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一定時間停止後に左折する場合と、直進二輪車の関係性。

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ちょっと前の話の続きです。

 

なぜ左折前に「できる限り左側端」に寄せるのか?
だいぶマニアックな質問を頂いたのですが。 左折時に左側端に寄せる目的として一般的に、 1.後続車(直進・右折)の円滑を促す 2.左折であることが(合図以外にも挙動で)わかりやすいように 3.巻き込み防止 の3本立てが多いですが、道が狭い場合...

 

前回の内容は左折時に信号などによる停止がなかった事例ばかりですが、赤信号で一定時間停止してから左折する場合、合図車妨害の適用が変わります。

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赤信号で一定時間停止してから左折

大型車など左折前に左側端に寄れない車両の場合、赤信号で停止中に左側端に二輪車が進入します。
停止状態から左折する場合は(交差点、道路外ともに)、改めて左折開始する際の後続車との関係性で合図車妨害なのか進路変更禁止なのかを判断することになるため、合図を出した地点での関係性ではありません。

東京高裁 昭和50年10月8日

まずは道路外に左折する場合の判例から。

対向右折車を先に行かせるために停止していましたが、左折開始した時点での位置関係は下記の通り。

本件のように、被告人車の左側に後方から来る二輪車が進路を変更することなく進入可能な間隔を残しており、しかも対向車の右折を待つため約10秒間停止したのちに左折を開始しようとする場合には、あらかじめ左折の合図をし、これを続けていても、右合図の趣旨や一時停止の理由が後進車両に徹底しないおそれがあるから、被告人車と後進車との優先関係を判断するにあたつては、当初の左折合図の時を基準として判断すべきではなく、被告人車が一時停止後左折を開始しようとする時点において、一時停止中に生じた後進車の進行状況をも含め、あらためて道路交通法25条3項と同法25条の2第1項とのいずれが優先的に適用されるべき場合であるかを決するのが相当である。この見地からみると、前記事実によれば、被告人車が左折を開始しようとした時点では、すでにA車はその左後方約30メートルないしそれ以下(被告人車の前部から)の近距離にあつたものと推認されるから、被告人車が左折を開始すればA車は衝突を避けるためその進路又は速度を急に変更しなければならなくなる(それでも衝突はほとんど不可避である)ことが明らかであり、したがつて本件は、同法25条の2第1項が優先的に適用されるべき場合であると認められる。即ち、被告人車がこの時点で左折を開始することは「他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがある」ことになるから、被告人車はA車の通過を待つたうえでなければ発進が許されなかつたといわなければならない。

 

東京高裁 昭和50年10月8日

一定時間停止してから左折する場合には、合図を出した時点での後続車との関係性ではなく、左折を開始する時点で決めるとしています。

東京高裁 昭和46年2月8日

この判例は交差点で左折前に30秒ほど信号待ちをしていた大型車と、信号待ちしている間に自転車が左側に進入していた事故。
左側端まで寄せきれてない大型車は、ミラーで一瞥しただけでは足りず、自転車を先に行かせるべきとした判例です。

 

道路交通法34条によつて運転者に要求されているあらかじめ左折の前からできるかぎり道路の左側に寄らなければならないということにも運転技術上の限界があるため、被告人は自車の左側が道路の左側端から約1mの地点まで車を寄せるにとどめて進行し、赤信号によつて交差点の手前で約30秒の間一時停止したものであること、この運転方法は技術的にやむをえないところであるけれども、車幅は2.46mであるから、これによつて車両はかろうじて道路の中央線内に保持できるわけであるとともに、自車の左側1mの間に軽車両や原動機付自転車が進入してくる余地を残していたものであること、右位置において左折に入る場合においても一旦ハンドルをやや右にきりついでハンドルを左にきりかえして道路一杯になつて大曲りしなければ左折できない状況であつたことを認めることができる。そして、本件の足踏自転車が何時交差点の手前に進入してきたか、被告人車両との先後関係は記録上必ずしも明確でないところであるけれども、被告人が交差点の手前で一時停止するまでには先行車両を認めていないことに徴すると足踏自転車は被告人の車両が一時停止してから発進するまで約30秒の間に後ろから進入してきたものと推認されるところ、被告人は平素の運転経験から自車前部の左側部分に相当大きな死角(その状況は当裁判所の事実の取調としての検証調書のとおりである。)が存することは熟知していたのであり、しかもその停止時間が約30秒に及んでいるのであるから、その間に後ろから軽車両等が被告人車両の左側に進入しその死角にかくれることは十分予想されるところで、運転助手を同乗させていない本件のような場合は、右一時停止中は絶えず左側のバツクミラーを注視するなどして後ろから進入してくる軽車両等が死角にかくれる以前においてこれを捕捉し、これとの接触・衝突を回避するため適宜の措置をとりつつ発進、左折する業務上の注意義務があるのであつて、単に方向指示器をもつて自車の進路を示し、発進直前においてバツクミラーを一瞥するだけでは足らないものと解すべきである。
なぜならば、左折の方向指示をしたからといつて、後ろから進入してくる直進車両や左折車両が交差点に進入するのを防ぐことができないばかりでなく、後進してきた軽車両等か被告人車両の左側から進めの信号に従つて直進しもしくは左折することは交通法規上なんらさまたげないところであり、この場合はむしろ被告人車両のほうでまず左側の車両に道を譲るべきものと解されるからである。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

