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歩道等を横切る前の一時停止義務(17条2項)。

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歩道や路側帯を横切り道路外の施設に入るときは、歩道等の手前で一時停止し、かつ歩行者の通行を妨げないことが義務。

(通行区分)
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条及び次条第一項において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない

これについてですが、以下2つの義務を並列的に課していることから、

①歩道等に入る直前で一時停止しなければならない
②歩行者の通行を妨げないようにしなければならない

どちらかを怠っただけで違反になります。
両方やれという義務を課したのだから、片方だけではダメなのは当然。

 

以前からいろんな方に聞いてますが、「かつ」だから両方怠ったら違反、片方怠っただけなら問題なしなんだと強弁するYouTuberがいるんですよね…

 

義務教育の敗北としか言えません。
「算数かつ国語の宿題をしなければならない」と言われときに、算数をやらずに国語だけやったらダメ出しされるのは当然。
「算数又は国語の宿題をしなければならない」なら、算数をやらずに国語だけやっても問題はない。

 

ていうか、この人の件ですよね。

 

いろんな人からこの人の件を聞いてますが、そろそろいい加減にしろと言いたい。

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公式見解、解説書の見解

ド素人がグダグダ独自見解を述べたところで水掛け論にしかならないので、解説書の見解から引用します。

歩行者の通行を妨げないとは、たとえば歩道を通行しまたは通行しようとしている歩行者をして一時立ち止まらせるとか、後戻りを余儀なくさせるようなことのないことをいう。
なお、車両の運転者は、歩道等に入る直前で一時停止し発進したとしても、その後において、歩行者の通行を妨害することになるときは、再び一時停止するか、または徐行しなければならない。
「歩道等の直前での一時停止」「歩行者の通行を妨げないこと」このいずれかの要件を欠いても法第17条第2項の違反となる。

 

警察庁交通企画課、道路交通法ハンドブック、p1070、ぎょうせい

一時停止の義務と歩行者の通行を妨げてはならない義務をともに要求されるのでそのいずれかの義務を欠いても違反となる(同旨 法総研75ページ)。

 

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

一時停止の義務と歩行者の通行を妨げてはならない義務とは、ともに要求されるからその一方を欠いても違反となる。

 

久保哲男、「実務道路交通法」、立花書房、1986

2項の「歩道等に入る直前で一時停止し」とは、(中略)この場合、進路上の歩道等を歩行者が通行していると否とを問わない。

 

木宮高彦、岩井重一、「詳解道路交通法」、有斐閣ブックス、1977

※註釈道路交通法(いわゆる横井註釈の改訂版のため、横井註釈も同記述)

歩道手前の地点での一時停止義務は,飽くまで,本件歩道に進出するに当たって,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認するために課されるものであり,本件歩道上を左方から進行して来る自転車等との本件衝突地点における衝突を避けるために本件衝突地点への到達を遅らせることを目的として課されるものではない。

 

広島高裁 令和3年9月16日

ところで、「歩行者の通行を妨げない」とは、「歩道等の手前で一時停止すること」は別問題。
たとえば、歩道の手前で一時停止したものの植栽帯や歩道橋などにより歩道を十分視認できない場合があるわけで、

歩道の手前で一時停止して「確認」しても、まだ十分な視認ができない場合にはさらに徐行進行し、歩道上で一時停止して死角を解消しながら進行することになります。

本件歩道手前で一時停止した上,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務がある

 

広島高裁 令和3年9月16日

これは警察庁交通企画課が説明するのと同じこと。

なお、車両の運転者は、歩道等に入る直前で一時停止し発進したとしても、その後において、歩行者の通行を妨害することになるときは、再び一時停止するか、または徐行しなければならない。

 

警察庁交通企画課、道路交通法ハンドブック、p1070、ぎょうせい

「歩道等の直前で一時停止」と「歩行者の通行を妨げないこと」は別個の要件なので当然ですね。

で。
歩道等を横切る前に一時停止しない人の言い訳ってこれ。

いろんな人
いろんな人
歩行者がいないことを確認してから歩道を横切ったのだから一時停止しなくても問題ない。

 

