自転車横断帯について質問を頂きました。
横浜みなとみらい界隈は、自転車横断帯が撤去されている部分もありますが、みなとみらい大通りに沿って自転車横断帯が一部残っています。
朝や夕方の通勤通学時間は、横浜駅までの徒歩の人が多く、歩道は青信号の間は最初から最後まで人で溢れています。自転車横断帯も通常人混みで覆われているので、とても自転車が通行できる状況ではありません。この道路を走る自転車も多いですが、この時間は100%の自転車が自転車横断帯を無視して横断しています。そこで、素朴な疑問が幾つか湧いてきます。自転車横断帯を使わない横断は、この状況でも違反になるのか?
自転車横断帯を使わない横断で事故があった場合は、やはり減点対象になるのか?
事故時の保険の請求時に、違反のために不利になり得るのか?
自転車横断帯の歩行者の邪魔となっても、自転車横断帯を走行して良いのか?
その際に、接触の危険のある歩行者に警音器の使用は可能か?私は現実的に最適解と思われるので、自転車横断帯を使わずに車道を直進していますが、いつも疑問に思いながら走行しています。
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あくまでも車道通行していて自転車横断帯がある交差点に差し掛かったものと考えます。
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自転車横断帯を使わない横断は、この状況でも違反になるのか?
「自転車横断帯を使わない横断は、この状況でも違反になるのか?」という話の前提がこのような状況なんだと思いますが、
朝や夕方の通勤通学時間は、横浜駅までの徒歩の人が多く、歩道は青信号の間は最初から最後まで人で溢れています。自転車横断帯も通常人混みで覆われているので、とても自転車が通行できる状況ではありません。
歩行者が自転車横断帯上にわんさかいたら通行できないので、その場合は仕方ないともいえますが、自転車横断帯からわずかに外れた程度(1~2m)であれば自転車横断帯を通行したものと同じに扱われることが一般的です。
まあ、そもそも歩道上で歩行者と自転車が交錯して入り乱れているのに、なぜ横断するときだけ整然と歩行者は横断歩道、自転車は自転車横断帯と分かれて通行することが期待できると思うのか不思議に思ってますが…
自転車横断帯を使わない横断で事故があった場合は、やはり減点対象になるのか?
自転車には点数制度がないのであくまでも「違反になるか」の観点で書きます(余談ですがクルマの点数制度は「減点」ではなく「加点」です)。
そもそも、自転車横断帯の通行義務(63条の6、7)には罰則規定がありません。
警察官が「自転車横断帯を通行せよ」と指示したのに従わない場合のみ罰則です。
第六十三条の八 警察官等は、第六十三条の六若しくは前条第一項の規定に違反して通行している自転車の運転者に対し、これらの規定に定める通行方法により当該自転車を通行させ、又は同条第二項の規定に違反して通行している普通自転車の運転者に対し、当該普通自転車を歩道により通行させるべきことを指示することができる。
(罰則 第百二十一条第一項第七号)
現実的に警察官が指示することがないので、当然検挙対象にはなりません。
一応これ、罰則を設けていない理由は歩行者の横断歩道利用義務と同じです。
自転車横断帯が出来たのは昭和53年。
このような科罰の方法をとったのは、これらの義務を課すこととした目的が、これらによって他の車両の通行の円滑化を図るとともに、自転車利用者自身の安全を図ることにあることから、その履行について罰則を設けて担保するよりも、第一次的には自転車利用者自身の自覚と遵法精神にまつことが適当と考えられたからである。
「自転車の通行の安全確保のための方策」(警察学論集)、1978年11月、警察庁交通企画課課長補佐、田中節夫
事故時の保険の請求時に、違反のために不利になり得るのか?
