詳細がわからない件についてあれこれ推測するのもアレなんですが、ちょっと不思議に感じたこと。
去年6月、北海道南部の八雲町で、都市間高速バスとトラックが衝突し、5人が死亡した事故で、バスの乗客の遺族がトラック運転手の勤務していた会社に対し、損害賠償を求める訴えを起こしたことがわかりました。
原告側の弁護士などによりますと、函館地裁に提訴したのは死亡した乗客・Wさん(当時33)の妻と親族で、トラック運転手が勤務していた養豚会社「日本クリーンファーム」に対し、それぞれおよそ5800万円の損害賠償を求めています。
原告は、トラック側に事故の責任があると主張し、従業員が業務で損害を発生させた場合、雇用主も賠償責任を負う、民法の使用者責任に基づいて、養豚会社に賠償を求めています。
北海道八雲町で5人死亡の都市間バスとトラックの衝突事故 乗客の遺族が、トラック運転手が勤務していた養豚会社を提訴 函館地裁(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース去年6月、北海道南部の八雲町で、都市間高速バスとトラックが衝突し、5人が死亡した事故で、バスの乗客の遺族がトラック運転手の勤務していた会社に対し、損害賠償を求める訴えを起こしたことがわかりました。
この件、自賠法3条でいう運行供用者責任、民法715条でいう使用者責任から従業員を雇用していた会社に対して損害賠償請求するのは当然なんですが、
お亡くなりになったのは5名いる中で、1名の遺族(関係者)のみが提訴してますよね。
被害者遺族が共同で動かなきゃならない理由もないし、1名の遺族(関係者)のみが提訴することは珍しい話でもない。
けどこの件、いくつか気になる点がありまして。
①警察はまだ捜査中
この事故を巡っては、警察が死亡したトラックの運転手(当時65)を過失運転致死傷の疑いで捜査しています。
北海道八雲町で5人死亡の都市間バスとトラックの衝突事故 乗客の遺族が、トラック運転手が勤務していた養豚会社を提訴 函館地裁(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース去年6月、北海道南部の八雲町で、都市間高速バスとトラックが衝突し、5人が死亡した事故で、バスの乗客の遺族がトラック運転手の勤務していた会社に対し、損害賠償を求める訴えを起こしたことがわかりました。
②会社の説明が不誠実
当初、会社側は「運転者(加害者)には過重労働や長時間労働はなく、健康診断でも異常なし」と回答していたのに、
トラック運転手の梶谷さんの勤務先は、当初、
『梶谷さんは直近3カ月間、過重労働や長時間労働はなく、健康診断でも異常はみられなかった』としていました。 pic.twitter.com/1hCJ4Ss3nA— 羽鳥慎一モーニングショー (@morningshow_tv) June 29, 2023
事故を起こした当日、運転者(加害者)が体調不良を訴えていたとも報道されている。
つまり、当初会社が説明した内容とは食い違いがあることになる。
梶谷さんの勤務先の日本クリーンファームの、吉原社長は、
「運転手の当日の体調を会社としても確認しているが、記録などは警察に提供し、捜査が行われているので、具体的な内容は説明できない」としています。 pic.twitter.com/AwmBMriOPk— 羽鳥慎一モーニングショー (@morningshow_tv) June 29, 2023
北海道八雲町の国道でトラックが都市間高速バスに衝突し5人が死亡した事故で、死亡したトラックの男性運転手(65)が事故前、勤務先の会社関係者に体調不良を訴えていたことが28日、道警への取材で分かった。道警は運行管理に問題がなかったかどうか詳しい勤務状況などを調べている。
トラックを所有する養豚会社「日本クリーンファーム」(青森県おいらせ町)は事故翌日の報道陣への対応で、運転手の健康状態について「会社として異常はない」との認識を示し、直近3カ月を調べたが長時間や過重労働には当たらないとも説明していた。
トラック運転手、体調不良か 5人死亡事故前、会社に申告 - 記事詳細|Infoseekニュース北海道八雲町の国道でトラックが都市間高速バスに衝突し5人が死亡した事故で、死亡したトラックの男性運転手(65)が事
そして、警察が捜査中であることを理由に、少なくともメディアに対しては詳細な説明を拒んだ。
その後、被害者遺族に対してどのように対応していたのかはわかりませんが、これらの経緯から推測すると、提訴した理由は「真相究明」と「会社が負っていた管理責任の追及」なんじゃないのか?と感じまして。
運行供用者責任にしても使用者責任にしても「明らか」なので会社が適正額の支払いを拒んだとしても全く意味がない(裁判したら支払い命令が出るのは当然)。
そのような中、あえて提訴した理由…裁判の場で真相究明したいなどの意向があるのかなと予想。
以前、池袋暴走事故の件でも取り上げましたが、
池袋暴走事故って赤信号無視して高速度で事故を起こしたのだから、過失割合は加害者が100%。
誰がどんな理屈を主張しようと、100%からまず動かないでしょう。