一時停止しないまま歩道に進入して事故を起こした人の言い訳はこれ。

読者様
読者様
歩行者や自転車がいないことを確認していたのに見逃した。

 

一時停止せずに事故が起きなかった人の言い分と、一時停止せずに事故を起こした人の言い分は同じです。
つまり、「一時停止しなくても確認していた」という人の言い分は全くあてにならない。

 

なぜ一時停止義務を課したのかというと、死角が生じやすいから停止して確認させたいワケ。
「停止しなくても確認していた」はたまたま事故が起きなかった場合の「結果論」について語っているだけなので、単なる言い訳なのよ。

「一時停止」の意義と、「一時停止では足りない」とした広島高裁判決はこちら。

 

歩道を通行する自転車と、路外に出るために左折するクルマ。
このような事故は悲しいところですが、 県道を走っていた車がこちらの駐車場に入ろうと左折したところ走ってきた自転車と衝突したということです 要は歩道通行自転車と、路外に出るために左折したクルマが歩道上で衝突した事故になります。 一時停止 歩道...

 

確かに時速40キロで歩道を通行する自転車については容認できないし非難されてしかるべきですが、かといって一時停止や安全確認しないまま歩道を横切ったことは容認できない。
死角で見えないのだから、たまたまジョギングしている人に衝突したかもしれないし、小走りの小学生に衝突したかもしれないし、たまたま何も起きなかったかもしれない。
偶然の結果論についての話じゃないでしょ?としている点は参考になる判例です。

 

一時停止の意味は、「止まって確実な安全確認」をすること。
一時停止してもまだ十分な安全確認ができない時は、小刻みに進行と停止を繰り返して安全確認しながら進行する義務がある。

 

当たり前ですが、歩道を横切る自転車も同じこと。
コンビニの駐車場からノールックで歩道に飛び出す自転車とかいますが、たまたま事故が起きなかっただけの結果論に過ぎない。

 

とりあえず要件としては、歩道等に入る直前の一時停止が先行するので、歩道の縁石や路側帯線を「一時停止標識と同等」に捉えた上で、さらに歩行者の妨害を禁止する義務を別に課していることになります。

ちゃんと勉強しよう

冒頭の動画の人って不勉強著しいとしか言いようがないのですが、そもそも、ブログやYouTubeの解説なんて信じるほうにも問題がある。

 

間違っている前提で批判的に捉えないと失敗すると思いますよ。
当然、うちにしてもそう。

 

独自解釈は危険なので、複数の解説書や判例から整合性を取るしかないのよ。
執務資料にしても怪しい記述は多々見つかるし、判例にしても首をかしげるものが掲載されているわけで。
執務資料だから正しい!なんて読み方したら危険過ぎて話にならない。

 

まあ、日本語の問題として「片方怠っただけで違反」なのは普通に読み取れるかと。
なのでここについて解釈が割れる要素がない。

 

なお、みんな大好き「執務資料」にしても、「並列的に2つの義務を課しているから片方怠ったら違反」と書いてあるはず。
なお、17条2項に関係する判例の中には、特殊な事情から歩行者を妨げたものの無罪とした判例があります。
名古屋地裁 平成3年1月18日判決(差戻し後の一審)です。

 

横断歩道で一時停止後に発進するときは、歩行者との距離はどれくらい必要?
横断歩道で歩行者を優先するために一時停止した後の話。 歩行者が自車の前を通過した後は、歩行者が横断歩道上にいても安全側方間隔さえ確保していれば発進しても問題ありません。 しかし、その側方間隔がどれくらい必要なのかについては何ら明確なものはあ...

 

けどまあ、おかしな解釈を力説する人の心理はわかりませんね。
安全よりも自分のお気持ち優先のドライバーがいる、ということがよくわかる動画です。
安全確認とは結果的に事故が起きなかった話を指すのではなく、きちんと高度な確認をしてから進行することなんだと広島高裁判決が教えてくれてます。


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