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一時停止の意義と位置。

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ちょっと前に書いた記事についてご意見を頂いたのですが、

 

一時停止線が手前過ぎる理由はシンプルだった…
ちょっと前になりますが、一時停止線がやたら交差点手前にある件を取り上げましたが 手前過ぎる理由はシンプルでした。。。 手前過ぎる一時停止線 このように、やたらと一時停止線が手前過ぎるわけですが、 疑似横断歩道を加味しても、やたら手前過ぎる。...

 

一時停止線が交差点より手前すぎる件について読みました。

免許更新時の講習でいつも言われるのが、一時停止標識の場所は、安全確認のための停止線ではなく、「停止させるための停止線」である、と。
その場所で停止しても何も見えないので停止しても意味がないという話をよく聞きますが、確認できないのは当然で、停止したあとに徐行でそろそろと交差点に安全確認しながら近づくのです。
もし停止線の位置が交差点ギリギリであったなら、様々な危険が考えらるでしょう。
と言って講師の人が色々と説明するのですが、それは書くまでもないので割愛します。

何が言いたいのかというと、上記の理由は後で取って付けたように考えられた理由なのでしょうか?
「交差点に入ろうとする車両は・・・」なので「交差点の手前」にしか一時停止は設置できない(のちに交差点内でも可能になったが)だけで、
本来ならば安全確認のためにもう少し交差点寄りに設置したいのでしょうか?

自分は、安全のためには現行の位置(交差点のすみ切りより一車長くらい手前)で一旦停止させるという方法で問題ないと思うのですが。
一時停止位置の目的についてはっきりと明言している判例などありますか?
例えば、優先道路を通行している車両や歩行者に対する保護(交差点への接近方法)のためには・・など。

正論ですが、一時停止線を設置する場所については合理的な理由がないと、納得しにくいし遵守されなくなるのも事実。

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一時停止の意義

一時停止の意義についての判例…あんまりいいのがないのですが、適当にピックアップします。

 

まずは昭和46年改正以前の判例で、停止線がなかった時代のものから。
この判例は被告人が一貫して「止まった」と主張したのですが、取締をした警察官が見ていた位置が悪いことなどを理由に無罪。
停止線がなかったことを念頭に読んでください。

車両等が交差点に入るに際し一時停止するよう要求されるのは、いうまでもなく、左右道路の交通の状況を見て安全を確認したのち交差点に入ることによつて、衝突等の事故の発生を防止しようとするためであるから、左右道路をある程度見通して交差点に接近して来る車両等の有無を確認できる位置に停止するのでなければその目的を達しないわけであるが、前記実況見分調書、検証調書および証人に対する証人尋問調書によれば、右交差点附近は、特に北方へ通ずる道路において、かなり彎曲し、北西角には前記A方家屋、南西角にも人家が交差点に近接して存在し、交差点入口から先端が2m余の所に停車した被告人の自動車の位置からは、左右ことに左側北方道路への見通しは必ずしも良好でなく、右位置は、右一時停止の目的を達するのに最も適当とはいい難いものであることが認められる。

 

すなわち、これよりもさらに交差点に近寄つて停車することが望ましく、そうであるからこそ、前記のように取締りの三警察官もそのような停止位置ならば確認の可能な前記地点に待機すれば足りると判断する理由があつたものである。しかし、さらに右実況見分調書および検証調書によつてみるに、右交差点附近の道路の状況は、右のように彎曲しているうえ、北方道路と南方道路とでは幅員も異なり、かなり不整形な丁字型交差点をなしていて、交差点西北角すなわち被告人の進路左側角はことにゆるやかな曲線となつているのであつて、検証時に見られたような路面に白線により停止位置を示す標示が施されていなかつた当時においては、走行する自動車内から交差点に入る位置を正しく認識することは困難な状況にあつたと認められる。そうしてみると、一時停止すべき位置は、自動車運転者が最も安全妥当と考える地点を選ぶよう、その合理的判断に委ねられているものというほかはなく、そうとすると、前へ出すぎて交差点内へ入つて停車するのではかえつて危険であるから(本件交差点で本当に左右の交通の状況を確認するには自動車の前部が交差点内に入らなければならないのではないかと思われる)、運転者の心理としては、むしろ慎重を期して少し手前に一旦停車し徐行しつつ交差点に入る方が安全であると考えるのが自然であろうし、さらに、その場合、一時停止の標識の存在する地点を停止位置に選ぶことが無理からぬ行為といえよう。

