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路上駐停車車両を追い抜くときに注意すること。

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自転車に乗っていて路上駐停車車両を追い抜くときに注意することについて質問を頂いたのですが、大雑把にいえば三点。

①進路を右に変える前に後方確認
②ドア開けリスクを考慮した側方間隔
③駐停車車両の前方からの飛び出しリスク

①と②についてはよく言われることですが、③について。

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路上駐停車車両の前方

路上駐停車車両の前方から歩行者が直前横断することがあるのですが、これについては例えば片側一車線道路なら頻繁に起こりうるけど、片側三車線道路ならそのような横断はまず起こらないことが期待されるので、どこまで「直前横断リスク」を警戒すべきかは状況によります。

 

また、路上駐停車車両の位置が「横断歩道の直前」(おおよそ5m)であれば、路上駐停車車両の前に出る際に一時停止義務(38条2項)があることに注意。

幹線道路にて路上駐停車車両を追い抜くときは、きちんと後方確認して、路上駐停車車両のドア開けリスクを考慮して側方間隔を取れば、ほとんどの場合十分な気がします。

 

ただまあ、一応このような判例があります。
判例は東京高裁  昭和50年12月11日(業務上過失致死罪)。
まずは事故概要。

左側道路は会社の私有地(通路)なので道路交通法上の道路ではありませんが、青(オートバイ)は路上駐車車両を避けるために道路中央寄りに進路変更し、速度を60キロから50キロに減じて進行。
赤(原付)が道路外から右折進入したために、衝突して赤原付が死亡。

 

オートバイ運転者が業務上過失致死罪に問われた事件です。

 

左側道路は会社の私有地なので交差点にはならず、被害者(原付)は「道路外から右折合流して正常な交通を妨げた」(25条の2第1項)扱いですが、東京高裁は信頼の原則を認めずに有罪としています。

しかして、原審で取調べた関係各証拠によれば、被告人は自動二輪車を運転し、新潟市ab番地先県道(幅員7.25mで道路中央部分に白破線のセンターラインが設けられている)上センターラインの左側部分(以下進行車線という)を三菱ガス化学方面より国道7号線方面に向け進行中、進路左側の同番地土建会社甲組正門通路から県道に進入し、対向車線に入るため被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車と、右正門前県道上において衝突したことが認められる(被害者の甲組正門通路から県道上への進出が交差点内への進入ではなく単なる横断であることは、右正門から甲家の屋敷内に通ずる幅員約4mの通路が道路交通法2条1項1号にいう道路に当たらない旨原判決が正当に説示したところから明らかである)。したがつてこの場合、原則的には所論のとおり、車両を運転して県道を横断しようとする者は、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負う(道路交通法25条の2第1項参照)のであつて、県道上を進行する被告人としては、特段の事情がない限り、横断車両が右安全確認義務を遵守することを信頼して自車を運転すれば足り、この義務を怠つてその進行車線を横断しようとする車両のあり得ることまで予想すべき注意義務はないものといえるであろう。
しかしながら、本件においては、原審で取調べた各証拠並びに当審で取調べた検証調書及び証人丙の尋問調書を総合すれば、以下の事実が認められる。すなわち、被告人が自動二輪車を運転して県道上を前示甲組正門付近に差しかかつた際、同正門手前の進行車線左側端に正門の方から普通貨物自動車(パネル車)、大型貨物自動車(8トン車)の順序で2台の車両が相接して駐車していたこと(2台の車両の順序については、もし認定とは逆の順序で駐車していたとすると、実況見分ないし原審及び当審の検証の際における被告人の指示説明どおり、被告人が「2」地点において「A」地点の被害車両を最初に発見することができるためには、大型貨物自動車は極端に道路左側端に寄つて駐車していたとみなければならず、不合理である)、被告人は同正門手前で右駐車車両を認めたが、そのまま進行すればこれに追突することは確実であり、またこれに遮ぎられて同正門前はもとより進行車線前方の道路状況を見とおすことは全く不可能であつたこと、そこで被告人は、漸次、自車の速度を従前の時速約60キロメートルから45ないし50キロメートルに減速するとともに、自車をほぼセンターライン寄りに移行させて自車の進路を変更したうえ、駐車車両の右側方を通過しようとしたところ、大型貨物自動車の右後方(前示「2」地点)において、前方23.3m位の地点(前示「A」地点)に、甲組正門通路から県道に進入し、前示のように、被告人の進行車線を右斜めに横断中であつた被害者乙運転の原動機付自転車を発見し、急拠、ハンドルをやや右に切ると同時に、急制動したが間に合わず、自車を右原動機付自転車に衝突せしめたこと、被告人は自動二輪車等を運転して同所をしばしば進行していたもので、前示駐車車両の前方に甲組正門及び同正門から甲家屋敷内に通ずる通路があり、仕事関係の車両または歩行者が、日頃、同正門を通つて通路から県道に出たり、県道から通路に入つたりしているのを知つていたことが認められる。そして、同正門通路から被告人の進行車線を横断しようとする者にとつても、右のように、同正門右側に相接した2台の駐車車両があると、横断の際は歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負うとはいえ、被告人において駐車車両に遮ぎられて、同正門前はもとより進行車線前方を見とおすことが不可能であつたと同様、横断開始に先き立ち同正門通路のところに車両を停止させた位置から右方の交通の安全を確認することは、駐車車両に遮ぎられて全く困難であつたから、右車両の中には、右方の交通の安全を確認するため、同正門から県道内に横断を開始し、被告人の進行車線上、駐車車両に妨げられずに右方を見とおせる地点まで進出する車両のあり得ることはもちろん、その際、右方の交通の安全を十分確認することなく、漫然、横断を開始し、駐車車両の陰から、突如、対向車線に入ろうとする車両(本件被害車両がその例であることは原審で取調べた各証拠から明らかである)のあり得ることも、現在のわが国の道路交通の実情からいつてあながち否定できないところである。しかも、被告人は同正門から県道に出入する車両等のあり得ることを知つていたというのであるから、これら車両の中には、右で説示した本件被害車両のごとき車両のあり得ることも十分予見可能であつたはずであり、且つ、被告人が、警音器吹鳴義務はともかく、原判示の減速徐行義務を尽しておれば、本件衝突を回避することも十分可能であつたと思われる。したがつて、以上の諸事情のもとでは、駐車車両の側方を通過しようとする被告人において、横断車両が、横断開始に先き立ち、前示安全確認義務を尽すであろうことをあてにしても、右信頼は社会的に相当であるとは認められない。
右諸事情は、前示信頼の原則の採用を否定すべき特段の事情に当たるというべきである。論旨は理由がない。

