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道路使用許可制度の仕組みと歴史。

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こちらの続き。

本当に「道路使用許可」が必要か?
ちょっと前に起きた事故ですが、ブルベ参加者だったそうですね。 ご冥福をお祈りします。 ところで、ある記事に質問を頂いてちょっと思ったこと。 これについて判例を交えながら解説してみます。 先に書いておきますが、事故の発生と道路使用許可の問題は...
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道路使用許可制度

昭和22年道路交通取締法では、現在の77条1項4号に相当する規定はこうなってました。

第二十六条 左の各号の一に該当する者は、命令の定めるところにより、警察署長の許可を受けなければならない。
四 道路において都道府県知事の定める行為をしようとする者

昭和35年に道路交通法になったときに、「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で」と条件をつけて足している。

(道路の使用の許可)
第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない
四 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

これを付け足した理由は、憲法上の自由との兼ね合いらしく。
そのような理由からこういう解釈になる。

「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」の例としては、たとえば、仮装行列、舞踏行進、パレード、マラソンその他競技会のランニング等が、この範疇に入るだろう。しかし、それはあくまでも一般交通に著しく影響を及ぼす程度のものであることを必要とする。

木宮髙彦、岩井重一、「詳解道路交通法」、有斐閣ブックス、1977

道路交通法(以下単に法という)第77条第1項第4号により公安委員会が定めることを委任されている行為の範囲は、法自体において明示するところの、一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為であることを前提とするものであることは、法文上疑をいれる余地がないばかりでなく、道路使用の許可に関し規定した旧道路交通取締法第26条が「左の各号の一に該当する者は命令の定めるところにより警察署長の許可を受けなければならない」としその第4号において「道路において公安委員会の定める行為をしようとする者」と規定して右法条に基づき公安委員会が定めることのできる行為の範囲を法自体で何ら限定していなかつたのに対しこれを現行法のように改正するにいたつた立法の沿革に徴しても明らかであるから、法第77条第1項第4号の規定により公安委員会が定めた行為であつても、一般にそれが法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為に該当すると解することができなければ、法定の要許可行為とならないことはいうまでもない。そして、ここに一般交通に著しい影響を及ぼすような行為とは、検察官所論のとおり、必ずしも現に一般交通に著しい影響を及ぼす行為に限るものではなく、一般交通に著しい影響を及ぼすことが通常予測し得られる行為、換言すればその意味で一般交通に著しい影響を及ぼすおそれのある行為であれば足りると解すべきことは、法第77条第2項第1号第2号の規定の存することからしてもうかがわれるところであるけれども、その「一般交通に著しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に与える支障の程度については、法が例示する「祭礼行事」や「ロケーシヨン」の概念から一般に連想されるところの内容にかんがみ、又法第76条において道路において禁止行為として掲げるものの多くが、道路においてそのようなことをする行為自体において不当視されるものか若しくは社会的に無用行為と見られるもの等であるのに反し、法第77条の定める道路の使用に関する要許可行為の中には、その道路における行為自体が公益上若しくは社会の慣習上有意義であると考えられるものあるいは個人の表現の自由、生活上の権利に関するもの等も含まれるので、これと道路における危険の防止ないし交通の安全と円滑を図る必要とを調和させその妥当な限界を画するため、とくに「一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」でなければならないという条件が置かれたものと考えるときは、それ(前述の「一般交通に著しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に与える支障の程度)は相当高度のものを指すと解さなければならないところで、法第77条第1項第4号の規定に基づき制定された東京都道路交通規則(以下単に規則という)第14条がその第8号に掲げるところの「交通のひんぱんな道路において、……物を……交付すること。」の場合について考えるに、検察官は「交通ひんぱんな道路において物を交付する行為は、抽象的に一般交通に著しい影響を及ぼす行為であるとともに、法が公安委員会に要許可事項として規制することを委任した範囲内の行為である」と主張するけれども、原判決のいうように、単なる「物を交付すること」という概念は甚だ広汎かつ包括的であつて、たとえそれが社会通念上いわゆる「交通のひんぱんな道路において」なされるという場合であつても、その交付の規模、態様等を度外視してそれ自体から一般的に一般交通に対する影響の程度を判然と考えることは困難であるから、祭礼行事やロケーシヨンの場合等と異り、規則に定めた前掲行為から一概に、それが前述の意味での一般交通に著しい影響を及ぼすことが通常予測し得られるもの、換言すれば法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為であるとは即断し難いのであつて、原判示の通り、それが多数集団によつてなされる等の事例においてあるいは一般交通に著しい影響を及ぼすことがあるとみられる場合が考えられるとしても、当該交通状況のほかその規模、態様等方法のいかんを問うことなく、すべて一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあるということはできない。しかし、それだからといつて、規則の定めた前掲規定をもつて直ちに法の委任の範囲を超えた無効のものであると断じ去るのは必ずしも妥当ではなく、法の委任の趣旨に照らし法第77条第1項第4号の規定との関連において考えると、むしろ、原判決のいうように、公安委員会は「一般交通に著しい影響を及ぼすような方法により」物を交付する場合に限る趣旨において前掲規定を設けたものと解すべきであるとするのは決して不当ではない。

(中略)

同所における当時の交通状況に照らして考えると、被告人らの本件印刷物の交付が、一般交通にある程度の影響を及ぼしたことはこれを否定できないにしても、前述の意味での一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあつたとは認め難く

東京高裁 昭和41年2月28日

この判例は有楽町駅前でビラ配りをした行為が77条1項4号の違反として検挙され起訴されたものですが、一審、二審ともに無罪。

 