 

柏崎簡裁 昭和40年11月2日

同じく停止線がなかった時代の判例。

被告人が一時停止の道路標識の設置されてある場所において一時停止をしたことはこれを認めることができない。かりに被告人が一時停止の道路標識の設置されてある場所において一時停止をしたとしても、道路標識の設置されてある場所においては、右方の道路に対する見とおしはきくが、左方の道路に対する見とおしは板塀および石塀のために視界が遮えぎられて見とおしがきかないこと検証調書の記載によつて明らかであるから、同所に停止したのでは、一時停止をしたことにはならないものと解する。このことは、道路標識によつて一時停止すべき場所と指定された道路における停止すべき位置は、左右の交通の安全を確認し得る地点か、それとも道路標識の設置されている地点かということである。「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年12月17日総理府建設省令第3号)別表第一、番号330」によると、「一時停止の道路標識を設置すべき場所は、車両が一時停止しなければならない場所として指定する場所内の必要な地点における路端」であり、「同命令末尾の備考二」によると、「道路の形状その他の理由により、道路標識をこの表の設置場所の欄に定める位置に設置することができない場合又はこれらの位置に設置することにより道路標識が著しく見にくくなるおそれがある場合においては、これらの位置以外の位置に設置することができる」ことになつている。これによつて見ても明らかなように、一時停止の道路標識の設置されてある場所は常に必ず一時停止をしなければならない場所であるとはかぎらないわけであつて、一時停止の道路標識は、設置場所において一時停止すべきことを命じたものではなく、当該交差点は一時停止をしなければならない交差点であることを表示するものと解するのが相当である。実際どこに停止すべきかは、交差点の状況により自然にきまるものと考えられるところ、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ることを目的とする道路交通法(第1条、第9条第1項)の趣旨からすれば、左右の交通の安全を確認し得る地点において停止すべきは当然のことであると思う

 

福島簡裁 昭和40年10月9日

まず、当時の43条の確認。
今と規定が異なります。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 交差点に入ろうとする車両等は、公安委員会が道路又は交通の状況により特に必要があると認めて指定した場所においては、一時停止しなければならない。ただし、当該交差点において交通整理が行 なわれているときは、この限りでない。

今の規定との差は以前説明しましたが、

 

なぜ?おかしな位置に一時停止線がある理由。
たまにですが、一時停止の停止線がやたら手前にあり、「そこで停止しても交差道路の状況はわからん」というところがありますよね。 ※左側道路の停止線のような。 なぜこうなるのでしょうか? なぜ?停止線がやたら手前になる理由 ぶっちゃけた話、そうな...

 

昭和46年以前は「交差点に入ろうとする車両等は」なので停止線がなくても停止する場所は「交差点の手前」。

 

停止線がないから揉めてますが(笑)、福島簡裁は「左右の交通の安全を確認し得る地点において停止すべき」とし、柏崎簡裁も同様に捉えながらも「運転者の心理としては、むしろ慎重を期して少し手前に一旦停車し徐行しつつ交差点に入る方が安全であると考えるのが自然であろう」としています。

 

なお、上の記事で触れた名古屋高裁金沢支部判決については、交差点直前で一時停止しても見通しが効かない場合には非一時停止道路の優先通行権の保護から、やはり停止すべきは交差点の直前(見通しが効く場所より手前)としています。

前記道路標識の設置場所が当該交差点並びに附近の地形的状況により必ずしも左右の見通し等により他の交通の安全を確認しうる地点と合致しない場合の生ずることは容易に考えられるところであり、通常の場合には交差点の直前であつて左右の見通しが可能な地点で一時停止すべきものと解して何ら差支ないけれども、交差点に幾分進入しなければ左右の見通しができない地形の場合には、道路標識が交差点の手前にあつても、なお見通しの可能な地点で一時停止をなすべきかは議論の余地はあろうが、本条による指定が単なる危険防止の措置にとどまらず、幹線道路に対する優先通行権の保護の確保という意味をも有することを考え併せると、通常の場合と同様、交差点の直前において一時停止すべきものと解するのが相当である。

 

名古屋高裁金沢支部 昭和37年2月8日

で。
頂いた意見は正論ですし、停止線で停止してからソロソロと注意深く接近して安全を確保するのが筋。
ただし、停止線がなかった時代(かつ、「交差点に入ろうとする」と規定していた時代)の判例を見ると、一時停止すべき場所は「左右の見通しが効く場所で、交差点の直前」と解釈している傾向にある。

