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原因はクルマの不具合!?刑事事件で否定されたクルマの不具合は通るのか?

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この事件については、刑事事件では有罪判決で確定しています。

2018年2月に東京都港区の路上で車を暴走させて歩行者の男性(当時37歳)を死亡させ、自動車運転処罰法違反(過失致死)などで有罪判決が確定した元東京地検特捜部長の元被告(84)が、暴走は車の欠陥が原因だったとして、製造元のトヨタ自動車と販売会社に5000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 

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刑事事件では有罪ですが、あらためて民事訴訟ではクルマの不具合が原因だと主張するそうな。

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刑事事件の概要

刑事事件では一審が有罪、その後控訴審は棄却、上告審も棄却。

1 原判決の概要
(1)原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は次のとおりである。

被告人は、平成30年2月18日午前7時18分頃、普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)を運転し、東京都渋谷区ab丁目c番先道路をab丁目方面からd駅方面に向かい進行してきて同所先道路の左側端部(以下「本件停車位置」という。)にオートマチック車である本件車両を駐車して同車を離れようとするに当たり、エンジンを止めてパーキングブレーキをかけた上、ギアのセレクトレバーをパーキングに設定して、確実に自車の停止状態を保持すべきはもとより、誤って自車を発進させた場合にはアクセル・ブレーキを的確に操作して速やかに停止措置を講ずべき自動車運転上かつ業務上の注意義務があるのにこれを怠り、パーキングブレーキをかけたものの、エンジンを止めず、セレクトレバーをドライブに設定した状態のまま降車しようとした際、誤って左足でアクセルペダルを踏み込んで本件車両を発進させ、その後も誤って左足でアクセルペダルを踏み続けた過失により、本件車両を急発進させて同所から約320m前方の東京都港区内のAほか1名所有の店舗兼居宅(以下「本件建物」という。)先道路まで時速100kmを上回る高速度で暴走させ、同日午前7時19分頃、同所において、本件車両を進路右方である本件建物前の歩道へ突入させて、同歩道上に立っていたB(当時37歳)に本件車両前部を衝突させた上、本件建物に本件車両を突入させ、よって、同人に頸髄損傷等の傷害を負わせ、その頃、同所において、同人を同傷害により死亡させるとともに、本件建物の支柱及びシャッター等を損壊(損害額合計3982万9725円相当)した。

争点は多岐に渡りますが、アクセルペダル裏にある圧痕。

機能検査において、本件車両のアクセルペダル(合成樹脂製)の裏側には、アクセルペダルを最大に踏み込んだ時にアクセルアームのロッドと最も接近する位置に圧痕(以下「本件圧痕」という。)が認められたところ、交通事故の鑑識活動等に警察官として従事するD証人及びC社で技術系の業務を経た後事故対応等を担当するE証人は、本件圧痕は、アクセルペダルを最大に踏み込んだ状態で、更に車両の前方から衝突などの大きな力がかからない限り形成されず、本件事故により生じたものと考えられる旨をそれぞれ証言している。上記各証言は互いに整合する上、本件車両の構造
上、アクセルペダルを最大に踏み込んだとしてもアクセルアームのロッドとの間に約2mmの間隔が空くようになっている一方で、本件圧痕の一部は素材が削れて縁からはみ出すほど変形していること、事故後に警察官らが本件車両の同型車を用いて行ったアクセルペダル踏み込み実験では、男性警察官が最大111.2kg重でアクセルペダルを踏んだ際にも素材が削れるような圧痕は生じなかったことにも沿うものである。

