有利にしたいだけの人もいるので世の中凄いなと思うけど、
ちょっと前に話題になっていたこれ。
法律上の義務だけでいうなら、歩行者が車道に進出して車にぶつかりに行ったのだから歩行者のほうが悪いです。
自動車には安全運転義務があるとは言え、回避可能性がないでしょ。
けどこれ、民事の過失割合でいうなら基本過失割合は歩行者:自動車=40:60。
民事の過失割合は道路交通法上の義務の優劣とは必ずしも連動してないし、そもそも被害者保護の側面が大きいからこうなるだけの話。
民事の過失を喰らいたくないから(=事故を起こしたくないから)、自動車がより注意して安全運転を心掛けるべきというならわかるけど。
ところで、横断歩道を横断する自転車には優先権がないのに優先だとか左右の確認義務がないだの寝惚けた発言をする輩にはウンザリします。
自転車にも左右の確認義務があると当然のように解釈されてますが(25条の2第1項、70条)、それと交差点を左折進行する車両の確認義務は「別」。
それぞれ義務を各自果たせや、としか思わんのよね。
そもそも「軽重」は民事の話でしかなくて、刑事責任としては「それぞれに義務違反が成立」なんだから。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
上西氏のツイートと記事の本文が合ってないような
すみません、なぜか間違ってました