以前書いた記事にコメントを頂いたのですが、
そもそもこの道路標示、レア過ぎて知らない人もいるんじゃないかな。
第六十三条の七
2 普通自転車は、交差点又はその手前の直近において、当該交差点への進入の禁止を表示する道路標示があるときは、当該道路標示を越えて当該交差点に入つてはならない。
種類 | 番号 | 道路標示 | 表示する意味 |
普通自転車の交差点進入禁止 | 114の4 | 交通法第六十三条の七第二項の道路標示により、普通自転車が当該道路標示を越えて交差点に進入することを禁止すること。 |
この規制にご不満があるのかなと。
Contents
普通自転車と非普通自転車
頂いたコメントはこちら。
普通自転車交差点進入禁止は、歩行者の聖域である歩道に一部の車両を強制的に上がらせ、最良でも徐行させ、歩行者が歩道にたくさんいたら、徐行すらできない。という交通規制なので、アホらしい交通規制だ。とだけ思っていましたが、深い理由がある。ということが解りました。
条文的には、実際に、どの位置で歩道に上がるべきか、どのように上がれるのか。も考えたことが有りませんでした。
執務資料道路交通法解説も、この普通自転車交差点進入禁止に関しては、見たことがないので、いろいろな解釈が有り、奥が深いですね。
私の理解は、そもそも、普通自転車交差点進入禁止は、誤った交通規制だ。というものです。
10年以上前に警視庁に問い合わせたあら、東京都内には、その時点から、10年前には、普通自転車交差点進入禁止は無くなっている。とのことでした。なくした理由は聞けませんでしたが、やっぱり良くない交通規制だったからだと思います。
だって、禁止されるのは特例である普通自転車だけですから、何のための安全対策で、通行者のスムーズのためなのかわからないです。
特例として、優位性が与えられる、普通自転車であるがゆえに、禁止の憂き目に合う。という構造になっている法的な建付けも有りえません。
危険性を排除するために、歩道に上がらせるなら、普通自転車以外の軽車両や、原付が二段階右折が必要な交差点の場合は、キケンであるわけで、それを認めた交差点であり、その危険性は排除できていないことを明示しているとも言えます。
(普通自転車以外の自転車が)事故でもあれば、その危険性が潜在している証拠として、この普通自転車交差点進入禁止の存在が指摘されるかもしれませんね。
そのような前提から、警視庁管内では、排除した。のではないか。と想像しています。
ここまでは、15年ぐらい前に、普通自転車交差点進入禁止を知ってから、考えていたことです。
今になって、ある情報を見ると、今年の5月現在、全国に、856箇所あり、大阪府を含む、20都府県には存在していません。
そして、近年は、この規制の対象である、特例である「普通自転車」の規格を調べています。
(普通自転車交差点進入禁止以外の)多くの交通規制で、優位性の有る普通自転車ですが、ちゃんと認定できるのか、多くの警察本部の交通企画課などに問い合わせると、どこも、判断できないのです。「歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。」なんて、それ以上の法的な情報がない以上、だれも認めてくれない。という事がわかりました。
「制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。」も基準がわかりません。
普通自転車は型式認定がありますが、それはもっと厳しく、それが道路交通法等で言う、普通自転車の基準だとすれば、型式認定を取得した自転車は購入時はともかく、乗り出すとほとんどアウトです。
TSマークも同様です。このマークが張ってあっても、トレーラーを引いたら無効なのは当然です。
明確な基準が無くても、何らかの目安や、こんなものはダメとか、良いとか、例があるのではないかと思って、問い合わせると、それもほとんどなし。
広島県警が調べてくれましたが、判断基準に関する判例もなし。
私が質問した中で、沖縄県警だけが、「制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。」を満たさない例を教えてくれましたが、ブレーキレバーを握る際に、ハンドル上での握り位置を変更する必要が有るような自転車は、制動装置が走行中容易に操作できる位置に無いという判断目安がありました。この目安だとドロップハンドルの自転車はダメそうです。
roadbikenaviさんも、他で「ぶっちゃけた話」として書いている通り、日本の法律いおいて、普通自転車という、車両の特例定義は成り立っていません。
であるにも関わらず、その特例車両を前提としたルールの多いこと。挙句の果てに、「自転車≒普通自転車」という構図が定着してしまいました。
話を戻すと、この普通自転車交差点進入禁止の禁止対象となる特例となる自転車であることは、だれも認めてくれない。ということです。
新たにこの規制をかけた、広島市のケースで、担当の警察に確認しても、禁止対象の車両であること(=普通自転車)を現場で判断できない。と、正直でした。
もちろん、「自転車を除く」と補助標識の出た進入禁止も、だれも除かれません。
roadbikenaviさんが乗っている自転車は普通自転車だと思いますか?
