なかなか不思議な報道が出ていますが…
なんすかこれは?
次の瞬間、右側の車線を走ってきた車と接触。態勢を崩した自転車の女性は、車の運転手に2度軽く会釈すると、そのまま車道を走り道路を渡っていきました。
(中略)
道路交通法では、横断歩道や信号機のない道路で歩行者が車両の直前・直後を横断することや、横断禁止の標識がある場所を横断することを禁止しています。
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なぜに歩行者のルールを解説するのやら。
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自転車の横断と違反
この場合の違反は簡単です。
というよりも先日書いたばかり。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断してはならない。」
この規定に抵触します。
ちなみにこの規定、「道路外の施設若しくは場所に出入するための横断」ではなく、「横断」。
横断の定義はこれ。
「横断する」とは、車両が交差点以外の場所において、その道路に対し直角またはこれに近い角度で、道路の全部または一部分を横切ることをいう。
宮崎清文、注解道路交通法、1966、立花書房
「横断」とは、道路の反対側の側端または道路上の特定の地点に到達することを目的として、道路の進行方向に対し、直角またはこれに近い角度をもって、その道路の全部または一部を横切ることをいい、必ずしも道路の反対側の側端に到達することを必要としない。
木宮高彦, 岩井重一、詳解道路交通法、1977、有斐閣ブックス
道路の一部分でも横切るプレイを横断と呼びます。
問題は「歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」ですが、このように解釈します。
「歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」とは、車両等の運転者が道路外の施設若しくは場所に出入するための左・右折、横断、転回又は後退するにあたり、歩行者や他の車両をしてそのための急制動、一時停止、徐行あるいは異常な進路変更等、従前からの運転方法を著しく変更させる措置をとることを余儀なくされるような場合をいう。
大阪高裁 昭和44年12月23日
なので、車道を正常位に通行するクルマに急ブレーキを掛けさせたのでアウト。
なお、この道路に25条の2第2項の「車両横断禁止」の標識があるのかはわかりませんが、仮にあったとしても1項の違反のほうが刑罰が重いため、1項の違反になります。
問題は、この自転車に故意を認定できるかになりますが、25条の2第1項は過失犯の処罰規定がない。
まあ、状況的には違反が成立すると考えてよいかと。
交通取締りの現場などで横断または転回を行った運転者が自分では大丈夫と思い、正常な交通を妨害するおそれがあるとは思わなかった旨弁解している場合、当該運転者において歩行者または他の車両の存在すら全く認識しない場合は、危険発生のおそれに対して認識があるとはいえないかもしれないが、歩行者または他の車両等の存在することを認識しており、しかもその内容が社会通念上客観的にみて危険発生のおそれがあると認められる程度であるならば故意に欠けるところはないといってよい。
「道路交通法25条の2の横断、転回の意義及び問題点」、大山貞雄(徳島地裁判事)、判例タイムズ284号
仮に故意を認定出来ないにしても、安全不確認で横断を開始した事実から「過失による安全運転義務違反」にする可能性はありますが。
この規定、昭和40年代に揉めた話です。
過失により25条の2第1項の違反を犯した場合には、70条の過失犯として処罰することが妥当なのか?という問題に対し、最高裁は70条過失犯に抵触するなら問題なしとしています。
なぜ歩行者のルールを?
ところで、なんで「歩行者のルール」を解説しているのですかね?
道路交通法上、自転車が横断する際には「付近に」自転車横断帯があるときは自転車横断帯を使う義務がありますが、今の時代は特に、自転車横断帯なんて何キロも先にいかないと見つからないでしょう笑。
なので25条の2第1項による規制しかありませんが、危険性が高い場所なら横断歩道を使うほうがいいですね。
押しボタン式の横断歩道があるみたいだし。
あっ!?
通行と横断は二者択一説なんて珍説も取り上げたばかりでしたね笑。
自転車が横断する際は、横断歩道を使う義務はないにせよ、事実上横断歩道を使わないと無理なケースは多い。
車列間横断は自転車の過失を増やす原因になりますが、理由はわかりませんがノールック横断をキメるママチャリの多さも理解に苦しむ。
ノールックで無事なのは「偶然」以外の何物でもない。
自転車のノールック横断で重大事故も起きてますが、被害者になるのはノールック横断自転車とは限らないのね。
たまたまクルマが来ていたら被害者になり、たまたま二輪車が来ていたら加害者にもなる。
その意味を理解して欲しいのだが。
自転車が常に被害者と思っていたら大間違いだよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
押し歩きで歩行者扱いになる事にも触れて、降りた状態で横断歩道を使えば法的には瑕疵のない安全な横断になることを説明しないと、自転車の横断としては横断歩道を渡ろうが渡るまいが、どっちも義務的には一緒じゃないのかなあ
Yahooニュースに熊本放送の取り締まり情報があるんですけど、歩行者妨害の説明がどうも横断歩道の自転車と歩行者を同一視してるぽいんですよね
コメントありがとうございます。
それも書こうかと思いましたが、法的にはそうでも実務的には止まらない車の現状があるので、なんとなく書きませんでした。
横断自転車への38条の適用、いまだに誤摘発事例を聞くのですが、何より警察官が不勉強だと話にならないのです。