要はこういうこと。

許可が必要な催し物と、許可が不要な催し物を分ける基準が、「一般交通に与える支障の程度が相当高度か?」になる。

許可が不要な行為なのに77条1項4号を適用して検挙し、後に千葉県警に賠償命令が出た判例もあります。
同じくビラ配りの事案で、計16名で歩道上で行ったもの。

道交法77条第1項は、所轄警察署長の許可を受けなければならない行為を1号ないし4号に定めるが、4号は、「前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーションをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとするもの」と規定する。そして、施行細則11条は、「法77条1項4号の規定により公安委員会が署長の許可を受けなければならないものとして定める行為は次の各号に掲げるものとする。」としてその各号が道交法77条1項4号の授権に基づく規定であることを明らかにした上、九号で「交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のため、文書、図画、その他の物を通行する者に交付すること。」と定める。したがって、千葉県において文書、図画、その他の物を通行する者に交付しようとする者があらかじめ所轄警察署長の許可を受けなければならないのは、
①  一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為で
、交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のためにする場合か、
②  道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のためにする場合か

であると解すべきである。そうとすると、同県においては、普段は人等の通行量が多いという程でなく、かつ、特定の状況下においても人等が一時に急激に増えて人等がひっきりなしに行き交うというような兆候のない相応の幅員の歩道上で人等の通行が大きく阻害されるようなおそれのない間隔である程度の人数の者が通常の方法で行うビラ配布行為は、道交法77条1項4号、施行細則11条9号に該当しないことが明らかであるから、原告らの前記ビラ配布行為は、道交法77条1項4号、施行細則11条9号に該当せず、したがって、右ビラ配布をするに当たって東金署長の許可を必要としなかったものである。

千葉地裁 平成3年1月28日

千葉県警が77条1項4号を適用して検挙したけど、そもそも同号による許可を必要としない行為だったと認め、千葉県に対し100万の賠償命令。

 

昭和41年の東京高裁判決以降、4号許可を必要とする行為の基準は「一般交通に与える支障の程度が相当高度か?」だし、千葉地裁判決も「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為なのか?」を基準にしてます。

 

警察的にも、要許可行為に該当しないことについて「許可を取れ」ということ自体が違法になりかねない。
実際、国賠訴訟で違法認定されたりしてますから…

そういう歴史なので

ちょっと前に大阪で、大量のランナーが集団走行してましたが、

ミッドナイトランナーズの集団暴走は道路使用許可が必要か!?
世の中にはいろんな人たちがいるんだなあと思ってしまいますが、本人たちは楽しく、周りからすれば迷惑・恐怖でしょうね。 ところで、いわゆるデモ行進をするときには警察署長に「道路使用許可」を取らないと違法になります。 (道路の使用の許可) 第七十...

たぶんあれにしても、警察は動いてないのかな。
理屈の上では、要許可行為なのに許可を得ずに道路を使用した場合は検挙できますが、あれでも警察は動いてない模様。

 

なお、自転車関係でもレースではなくサイクリングのイベントとして100台程度は「使用許可が要らない」と言われた人もいるので、台数基準というわけではなく中身次第なんでしょうね。
100台の自転車がある程度バラバラになって走るなら要許可行為にはならないだろうし、100台の自転車がレースをするというなら要許可行為になるのは当たり前。
以前、町内会のラジオ体操で公園を使うにあたり道路使用許可が必要なのか聞いたことがありますが、80~90人程度、せいぜい15分程度と説明したら「許可不要」と言われたこともあります。
その催し物に要する時間なども考慮して判断するのかと。

 

大学のサイクリング部が40人くらいで走っても、誰も「道路使用許可ガー!」なんて言わないと思いますが、そもそも40人が集団で走るわけではなく、いくつかのグループに分かれている。
それは「一般交通への支障が相当高度」とは言えないので、そもそも許可が不要。

このような法律解釈や判例を得てある程度確立しているので、今まで許可が不要だった行為について警察が「許可を取れ」というと、訴えられたら警察が負けるリスクが高い。
千葉地裁判決についても国会で追及されてますが、許可が不要だった行為については理由があるという話です。
本来は許可を取らないとダメなものを黙認していたのではなく、許可が不要だったから問題がなかった扱い。

 

なお、4号以外の屋台などについては、「著しい交通の…」みたいな条件がついていないため、

三 場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者

妨害になる、ならないは関係なく許可が必要です。

 

なお、「要許可行為に該当するか?」の審査をするために警察から資料の提供などを求められることはあり得ます。
あくまでも4号として許可行為に該当するかどうかの基準は、「一般交通への支障が相当高度か?」。
公共性みたいな抽象的な概念でもなく、支障が相当高度かどうかがポイント。

 

まあ、こちらにコメント頂いた方や、数十人規模の走行会を開催している方などが心配していたので記事にしましたが、あくまでも法律上はこのような経緯から「黙認」ではなく「許可不要行為」ということです。
もちろん、数十人が一つの集団で走れば良くないことは言うまでもなく。
それくらいは書かなくてもわかる話かと。

 

他者に配慮して道路を使うことはどの立場でも当たり前な話ですが、4号許可の歴史って道路交通取締法→道路交通法への改正時に「条件」の付け足しを行った関係上、一般交通に著しい影響を及ぼす行為についてのみ許可を必要とします。
憲法でいう自由との調整を図った結果なんだと思いますが、こういう理由から要許可行為/許可不要行為の境目を警察が勝手に変えるわけにはいかないのでしょう。


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