じゃあなぜ示談ではなく民事訴訟を提起したかというと、被害者遺族が説明しているように刑事訴訟で不誠実に見える主張を繰り返す加害者に対し、民事の側面から真相究明しようとしていたわけですよ。
賠償責任を大筋で認めているというが、慰謝料の金額については争う姿勢。また、刑事裁判で検察官が主張するブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違えについては、認否を留保しているという。
この日の法廷で、原告のひとり松永拓也さんが意見陳述。「私は加害者本人に直接聞きたいことがたくさんあります。そして私の前で、自身の口から真実を述べてもらい、真実を明らかにしてほしいと思っています」と述べた。
池袋暴走事故、遺族が賠償を求める民事訴訟。「私の前で真実を述べてほしい」と意見陳述遺族の代理人弁護士によると、元院長側は賠償責任を大筋で認めているというが、慰謝料の金額については争う姿勢。
民事訴訟の第1回口頭弁論が2月9日、東京地裁(鈴木秀雄裁判長)で開かれ、遺族側は民事に踏み切った理由を「真実を聞きたい」と説明。形式的に謝罪をしてはいるものの事故の原因を車のせいにする飯塚被告の態度を、不誠実に感じていることが窺われる。
【暴走事故はなぜ繰り返されるのか?】「人殺し」“池袋暴走”法廷で投げかけられた“上級国民”への怒り《民事訴訟で1億7千万円を請求》 | 文春オンライン6月28日午後、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人がはねられた。2人が死亡し、1人が意識不明の重体、2人が重傷。過失運転傷害の疑いで逮捕されたのはトラック運転手・梅澤洋…
裁判の場で争う構図に持ち込むことで、「争点」になり真相究明に繋がる。
詳しい事情はわかりませんし、憶測で書くのも気が引けるのですが、冒頭の件については被害者遺族からすると「不誠実な会社の説明」と感じて真相究明の意味合いがあるのかなと考えてしまう。
少なくとも報道された内容からすると、会社の説明と実態に整合性がない上、いまだ捜査中ということで進展もない。
さらにいえば、運転者は死亡しているわけで捜査が終了して書類送検されても自動的に不起訴(被疑者死亡)になるだけ。
冒頭の事故については加害者のセンターラインオーバーなので、通常であれば加害者過失100%から動きようがない事件ですが、裁判にすることでハッキリする面もあるわけで、責任追及の目的もあるのではないかと思う。
ちょっと事案は違いますが、この件。
原告はお金を払って欲しくて提訴しているわけではなくて、真相を知りたいがために提訴していることはわかると思う。
国賠法の壁があることもわかって提訴していると思われますが、裁判って表面上は「損害賠償請求」であっても、狙いは真相究明になっていることはあり得るのですよ。
この事件については国が「認諾」という方法で裁判を強制終了させましたが、お金が目的ではなく真相を知りたい原告からすれば意味がない。
国への提訴は「認諾」で強制終了させられたので、佐川氏本人に提訴しているわけですが、目的はもちろん真相究明でしょ。
名目上は損害賠償請求訴訟にせざるを得ないけど。
控訴人は、被控訴人が控訴人に対して本件決裁文書の改ざん指示の経緯に関する説明及び謝罪をすべき信義則上の義務を負っている旨主張する。
しかしながら、一般に、公務員が違法行為をした場合、当該公務員が個人として違法行為の被害者に対して説明及び謝罪をすべき法的義務を負っているとは
解されない。また、本件についても、本件決裁文書の改ざんの経緯やこれに関与したことによってAが受けた苦しみ等(認定事実(3)、(4))に照らすと、控訴人による説明等の要求(認定事実(7))に対しては、被控訴人において、道義的責任に基づき、あるいは一人の人間として、控訴人に対して誠意を尽くした説明及び謝罪をすることがあってしかるべきとも考えられるが、上記説明及び謝罪をすべき法的義務を課すことまでは困難といわざるを得ない。
大阪高裁 令和5年12月19日
冒頭の件について提訴した理由についてはわかりませんが、一連の報道からすると目的の一つとして真相究明があるのではないか?と思ってしまいました。
裁判をする理由っていろいろあるでしょうけど、被害者5名のうち1名の遺族(関係者)が提訴したという点にしても、他の被害者遺族とは示談が成立しているのかもしれないし、示談が成立しておらず今後同様に提訴するのかもしれないし、詳しい事情まではわかりません。
運行供用者責任、使用者責任が問われないなんて結果にもならないし、提訴した場合には弁護士費用も掛かるわけですが、あえて提訴したのには真相究明が目的に含まれていそうな気がしました。
被害者からすれば、損害賠償を支払ってもらうだけでなくきちんと説明して欲しいと考えるのは当然ですが、一連の報道をみる限りでは少なくともメディアに対して発表した内容は辻褄が合わない。
裁判で争う構図にすれば、会社も主張する中で真相を明らかにしないといけないわけで。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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