イベントレコーダーの記録なども考慮し、東京高裁の認定はこちら。

原判決の上記判断に、論理則、経験則等に照らして不合理なところはなく、本件車両の発進・加速の原因は、被告人が誤って左足でアクセルペダルを踏んだことにあるとした原判決に事実誤認はない。
すなわち、本件車両のアクセルペダル裏面に残された本件圧痕は、アクセルペダルが踏み込まれた状態で本件車両の前方から大きな力が働いたことを示すものといえ、本件EDRデータには、本件車両の電柱への衝突時前後のアクセル開度が100%であったと記録されていることなども考慮すると、原判決が説示するとおり、電柱への衝突の前後において、本件車両のアクセルペダルは100%踏み込まれていたものと推認される。加えて、機能検査時の本件車両のパーキングブレーキに係るブレーキシューの焼け焦げ、摩耗やブレーキドラムの損傷状況等からすれば、本件時の本件車両は、パーキングブレーキがかかった状態でアクセルペダルを踏まれて相応の距離を走行したものと推認できる。さらに、本件車両の発進直前の時点において、車両前部が浮き上がるノーズアップ現象が確認され、かつ、0.21Gと相応に強い加速度がドライブレコーダーに記録されていることなどは、本件車両の発進の原因が、パーキングブレーキが作動した状態でアクセルペダルが踏み込まれたことにあると推認させる。以上によれば、本件車両のアクセルペダルは、約320mの間の本件走行中においても、発進時においても、継続して踏まれていたものと強く推認される。なお、原審弁護人は、本件車両の発進・走行の原因はその不具合にあるなどと主張するが、不具合の具体的な内容は示されていない上、ブレーキ制御系統とエンジン制御系統など、独立した複数の系統において不具合が併発しない限り本件車両の本件時の挙動を合理的に説明できないことなどからして、発進・走行の原因が本件車両の不具合であったとは考え難い。
そして、被告人の供述等を踏まえても、本件時に被告人が左足で本件車両のアクセルペダルを踏み込むことは可能であったと認められるから、本件車両の発進・加速の原因は、被告人が左足でアクセルペダルを誤って踏み込み、その後も踏み続けたことにあるとした原判決の判断に不合理な点はなく、事実の誤認はない。

 

東京高裁 令和4年12月14日

この判例は裁判所ホームページにも掲載されています。

民事訴訟でひっくり返せるか?

要は刑事事件でペダルを踏み込んだと認定されたものを、民事訴訟ではクルマの不具合だったと認定されるのか?という話になりますが、推定無罪の原則がある刑事事件で認定されたということは、合理的な疑問を残さない程度に立証されたということ。

 

その認定をひっくり返すことはかなり難しいのではないでしょうか。
そもそも、いかなる証拠をもってクルマの不具合を立証するのか疑問が残りますが、民事訴訟なのでクルマの不具合を主張するならその立証責任は原告にあります。
メーカー側からすればビックリするでしょうけど、EDRには「アクセル開度100%」と記録されているわけで…しかも刑事事件の内容をみてもEDRのみで判決したわけではない。
民事訴訟ではあらためて証拠を精査することになりますが…

本件車両のアクセルペダル裏面に残された本件圧痕は、アクセルペダルが踏み込まれた状態で本件車両の前方から大きな力が働いたことを示すものといえ、本件EDRデータには、本件車両の電柱への衝突時前後のアクセル開度が100%であったと記録されていることなども考慮すると、原判決が説示するとおり、電柱への衝突の前後において、本件車両のアクセルペダルは100%踏み込まれていたものと推認される。加えて、機能検査時の本件車両のパーキングブレーキに係るブレーキシューの焼け焦げ、摩耗やブレーキドラムの損傷状況等からすれば、本件時の本件車両は、パーキングブレーキがかかった状態でアクセルペダルを踏まれて相応の距離を走行したものと推認できる。さらに、本件車両の発進直前の時点において、車両前部が浮き上がるノーズアップ現象が確認され、かつ、0.21Gと相応に強い加速度がドライブレコーダーに記録されていることなどは、本件車両の発進の原因が、パーキングブレーキが作動した状態でアクセルペダルが踏み込まれたことにあると推認させる。


コメント

  1. 山中和彦 より:

    元であっても、地検特捜部長は、検事=司法試験合格者のはずですが、法律を知らないのか(ありえない)、自分が法律と思ってるのか(肩書からして、ありそうです)。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      地検特捜部長はだいぶ前の肩書で、有罪判決が確定するまでは弁護士さんです。

      • 山中和彦 より:

        弁護士なら、なおさら、勝てる勝てないが分かりそうなものなのに、何に固執してるのでしょう。メンツだけなのかも知れませんね。

        • roadbikenavi roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          何かしらの勝算があるのかもしれませんが、全くわかりませんよね。

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