当然、合図車妨害から信頼の原則を適用した最高裁判例との整合性が問題になりますが、30秒停止していたことなどを理由に最高裁判例とは事案が異なるとしている。

この点に関しては、昭和43年(あ)第483号同45年3月31日最高裁判所第三小法廷判決が、本件ときわめて類似した事案において、「本件のように技術的に道路左端に寄つて進行することが困難なため、他の車両が自己の車両と道路左端との中間に入りこむおそれがある場合にも、道路交通法規所定の左折の合図をし、かつ、できる限り道路の左側に寄つて徐行をし、更に後写鏡を見て後続車両の有無を確認したうえ左折を開始すれば足り、それ以上に、たとえば、車両の右側にある運転席を離れて車体の左側に寄り、その側窓から首を出す等して左後方のいわゆる死角にある他車両の有無を確認するまでの義務があるとは解せられない」として一、二審の有罪判決を破棄し、無罪を言い渡しているところである。そこで右判例の事案における事実関係と本件の事実関係と対比検討してみると、前者は車幅1.65mの普通貨物自動車であるのに対し、後者は2.46mの車幅を有する前記のような長大かつ車高の高い大型貨物自動車であるから、したがつて死角の大きさにも著しい相違があると推測されること、前者は信号まちのため瞬時停止したに過ぎないのに対し、後者は信号まちのため約30秒間停止したものであるから、その間に後進の軽車両等が進入してくる可能性はより大きいといえること、したがつてバツクミラーによつて後ろから進入してくる軽車両等を死角に達するまでに発見して適切な措置をとる必要性がより大きいことにおいて事実関係に差異があると認められる。そして、以上の諸点と、本件のような長大な車両と軽車両とが同じ路面を通行する場合において、両者が接触すれば被害を被むるのは必らず軽車両側であることに思いをいたせば、本件の場合長大かつ死角の大きい車両の運転者に死角に入る以前において他の車両を発見する業務上の注意義務を課することは、公平の観念に照らしても均衡を失するものとはいえず、所論いわゆる信頼の原則に副わないものではなく、また前記第三小法廷の判例に反するものでもないと判断される。したがつて、原判決が安全確認の義務を怠つたとする判断は結局正当であるから、この点の論旨は理由がない。

 

昭和46年2月8日 東京高裁

東京高裁 昭和50年4月2日

これも赤信号で30秒程度停止してから交差点で左折した判例です。

被告人は、本件において、大型貨物自動車を運転して原判示の交差点に南方から差しかかり、右交差点を左折するべくその約50m手前から左折の合図をして進行したが、右交差点の信号機が黄色の表示となつたので、右交差点南側横断歩道の手前の自車左側と道路左側端との間隔が1.5mとなる地点で、右信号機が青色を表示するまでの少なくとも30秒以上の間一時停車をしたこと、被告人の自動車の運転席からは同車の左前部が死角となつていて、同車の左側バツクミラーによつては同車のすぐ左側に同車と並んでいる自転車等の姿を見ることはできないことが認められる。

 