仮にそうだとしても、誰もそれを認めてくれません。だからといって普通自転車ではないと、決まったわけではないですので、自信を持って普通自転車のルールを守るのは良いと思いますが。
ということで、ぶっちゃけた話ですが、この普通自転車交差点進入禁止について、だれも気にしなくても良い。という結論に至りました。
まず、「普通自転車」について。
確かに「歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。」とあるのですが、ロードバイクのようにチェーンケースがなくチェーンリング剥き出しの自転車は当てはまるのではないか?と考えたことがありますが、たぶんムリです。
結局のところ、サイズ以外に普通自転車と非普通自転車を分けることは困難。
たぶんサイズ以外の規定については「バカ避け」みたいなもので、危険性があると思う自転車を歩道から排除したいときに「あなたは普通自転車ではないから歩道はダメ」と注意指導するための根拠なんじゃないかと思っています。
第九条の二の二 法第六十三条の三の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
イ 長さ 百九十センチメートル
ロ 幅 六十センチメートル
二 車体の構造は、次に掲げるものであること。
イ 四輪以下の自転車であること。
ロ 側車を付していないこと。
ハ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
ニ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
ホ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
ニとホについては、取締りするための基準ではなく、おかしな自転車がいたときに注意指導するための根拠に過ぎないのかなと。
やたらギザギザで尖った自転車が歩道通行していたときに、歩行者が危険に晒されるのは避けたい。
かといって普通自転車の基準がサイズだけだと、「お前はダメだよ」と注意指導する根拠がない。
なので発想としては、あくまでも普通自転車と非普通自転車を分けるのはサイズで、ニとホについては「注意指導する根拠程度」と考えるほうが妥当かと。
そもそもサイズにしても、計測しないとわからないので取締りするのは困難ですから。
ところで、普通自転車の交差点進入禁止については直接的な罰則がなく、警察官から指示されても従わない場合のみ罰則(63条の8)。
このようにしている理由はこちら。
このような科罰の方法をとったのは、これらの義務を課すこととした目的が、これらによって他の車両の通行の円滑化を図るとともに、自転車利用者自身の安全を図ることにあることから、その履行について罰則を設けて担保するよりも、第一次的には自転車利用者自身の自覚と遵法精神にまつことが適当と考えられたからである。
「自転車の通行の安全確保のための方策」(警察学論集)、1978年11月、警察庁交通企画課課長補佐、田中節夫
歩行者の直前直後横断などに直接的な罰則がない理由も同様です。
道路交通取締法時代には歩行者にも罰則がありましたが、罰則が抑止力にならないことや、被害を受けるのは歩行者なので「自分の身は自分で守れ」的な意味合いから直接的な罰則がないのですが、昭和53年に新設された自転車横断帯と交差点進入禁止についても同じ考え。
ちなみに罰則がない規定はいくつかありますが、例えば18条1項に罰則がない理由は、道路幅や状況次第による点が大きく、取締りしようがないから。
普通自転車の交差点進入禁止
ちょっと前にも書いた気がするけど、
二段階右折の法意は、低速車両が道路中央に寄ることが危険なので、歩行者の横断に近い動きをさせることで安全を図ることにあります。
交差点進入禁止規制をする理由は、自転車の二種類右折を理解せずに左折巻き込みが起きるから。
軽車両が二段階右折するために直進することを理解してないドライバーもいて、左折巻き込み事故リスクが高いからだそうな。
小回り右折は危険!と言われ、二段階右折も危険だと言われた自転車の立場とは一体…
ところで「交差点進入禁止」については、事実上刑事責任として問題になることはあり得ません。
取締りしてないという話もありますが、警察官が注意指導するときには既に交差点に進入しているわけで、まさか「やり直せバカヤロー」とはならない。
なので民事として事故が起きた場合に問題になる程度の話。
で。
この方も勘違いしてましたが、違反と過失は別問題。
この方の理屈「普通自転車とは何かを規定できない⇒違反にならない」というのもムリがありますが、仮にそれが通るとしても刑事責任の違反と、民事の過失は別問題。
刑事と民事で同じ認定をするわけではないし、民事の過失なんてかなりカジュアルに認定されますから。
みんな大好き判例を探してみましたが良さそうなものはありません。
通行禁止の交差点に進入した過失として10~30%程度加算される可能性があるので、私としては「義務はありますよ」としか言えません。
けど、鎌倉の滑川交差点にしても、
「交差点進入禁止」を守る自転車を見たことないし、そもそも管轄署ですらここに「交差点進入禁止規制」があることを理解していない。
レア過ぎて知らない人もいるんじゃないかと思うけど、自転車横断帯については「車道から視認できない」という理屈は成り立つけど、交差点進入禁止規制についてはムリです。
まあ、なぜ直接的な罰則がないのかを考えた上で、この規制については無くして行くほうが無難なのかなと思う。
無いほうがベターだと思うなら、管轄署に相談するのがいいのかと。
ただし、ロードバイク「だけ」のことを考えるのではなく、ママチャリ基準で考えないとダメ。
たまに「行政に聞くのは迷惑だ」みたいなアホな人もいるけど、おかしな規制は市民が直していくもの。
質問する段階で、今まで気がつかなかった視点を得ることもあるのだし。
先日の「一時停止線が手前過ぎる」についても、
理由はわかりました。
詳しくはコメント欄をどうぞ。
法律を変えるのは難しいけど、規制を変えたり削除するのはまあまあ話を聞いてもらえます。
市民が使いやすく、遵守されやすく、より安全になるなら話は聞いてくれるもんです。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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