 

東京高裁  昭和50年12月11日

この判例をどのように評価すべきかになりますが、原則論はこれ。

原則的には所論のとおり、車両を運転して県道を横断しようとする者は、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害しないようにする安全確認義務を負う(道路交通法25条の2第1項参照)のであつて、県道上を進行する被告人としては、特段の事情がない限り、横断車両が右安全確認義務を遵守することを信頼して自車を運転すれば足り、この義務を怠つてその進行車線を横断しようとする車両のあり得ることまで予想すべき注意義務はないものといえるであろう。

基本的には路上駐停車車両の前方から直前横断する歩行者や車両のほうがはるかに大きな注意義務があります。
しかし「特段の事情」がある場合には、車道を進行する車両側にも大きな注意義務があるわけで、

右方の交通の安全を十分確認することなく、漫然、横断を開始し、駐車車両の陰から、突如、対向車線に入ろうとする車両(本件被害車両がその例であることは原審で取調べた各証拠から明らかである)のあり得ることも、現在のわが国の道路交通の実情からいつてあながち否定できないところである。しかも、被告人は同正門から県道に出入する車両等のあり得ることを知つていたというのであるから、これら車両の中には、右で説示した本件被害車両のごとき車両のあり得ることも十分予見可能であつたはずであり、且つ、被告人が、警音器吹鳴義務はともかく、原判示の減速徐行義務を尽しておれば、本件衝突を回避することも十分可能であつたと思われる

「予見可能」だとして被告人車には減速徐行すべき注意義務違反を認定して有罪。
なお「警音器吹鳴義務」については訴因に含まれてないことを一審が勝手に認定したとして違法な判決として破棄。

 

警音器吹鳴義務については、以前何度か書いたので割愛します。

 

警音器の使用制限違反と、吹鳴義務の話。
以前何回も取り上げてますが、道路交通法54条2項で「危険を防止するためやむを得ない場合」以外は警音器の使用を禁止している一方、「危険を防止するためやむを得ない場合」なのに警音器を使わなかったことを過失として業務上過失致死傷罪で有罪にしている...

 

過失運転致死罪の注意義務違反として警音器吹鳴義務違反による過失を認定する場合もありますが、ちょっと話が長くなるので割愛。

マレな判例かもしれませんが

自転車がこのような路上駐停車車両を追い抜く際に怖いのは、

①右に進路を変えるときの後続車
②ドア開けリスク
③主に歩行者の直前横断

直前横断する方が悪いにしろ、一定の状況下では自転車側も過失致死傷罪に問われかねないので、注意しておくに越したことはないかと。
基本的には直前横断する方に注意義務が大きいのは当然ですし、クルマやオートバイが横断する場合にはなおさら大きな注意義務がありますが。

 

ただまあ、歩行者が直前横断して二輪車側が死亡した事故について、歩行者が重過失致死罪で有罪になった事例もあるわけで、

 

「歩行者横断禁止」を破って横断し、有罪になるケース。
道路交通法では「歩行者横断禁止」という規制があります。 このルール、罰則はありません。 (横断の禁止の場所) 第十三条 2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。 罰則がないもの...

 

双方がやるべきことをするしかないのですけどね。
路上駐停車車両を追い抜く際には、基本は後方確認とドア開け対策の側方間隔、状況によっては直前横断リスクへの徐行という感じでしょうか。


コメント

  1. ゆき より:

    車なら自分は死にませんが、自転車だと普通に死ねますからね。
    「マレな判例かもしれませんが」の後の画像も、白の軽自動車の車内に人はいなさそうでも、左前方に←Pの表記があるから、交差点か歩道の切り下げがありそうですし要注意ポイントかなぁ。
    子供とか簡単に隠れますし、街路樹の切れ目で木の陰から歩行者も稀にあるし。

    なお、個人的に印象に残ってるのは何故か左から高速で追抜きされたパターン。
    なんで路駐が有るのに左から抜いたのか未だに謎……

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      注意し過ぎて損をすることはないですし、路上駐車車両の前から自転車がノールック横断してきたら相変わらず50:50になりかねないので、注意し過ぎておいたほうがいいと思います。
      ただまあ、ノールック横断は重罪にして欲しいのも事実。

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