ところで、車両が左折するに際してはできる限りあらかじめ道路の左側に寄らなければならないのであつて、司法警察員作成の昭和48年12月3日付実況見分調書および原裁判所の検証調書によれば、被告人の自動車は内輪差の大きい大型車であるとはいえ、本件交差点で左折をするに際しては、本件において被告人が行なつたよりさらに道路の左側に寄ることができたものとうかがわれるが、この点は不問にするとしても、右のように、被告人の自動車は、運転席からはその左前部が死角となつており、また、本件においては道路の左側端から1.5mの間隔、すなわち、その間に自転車等が十分に進入しうる間隔を置いた地点で、信号機の信号に従い30秒以上の間停車していたものであるから、その間に後ろから自転車等が被告人の自動車の左側に進入して右死角に入ることは十分に予想されるところであり、したがつて、被告人としては、発進に際して自車左側のバツクミラーを見ることはもちろん、右停車中も絶えず右バツクミラーを見るなどして、自車の左側に進入してくる自転車等を捕捉して、これらとの衝突を未然に回避すべき注意義務があるものと解すべきである(当裁判所昭和46年2月8日判決、高裁刑集第24巻第1号84頁参照)。しかるに、本件において、被告人は、さきに判示したように、右注意義務を全く怠つたものではないとしても、これを十分に尽くさなかつた結果、自転車に乗つた被害者が被告人の自動車の後ろからその左側に進入して同車と並んで停車し、信号機が青色の表示に変つてから同車と同時に発進したのを見落とし、同人を自車に衝突させたものであつて、被告人の本件所為が業務上過失致死罪に該当することは明らかであり、なお、所論の引用する最高裁判所の判決は、加害者が左折に際し停車をしておらず、また、被害者が交通法規に違反した事案に関するものであつて、本件とは事案が異なるから、これをそのまま本件に適用することはできない。

 

東京高裁 昭和50年4月2日

上で挙げた東京高裁 昭和46年2月8日判決を引用していて、さらに最高裁判例とは事案が異なるとしていますが、東京高裁 昭和46年2月8日、東京高裁 昭和50年4月2日ともに「一定時間停止していた後に左折開始した事例」。
一定時間停止してから左折する場合には、仮に「できる限り左側端に寄って」を満たしていても、左側端に二輪車が進入する余地があればあくまでも左折開始する際の関係性で考えることになります。

 

昭和46年2月8日判決は「できる限り左側端に寄って」(34条1項)を満たしていても、大型車特有の事情から左側端に二輪車が進入する余地があれば話が変わる。

結局のところ

判例によって34条1項の問題にしていたり、26条の2第2項の問題にしていたりするのは、道路の構造、被告人車の大きさなど様々な状況で話が変わるからで、結局はその事例ごとに考えるしかありません。

 

なぜ左折前に「できる限り左側端」に寄せるのか?
だいぶマニアックな質問を頂いたのですが。 左折時に左側端に寄せる目的として一般的に、 1.後続車(直進・右折)の円滑を促す 2.左折であることが(合図以外にも挙動で)わかりやすいように 3.巻き込み防止 の3本立てが多いですが、道が狭い場合...

 

なので前回頂いた質問についても、事例ごとに問題にするポイントが違うだけと捉えたほうがいいかと。

 

なお、東京高裁判決の一部を切り抜きしておかしな解釈を始める人とかいますが、

左折の方向指示をしたからといつて、後ろから進入してくる直進車両や左折車両が交差点に進入するのを防ぐことができないばかりでなく、後進してきた軽車両等か被告人車両の左側から進めの信号に従つて直進しもしくは左折することは交通法規上なんらさまたげないところであり、この場合はむしろ被告人車両のほうでまず左側の車両に道を譲るべきものと解されるからである。

全文見ればわかるように、あくまでも一定時間停止していたことを前提にした説示なので、事例が違うなら当てはまりません。
最高裁判決と整合性を確認している点や、同判例を引用した東京高裁 昭和50年4月2日からも明らかかと。

 

自転車乗りの立場からすると、わざわざ左折合図している車両の前に出ようと死角に入り込むのは愚策としか言えないし、クルマを運転する立場からすれば、二輪車なんてガンガン前に出ようとすり抜けしてくることを頭に入れておくしかないのでしょうね。

 

他の判例も含めて整合性を見ないと、一見すると相反する判決があるように感じてしまいますが、要は事案が異なるから判断が違うだけだし、事案が異なるから判断するポイントが違うだけです。

 

若干気になるのは合図車妨害の概念を結果論で捉えて違う意味にしちゃっている人がチラホラいる点。
結果論の話ではないのは様々な判例から明らかなんですが…


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