例えばですが右直事故。
自転車横断帯を通行せずに事故になった場合、基本過失割合はこう。
自転車 | 右折車 |
10 | 90 |
自転車横断帯を通行した場合はこう。
自転車 | 右折車 |
5 | 95 |
認定した事実によれば、原告X1も、自転車横断帯を横断する際には、安全運転義務(道路交通法70条)を負っており、南から北に向けて対向進行してきて東に向けて右折する車両の有無等を確認する義務を負っていたが、これを怠ったといえる。そして、原告X1の対面歩行者・自転車専用信号も、被告の対面信号も、いずれも青色であり、原告X1は、自転車横断帯を走行していたことに照らすと、原告X1についても5%の割合で過失相殺するのが相当である。
大阪地裁 平成27年9月4日
個人的に思うのは、このように左折風に自転車がプレイすることにより、
対向右折車は「自転車が左折する」と思い込んで右折を開始するリスクがあるので、自転車横断帯を通行せずに直進したほうが安全かと考えます。
なお、近年自転車横断帯が滅亡気味な理由も同じです。
自転車横断帯の撤去
自転車は、車道又は歩道のいずれを通行していても、自転車横断帯がある場所を横断しようとするときは、その自転車横断帯によって道路を横断しなければならず、場合によっては自転車に不自然かつ不合理で、危険な横断を強いることとなり得る。このため、自転車道や普通自転車の歩道通行部分の指定があり、歩道部分に連続した自転車通行空間が整備されている区間のほか、自転車が通行できない構造の横断歩道橋等の付近で自転車の交通量が多い交差点等において、自転車が安全かつ円滑に自転車横断帯を進行することが想定される場合を除き、原則として自転車横断帯を撤去すること。また、自転車横断帯の撤去に当たっては、歩行者用灯器に設置されている「歩行者・自転車専用」の補助板の撤去についても、併せて検討すること。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/kyokucyou1.pdf
自転車横断帯の歩行者の邪魔となっても、自転車横断帯を走行して良いのか?
自転車横断帯上に歩行者がいる場合という意味かと思いますが、あくまでもこれがあるので、
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
歩行者との間に安全側方間隔を保持しないといけない。
なので意味不明なことに、自転車横断帯上に歩行者がいるなら自転車が避けるしかないのです。
「その際に、接触の危険のある歩行者に警音器の使用は可能か?」については、違反の成立についてはビミョーですがトラブルになりかねないのでオススメしません。
自転車ベルやクラクションは、他人を発狂させるリスクがあるのでやめたほうがよい。
それらを踏まえて
現場の警察官も、車道通行する自転車に対して「自転車横断帯を通行せよ」とは考えてない上に、危ないから直進したほうがよいと答える人ばかりです。
そもそも、このような「左折風プレイ」をした場合、
・対向右折車が「自転車が左折した」と勘違いして発進する
・歩道→自転車横断帯に進行する自転車との関係性が不明で、交錯するリスクが高まる
メリットが思い当たらないので、個人的には車道通行自転車が自転車横断帯上を通行することは推奨していません。
残念ながら自転車のルールは不合理なものがいくつかあり、遵守することが不合理なルールはいくつかあります。
それこそ、合図履行義務にしても、53条を遵守することは人類には不可能です。
交差点手前30mから左折完了まで、こうしないと違反になりますが、
両手離しながら徐行し、信号と横断歩行者をケアするなんて人類には不可能。
左折レーンから直進するルールにしても、
こっわ!ドライバー冷や汗なんてもんじゃ無かったろうなこれ
後に重機積んでたらもっとやばかったとおもう。
ロード乗りの方、そこ直進されたらトラックはきついよ
トラック側は直進左折可能帯です pic.twitter.com/1O7lVU631j— ぐ り@ZND Beans (@hiroguriko) June 8, 2020
ルールに従うと死にかける。
不合理なルールは整理すべきと思いますが。
理屈の上では自転車横断帯上を通行した場合のほうが過失割合は低くなりますが、代わりに事故リスクを高めることになるので、全くオススメはしてません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
>危ないから直進したほうがよいと答える人ばかりです。
なのに、歩行者・自転車専用に従わないと信号無視だと注意されるのは理不尽だと思いますね。言ってることとやってることが違う。
コメントありがとうございます。
両者が必ずしもセットになってない上、補助標識と道路標示では視認性が違うからだと思いますよ。
ただしどのみち、歩行者自転車専用の補助標識についても取締りしているようには見えませんが。