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ロードバイクの事故と、本当の原因④。

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先日、なんかの記事の中でこちらのリンクを貼りましたが、メールを頂きました。

 

ロードバイクの事故と、本当の原因。
何年か前になりますが、名古屋で先行する時速35キロで進行する大型車に対し、左側の狭いところから時速36キロで追い抜きしたロードバイクが事故に遭った件をご存知でしょうか? こちら。 この事故、民事の判例もあります。 刑事事件の内容 刑事事件の...

 

読者様
読者様
自転車のほうが速度が速いのに、自転車が追い抜きされた可能性があるの意味がわかりません。
なぜ速いほうが追い抜き「する」ではなく「される」になるのでしょうか。

 

これ、どこかで書いたような気がしますが、見当たらないので説明します。

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なぜ?速いほうが追い抜き「された」?

まず、刑事事件での認定内容はこちら。

結果は無罪です。

 

そして民事での認定内容。
民事でも、認定内容は自転車のほうが速度は速いなんです。
そのように認定した理由は、クルマの側面についたロードバイクの塗膜が、後ろ⇒前に広がっているから。

 

じゃあなぜ、自転車が追い抜き「された」可能性が否定できないのか?

理由はシンプルです。
速度については「事故の瞬間」のみを意味していて、事故に至る前の状況が不明だから。
仮にですよ。
自転車がクルマに追い抜き「された」時に、至近距離だったために危険を感じて速度を上げて振り切ろうとして事故が起きた可能性を「否定できない」から。

 

交通事故の場合、人損と物損では賠償根拠が違います。

人損 物損
根拠法 自賠法3条 民法709条
過失責任 無過失の立証がない限りは賠償責任を負う 過失の立証により賠償責任を負う

自賠法3条は「無過失の立証がない限りは賠償責任を負う」仕組み。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

被害者が加害者の過失を立証するのではなく、加害者が無過失の立証をしない限りは賠償責任がある(人損)。

 

なので、「自転車が至近距離で追い抜きされた可能性を否定できない」=無過失の立証がないことになり、人損部分の賠償責任がある。
けど一方、自転車が至近距離で追い抜きされたことの「立証がない」ので、物損(民法709条)の賠償責任は否定されたという話です。

 

自賠法がこのような形で規定している理由は、被害者に過失の立証を求めることは酷だし、被害者保護の観点から立法されているからです。
結局この事故って、「自転車が追い抜きされた」ならクルマの過失が100%。

「自転車が追い抜きした」なら、自転車の過失が100%。

自転車のほうが速度が速いのに、なぜ「追い抜きされた」類型が起こりうるかというと、あくまでも速度を算定した基準が「事故の瞬間」であって、事故以前の状況は不明だからです。

 

なお、後続車のドライバーがロードバイクの存在を見ていないことも、「自転車が追い抜きされた可能性」を後押ししているような印象です。

詳しくは

なかなか興味深い判例なので気になる方は読んでください。
名古屋地裁R3.10.15判決です。
ただし控訴中になっているようなので確定判決ではありません。

 

ところで。

刑事事件でも認定されたように、

実際に,被告人車両と車両諸元が同一の大型貨物自動車を本件道路の第1車両通行帯に置き,被告人に本件事故時の走行状況を再現させて,同車両左側面と縁石との通行余地の幅を計測したところ約1mであり,自転車(28インチのロードバイク)に乗車した警察官に,同通行余地を走行させたところ,時折その着衣等が大型貨物自動車側面に接触するなど,安全走行が極めて困難な状況であったこと,本件道路の第1車両通行帯を通行する標準的な大型貨物自動車等を任意に抽出,調査したところ,車両左側の通行余地は約1mであったこと,本件道路を通過するロードバイクライダーを抽出し,第1車両通行帯を時速約35kmで走行する大型貨物自動車の左側通行余地1mの条件で,同車両の左側を追い抜いたり接近したりするか聞き取り捜査をしたところ,いずれの対象者も否定したことが認められる。

 

名古屋地裁 平成31年3月8日

本当に被害者がこの状況で追い抜きしたのか?についてはかなり疑問があることも間違いない。
約1mで左側を防音壁、右側に大型車(時速35キロ)の状況で追い抜きする??
これについてはかなり疑問。

 

けど結局、決定的な証拠はない。
「追い抜きされた」類型にしても、可能性を否定できない(自賠法3条)けど立証もない。
だから人身部分の賠償責任を負うわけですが、「速いほうが追い抜きされた可能性」というのは、自賠法3条の無過失責任を検討する上での話ということです。

 

過失責任ではなく、無過失立証責任なんですよ。
無過失の立証がない限りは、人身損害の賠償責任を負う仕組みなので。

 

「速い車両が追い抜きされた」なんて一見すると支離滅裂ですが、より正確に書けば「追い抜きされた可能性を否定できない」から人身損害の賠償責任を負うという話です。

 

そもそも、自賠法の概念って「平等」ではなく「公平」かつ被害者保護なんだと思うのね。

被害者に過失の立証責任を負わせるのではなく、加害者が無過失の立証をしない限りは賠償責任を負う仕組み。
刑事責任はもちろん、検察が過失の立証をしない限りは無罪。
間違っても、被告人に無罪の立証を負わせるわけではない。

 

仕組みが違うから混同すると意味がわからなくなると思う。



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