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「13歳未満、70歳以上の自転車は横断歩道で優先!」という珍説。

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道路交通法38条1項は、横断歩道ー歩行者、自転車横断帯ー自転車の関係のみを優先する規定ですが、

自転車に乗り横断歩道を横断する者は、この規定による保護は受けません。

 

法の規定が、横断歩道等を横断する歩行者等となっており、横断歩道等の中には自転車横断帯が、歩行者等の中には自転車が含まれまれているところから設問のような疑問を持たれたことと思いますが、法38条1項の保護対象は、横断歩道を横断する歩行者と自転車横断帯を横断する自転車であって、横断歩道を横断する自転車や、自転車横断帯を横断する歩行者を保護する趣旨ではありません。ただし、二輪や三輪の自転車を押して歩いているときは別です。
つまり、あくまでも、法の規定(法12条、法63条の6)に従って横断している者だけを対象にした保護規定です。

 

道路交通法ハンドブック、警察庁交通企画課、p2140、ぎょうせい

一定程度出てくる意見はこれ。

読者様
読者様
ジジイとガキンチョは自転車に乗ってても優先権があるって聞いたけどマジですか?

正解はこちら。

概ね6歳未満の「小児用の車」とされる自転車は、道路交通法上「歩行者」になるため優先権があります(2条3項1号)。
それ以外の年齢が乗る自転車は、道路交通法上「自転車」なので優先権はありません。
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13歳未満、70歳以上の話

13歳未満、70歳以上の自転車は、標識の有無にかかわらず「歩道」を通行可能です。
歩道を通行可能な自転車でも、道路交通法上の区分は自転車のままなので横断歩道では優先権がありません。

 

けど、この珍説を書いているサイトはまあまあ見かけます。

 

論より証拠。
例えば福岡高裁 平成30年1月18日判決の被害自転車は71歳ですが、「自転車」として優先権がないとしています。

控訴人らは、Aが本件横断歩道手前で一度自転車から降りた後、再び自転車に乗って横断しているところ、自転車に乗らずにそのまま自転車を押して横断した場合(横断歩道を横断中の歩行者と扱われる。)とではわずかな差しかなく、また、被控訴人は、横断歩道の手前で大幅に減速する義務及び一時停止すべき義務(道路交通法38条1項)があるにもかかわらず、減速せずに進行していること、本件事故現場が商店街の道路であること等に照らせば、Aの過失は0パーセントと評価すべきである旨主張する。

 

しかし道路交通法は歩行者と軽車両である自転車を明確に区別しており、自転車を押して歩いている者は、歩行者とみなして歩行者と同様の保護を与えている。(同法2条3項)のに対し、自転車の運転者に対しては歩行者に準ずるような特別な扱いはしておらず、同法が自転車に乗って横断歩道を通行することを禁止しているとまでは解せないものの、横断歩道を自転車に乗って横断する場合と自転車を押して徒歩で横断する場合とでは道路交通法上の要保護性には明らかな差があるというべきである。
また、道路交通法38条1項は、自転車については、自転車横断帯(自転車の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号の2)を横断している場合に自転車を優先することを規定したものであって、横断歩道(歩行者の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号)を横断している場合にまで自転車に優先することを規定しているとまでは解されずむしろ、本件の場合、Aは、優先道路である本件道路進行車両の進行妨害禁止義務を負う(同法36条2項)ことからすると、過失相殺の判断にあたっては、原判決判示のとおり、自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当である。
さらに、一般に、交差道路の車両の通行量が多いことにより交差点を通過する車両の注意義務が加重されるとは解されないことからすると、本件事故現場が商店街の道路で横断自転車の通行量が多かったとしても、それにより被控訴人の注意義務が加重されると解するのは疑問である。この点を措くとしても、本件道路は、車道の両側に約2メートル幅の歩道(一部は路側帯)が整備された全幅が12メートルを超える片側1車線(一部は2車線)の県道であり、車両の交通量も比較的多いこと等を考えると、幹線道路に近い道路であるというべきであって、通常の信号機による交通整理の行われていない交差点における交差道路からの進入車両等に対する注意以上に、特に横断自転車等の動向に注意して自動車を運転すべき商店街の道路とはいえない。

 

平成30年1月18日 福岡高裁

次。
大阪地裁、平成25年6月27日判決。
被害自転車は小学生ですが、やはり優先権は否定。

認定事実によれば、本件事故の主要な原因は、被告が、本件交差点を通過する際に、本件横断歩道が設置されていたにもかかわらず、減速、徐行等を行わず、指定最高速度を越える速度で進行したこと、進路前方、左右の安全を十分に確認しなかったことにあるというべきである。

