いきなりですが、質問です。
交差点を右折直後に道路外に左折する場合、①と②どちらがいいのでしょうか?
①
②
交差点を右折直後に道路外に左折
要はこれ。
どちらも悪く見えますね。 pic.twitter.com/dkYfB3DgYo
— 秋山優花里⭐非公式 (@YukariAkiyama49) February 21, 2024
第三十四条
2 自動車、一般原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。
第二十五条 車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。
①だと、そもそも交差点右折時に「交差点の中心の直近の内側」を通ることにならない気もする。
もしくは「交差点の中心の直近の内側」を通ってから急角度で左側端に向かうことになり不自然。
②だと「あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り」からするとやや疑問が残る。
結論はアレですよね。
というのが本音ですが、交差点右折直後に道路外に左折することが禁止されているとは解せない。
結局、交差点右折時に「交差点の中心の直近の内側」を通行することに除外がないのでそこは変えようがなく、一方では道路外左折時には「できる限り」左側端に寄る。
「できる限り」とは「可能な範囲で」という意味なので、
これが道路外左折方法違反とまでは言えないかと。
じゃあどのような注意義務があるかというと、結局は25条の2第1項により、正常な交通を妨害するおそれがあるときには道路外左折が禁止。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
このように交差点右折プレイをしたなら、次に道路外左折プレイを開始する前に確認しなければ左折を開始できないことになる。
なお、歩道を横切る前の一時停止義務(17条2項)もお忘れなく。
25条の2第1項に基づいて左折前確認をし、確認して左折を開始したなら歩道の直前で一時停止することになる。
以前、死角がある場合の道路外右折の判例をいくつか挙げてますが、
確認するポイントは二段階。
①車道の正常な交通の確認
②歩道の確認(一時停止)
これらに自信がない人は、右折直後に左折とかやめておいたほうがいいし、死角がある場合の右折もやめておいたほうがいい。
やめておくのも自己防衛です。
ちなみに、死角がある場合の道路外右折の場合。
大型貨物自動車の左側には2輪車等の通行可能な余地があって、この通行余地の見通しが困難であったから、一時停止及び微発進を繰り返すなどして通行余地を直進してくる車両の有無及びその安全を確認して右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、(中略)漠然時速約10キロで右折進行した過失
高松地裁 令和3年2月22日
わずかに頭を出した状態で一時停止して、微発進を繰り返し死角を解消しながら右折する注意義務を認定してます。
こういうのは余裕で有罪(過失運転致死傷罪)。
これって道路外左折?道路外右折?
ちなみにこのような場合、これは道路外左折?道路外右折?どちらでしょうか?
これについては25条の2第1項でいう「横断」なのかと。
交差点を直進したわけでもないし、交差道路の横断と捉えるしかない。
もちろん、例の一時停止義務をお忘れなく。
25条の2第1項っていろいろ誤解しやすいけど、
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
「道路外の施設若しくは場所に出入するための横断」とか「道路外の施設若しくは場所に出入するための転回」ではないです。
正しくは↓
「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは」
②横断してはならない。
③転回してはならない。
④後退してはならない。
このように読む理由はシンプルで、昭和35~46年まではこうだったから。
第二十五条
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断し、転回し、又は後退してはならない。
昭和35~46年までは「道路外に出入するための右左折」という表現がなく、全て「横断」でした。
左横断、右横断。
昭和46年改正にによる後付けなんですね。
「道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折」については。
ちなみに車両の横断って歩行者の横断よりも条件が厳しくて、歩行者は「直前直後横断禁止」、車両は「正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止」。
車両の横断のほうが条件が厳しい。
横断なのか、道路外右左折なのかはやや曖昧になる部分もありますが、
25条の2第1項って雑になるとろくなことにならないルール。
ちなみに25条の2第1項は故意犯の処罰規定しかありませんが、25条の2第1項の内容を過失により違反し、しかもそれが「他人に危害を及ぼす速度か方法」であれば「過失による安全運転義務違反」になります。
道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項の「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、後退してはならない。」との規定の過失犯たる内容をもつ行為は、直ちに道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものではなく、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法による運転だけがこれに該当するのであるから、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯が処罰されていないことから、その過失犯たる内容をもつ行為のうち道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、同法70条後段違反の過失犯として処罰できないとはいえないのである。
そうすると、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯たる内容をもつ被告人の本件後退行為につき、道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯処罰の規定の適用がないとする理由はなく、かえつて、同法70条の安全運転義務が、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられていることから考えると、他の各条の義務違反の罪のうち過失犯処罰の規定を欠く罪の過失犯たる内容を有する行為についても、同法70条の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすかぎり、その処罰規定(同法119条2項、1項9号)が適用されるものと解するのが相当である。最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月19日
交通事故統計にやたらと安全運転義務違反が並ぶ理由は、おそらくはこのように25条の2第1項違反に該当するけど故意ではなく過失により違反したみたいなケースが多いからなんじゃないですかね。
恋ではなかったんですよ。
ちなみに刑法って過失よりも故意のほうが罰則が重くなりますが、故意の25条の2第1項違反は三月以下の懲役又は五万円以下の罰金、過失による70条違反は十万円以下の罰金。
正常な交通を妨害するおそれを認識しないまま安全不確認で道路外に左折し、それが他人に危害を及ぼす速度か方法であれば安全運転義務違反になります。
道路交通法はややこしい。
まあ、右折直後に左折とかやめておいたほうが賢明です。
法律上可能なことでも、安全確認に自信がないならやめておくという感覚も必要なのよ。
それこそ死角が大きい横断歩道で安全確認が苦手なら、一時停止して確認しても何ら違反ではない。
一時停止して確認する義務がなくても、一時停止が禁止されているワケではないので。
なぜ道路上でせかせかするのでしょうね。
早い男は嫌われるはずなんですが…
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