危険運転致死の「進行を制御することが困難な高速度」とは、道路のコースに沿って進行できるか?が判断になるとされますが、
コーナーの限界旋回速度を越えていたかどうかが判断の分かれ目とも言われます。
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高速度制御不能
限界旋回速度以下でも、限界旋回速度に近いことから危険運転致死の成立を認めた判例は既にありましたが(東京高裁平成22年12月10日判決)、限界旋回速度から20キロ下でも危険運転致死の成立を認めた判例が出ました。
指定最高速度50キロの道路にて、右カーブを40キロ以上超過した速度(つまり時速90キロ以上)で事故を起こした判例です。
なかなか複雑な過程を経た判決の様子。
年月日 | 判決 | |
一審 | 宇都宮地裁H30.2.16 | 危険運転致死傷(有罪) |
二審 | 東京高裁H30.12.18 | 一審手続きの違法で差戻し |
差戻し後一審 | 宇都宮地裁R3.3.22 | 過失運転致死傷(有罪) |
差戻し後二審 | 東京高裁R4.4.18 | 危険運転致死傷(有罪) |
上告審 | R4.10.7 | 上告棄却(決定) |
限界旋回速度を20キロ下回っていても、
限界旋回速度と「進行を制御することが困難な高速度」は異なる概念
だとし、「限界旋回速度を下回っているからといって、直ちに進行を制御することが困難な高速度に当たらないとは言えない」としている。
差戻し後一審は過失運転致死傷で有罪でしたが、差戻し後二審は危険運転致死傷で有罪。
最高裁は上告棄却で確定した様子。
これか。
今までの判例って、限界旋回速度を越えていたかもしくは限界旋回速度に近いことを「進行を制御することが困難な高速度」の目安にしていたと思われますが、限界旋回速度と「進行を制御することが困難な高速度」は異なる概念なんだとした点は一歩前進したのではないでしょうか?
なにせ、危険運転致死傷は滅多に成立しないことで評判が悪く、市民感覚とは乖離しちゃってますし。
ちなみに、詳しい内容は判例タイムズ1502号に掲載されてますから、気になる方はどうぞ。
上のような説示に至った理由も正論に感じます。
ちょっと思うこと
これ、事故が起きたのは2016年なわけですが、最高裁で上告棄却になったのは2022年10月。
差戻しがあった点で遅れた面が大きいのかもしれませんし、裁判員裁判だったこともあり6年掛けて判決確定なわけですよ。
被告人の防御権は最大限保証されないといけないとは言え、もう少し何とかならないもんですかね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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