 

しかし、他方、被害者は、自転車を運転して、優先道路である東西道路を横断するにあたって、東西道路の西行車線のみならず、東行車線を走行してくる車両の有無及びその安全を確認して横断すべきであったといえるところ、本件事故の態様からして、被害者が、東行車線に進入する前に同車線上の接近車両の有無等の安全確認をしなかったものと推認されるのであり、しかも、西行車線が渋滞し、本件交差点内まで車両が連続して停止しているため、東行車線走行車両からの見通しがよくない状況にあったものであり、加えて、被害者は、自転車を運転して、歩行者の歩行速度よりも速い速度で横断したものと解されるのであって、これらの点は、本件事故における、被害者の落ち度と評価できる。この点は、被告車の車高如何によって、左右されるものとは解されない。

 

原告らは、本件事故当時、横断歩道上に歩行者がいなかったから、被害者は、横断歩道上を自転車で走行することが法的に許されていた、自転車で横断歩道上を通行することは日常よく見かけられる光景であることなどから、被害者が横断歩道上を歩行していたのと同様に評価すべき旨主張する。確かに、道路交通法施行令2条では、信号機による人の形の記号を有する灯火がある場合には、それによって、横断歩道を進行する普通自転車を対象とする趣旨の規定がある。しかし、本件交差点では、前記認定のとおり、信号機による交通整理は行われていないのであって、事案を異にするものであるし、これをもって、自転車を歩行者と同視すべきことには、直ちにつながらないというべきである。

 

道路交通法38条1項は、「横断歩道又は自転車横断帯(以下・・・「横断歩道等」という)に接近する場合には当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下・・・「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」と規定しているが、これは、自転車については、同法63条の6において、自転車の自転車横断帯による横断義務を定めていることに照応するものであって、自転車が、自転車横断帯の設けられていない交差点の横断歩道上を走行して横断する場合には当てはまらないものというべきである。従って、自転車運転者としては、付近に自転車横断帯のない横断歩道上を横断する際には、自転車を降りて横断するのでない限り、横断歩道を通過しようとする車両に対して、歩行者と同様の絶対的な保護が法的に認められているとはいえない。また、自転車で横断歩道上を通行するという光景は日常よく見かけられるものであるとしても、それをもって、落ち度と評価することが妨げられるものとはいえない。

 

大阪地裁 平成25年6月27日

そのほか、大阪高裁 平成30年2月16日、神戸地裁 令和元年9月12日ともに被害自転車は高齢者ですが優先権は否定。

 

「歩道を通行可能な要件」はあくまでも自転車の立場として歩道を通行可能なだけ。
歩行者になるわけではない。

 

歩行者になるのは概ね6歳未満の自転車(小児用の車)と、押して歩く場合のみ。

自転車の類型に入るものであつても、「小児用の車」にあたれば、これに乗つて進行している者は歩行者とされ

 

福岡高裁 昭和49年5月29日

 

「小児用の車」は歩行者扱い。
先日書いた内容についていきなり「嘘つき」呼ばわりされるインターネットって凄いですよね。 近々改正予定ですが、改正後も結局は歩行者扱い。 現在の法規で示しますね。 (定義) 第二条 3 この法律の規定の適用については、次に掲げる者は、歩行者と...

 

そもそも

自転車に優先権がなくても、「歩行者が明らかにいない」と言い切れない場合には減速する義務があるわけで、

第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

優先権がない自転車が飛び出してきても、車道を通行する車両には予見可能な事故を防ぐ義務があります。
なので「歩行者が明らかにいない」と言い切れなくならかなり減速しないとそれだけで違反だし、子供や高齢者などは判断をミスって直前横断することも予見可能。

 

優先権がないものの、事故を最大限回避しようとすれば停止して先に横断させたほうがいい場合が多いかと。
なお、事故ると普通にクルマのドライバーは有罪(過失運転致死傷)です。↓

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。 ○横断歩道を横断しようとする自転...

 

そもそも6歳未満の「小児用の車」にしても見分けることは不可能。
なので子供の自転車については、小児用の車(歩行者)と見なして優先権があると解釈するしかない。

 

小児用の車になるかならないかは結果論に過ぎなくて、車両の運転者目線からは見分けは不可能な以上、小児用の車(歩行者)とみなすのが大人の義務な気がします。


コメント

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