 

そして古い解説書をみても、「可能な限り左右の見とおしがきく場所を指定すべき」(詳解道路交通法)となっています。

 

昭和46年改正後の判例については、そもそも反則制度が導入されたため道路交通法違反の判例がメッキリ少なくて良さそうなものは見つからず。
業務上過失致死傷の判例では以下があります。

一時停止の標識及び停止線の標示に従い、所定の位置に車両を一時完全に停止させるべきことはもちろんであるが、ついで自車を発進させるにあたっては、一般に交差道路を進行する車両等の進行妨害をすることがないようにしなければならない道路交通法上の義務を負う(同法43条)にとどまらず、ひろく、進路前方左右、特に右方の安全を確認し、自車の進行が交差道路上の交通に危険を及ぼすことのないよう十分な配慮をして、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務をも負うことは多言を要しない。

 

東京高裁 昭和54年12月18日

次は最高裁判例。
非一時停止側は見とおしが悪いので徐行義務がありますが、徐行せずに時速50キロで突っ込んできたもの。
一時停止した被告人車には信頼の原則を認めています。

本件のように交通整理の行なわれていない、見とおしの悪い交差点で、交差する双方の道路の幅員がほぼ等しいような場合において、一時停止の標識に従つて停止線上で一時停止した車両が発進進行しようとする際には、自動車運転者としては、特別な事情がないかぎり、これと交差する道路から交差点に進入しようとする他の車両が交通法規を守り、交差点で徐行することを信頼して運転すれば足りるのであつて、本件A車のように、あえて交通法規に違反し、高速度で交差点に進入しようとする車両のありうることまでも予想してこれと交差する道路の交通の安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

 

最高裁判所第三小法廷  昭和48年12月25日

停止線の妥当性

先日の記事ですが、このように停止線がやたら手前な理由は、「現コンビニ」は元々ブロック塀&隅切りがなかったことが原因でしょう。

 

一時停止線が手前過ぎる理由はシンプルだった…
ちょっと前になりますが、一時停止線がやたら交差点手前にある件を取り上げましたが 手前過ぎる理由はシンプルでした。。。 手前過ぎる一時停止線 このように、やたらと一時停止線が手前過ぎるわけですが、 疑似横断歩道を加味しても、やたら手前過ぎる。...

 

元々は隅切りがなかったので、左折車が進入することを考慮した停止線と言えます。

 

けどブロック塀がなくなり隅切りがある今となっては、今の位置で停止させる意義が乏しいわけで、疑似横断歩道と

左側の見通しが効かないところからの飛び出しを考慮したとしても、隅切りのところまで停止線を前進させても問題ないと思う。
手前過ぎる理由がない。

「確認できないのは当然で、停止したあとに徐行でそろそろと交差点に安全確認しながら近づく」については正論ですが、かといって停止線の位置に根拠がなければ遵守されなくなるのも事実。

 

結局のところ、「なぜそこが停止線なのか?」という意味すら理解せずに交差道路ギリギリまで出ていく車両もいますが、こちらの意図としては「なぜその位置なのか?」という意味を考えてみると、気がつかなかった問題に気がついて一時停止の遵守率が上がるよね、というだけの話。

 

けど「なぜその位置に?」という疑問を解決できない停止線もあるわけで、皆さん停止線の位置について合理的な理由を知りたいもんだと思うのですね。

 

説明つかない規制って、「ルールだから守れや!」では従う意義がわからなくなるわけ。

 

けどいろいろ調べてみると、停止線がない時代は停止位置について盛大に揉めているし、昭和46年改正で「交差点内に停止線を設置可能にした」理由についても、隅切りが大きくて交差点直前で停止しても見通しが効かない場合を考慮したんだろうなと読み取れますが、遵守されない規制については規制内容から見直したほうがむしろ安全になる場合もあるので、上の事例については停止線を前進させたほうがいいように感じます。

 

いろいろ調べてみるとわかりますが、昭和35~42年あたりまでは「大丈夫か?」と心配になるくらい道路交通法がいい加減で、停止線がないから停止位置は不明な一時停止だとか、そりゃメチャクチャになるわなと。

 

まあ、ケースバイケース過ぎるので交差点ごとに判断するしかありませんが、個人的には手前過ぎる停止線のうち「合理的な理由がないもの」は直すべきと思っています。

 


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