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左折レーン(進行方向別通行区分)から左折するクルマは、左側端に寄せる義務があるか?

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道路交通法上、左折レーン(進行方向別通行区分)から左折する車両は「あらかじめできる限り左側端に寄って」が免除され、左折レーンの中から左折すれば違反にならないことになりますが(35条1項、34条1項)、以前も書いたように民事判例はそうなっていない。

 

進行方向別通行区分から左折するクルマと、車両通行帯最外側線の外側から追い抜きする二輪車が衝突した場合。
ちょっと前の話の続き。 道路交通法上、進行方向別通行区分がある場合には34条1項でいう「あらかじめできる限り左側端に寄って」を排除しているため(35条1項)、車両通行帯の中から左折する義務があります。 しかし、実態としてはこういう事態が起き...

 

ちょっと気になる判例をチョイスしました。

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左折レーンから左折する車両と「できる限り左側端に寄って」

大阪地裁 令和2年8月27日判決

まずは以前挙げた判例のおさらいから。
事故態様はこう。

・片側三車線の交差点、交差点手前30mは進路変更禁止(イエロー)、進行方向別通行区分あり。
・車両通行帯最外側線の外側は歩道(厳密には防音壁の外側に歩道あり)まで約1.2mの間隔がある。
・先行車は交差点手前10~15m手前で減速し、第一通行帯から左折(合図なし)。
左折車は車両通行帯最外側線に寄せていた
・後続二輪車は車両通行帯の外側から追い抜きし衝突。

要はこのようなイメージ(ただし第一通行帯は左折直進可能)。

いわゆる左折巻き込みになりますが、道路交通法上は後続二輪車が通行帯違反(車両通行帯最外側線を超えている)。
加害車両の言い分はこれ。

道路交通法35条1項は進行方向別通行区分(車両通行帯)に従うことを求めているのだから、後続二輪車が車両通行帯最外側線の外側から追い抜きすることを予見する義務もないし、左側端に寄せる義務もない。

確かに道路交通法上は正論です。
しかし裁判所の判断は、車両通行帯であることを認めつつも、「社会的な実態」から34条1項に従うべき注意義務違反を認定。
つまり、車両通行帯最外側線を超えてあらかじめ左側端に寄せるべきとしている。

加害車両の過失割合は75%としています。

 

で。
この判例が特殊なのか?というと、そうでもありません。

東京地裁 令和4年7月6日判決

たぶん事故現場はこちらなんですが、自転車通行帯、左折レーン、左折直進レーン、直進レーンと4車線あり、自転車通行帯のところ以外は進路変更禁止があります。
いわゆるダブル左折レーンです。

 

https://maps.app.goo.gl/7buqNxarFE77s1HV6

 

事故の態様。

赤信号停止から青に変わり発進した際に、左折内側レーン(第2通行帯)から左折した原告車両と、左折外側レーン(第3通行帯)から左折した被告大型車の接触。
被告大型車がイン側に入ったことが原因。

ダブル左折外側レーンから左折するにあたりインに切り込みすぎて接触したわけですが、ダブル左折内側レーンから左折した車両からすれば何ら道路交通法上問題がない。
左折レーン(進行方向別通行区分)に従っている以上、自転車通行帯に進入して「できる限り左側端に寄せる義務」はない(35条1項、34条1項)。

 

じゃあダブル左折内側レーンから左折した車両が無過失なのか?というと、裁判所の認定は34条1項と「自転車通行帯を通行してくる自転車がいなかった事実」から、自転車通行帯に進入して「できる限り左側端に寄って左折する義務」を怠ったとしています。

 

その結果、過失割合はこう。

原告(ダブル左折内側レーン) 被告(ダブル左折外側レーン)
10 90

道路交通法に詳しい人からすれば「おかしくね?」となるでしょうけど、自転車通行帯に進入して「できる限り左側端に寄っていれば」事故回避が可能だったとしています。
被告車が大型車で、自転車通行帯に自転車がいなかったことなどを理由にしてますが、無過失の主張は認めていない。

 

ちなみに他にもダブル左折レーンで同様の事故態様の判例がありましたが、やはり内側レーンから左折した車両には「できる限り左側端に寄って」(34条1項)を怠った過失としています。

これらが示すもの

道路交通法上は「明らかに」、左折レーンから左折する場合には「できる限り左側端に寄って」を排除して左折レーンの中から左折すればいいと読めますが、なぜか民事判例はこうなる。

大阪地裁判決は「車両通行帯最外側線を超えろ」だし、東京地裁判決は「左折レーンを超えて自転車通行帯に入れ」になるので、道路交通法を厳密に解釈すれば違反です。

 

これをどう考えるかについてですが、結局のところ法律と構造が合致しないからこうなるだけの話。
道路交通法だけでは解決できない「注意義務違反」があるわけですが、注意義務が優先するから違法性を阻却すると考えるしかないのです。

 

ちなみにこちら。

 

https://maps.app.goo.gl/MPNHaR4KEKk4LWeBA

 

自転車通行帯の幅は1.3mだそうですが、ダブル左折レーンの内側にある自転車通行帯なんて通行したくないですね。
自転車乗りの立場からすると。

 

アリさんの右側からゾウさんが2匹襲い掛かる構造なんて、間違っているような気がしますが…
ゾウさん一匹でもこうなりかねない中、

自転車通行帯とナビラインで自転車が直進することをアピールしている分だけマシなのかもしれませんが、ダブル左折レーンのさらに内側に自転車通行帯があるのは危険過ぎやしないですかね。

 

ここを自転車で通行することがある人に、是非実態を聞いてみたい。
赤信号停止から発進するときは、停止線が前に出ているし、わずかにアーリー気味に発進するなど対策はあるだろうけど。


コメント

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