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新・道路交通法と自転車の懸念。自転車が違反にさせられる?

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改正道路交通法の話は何度も書いてますが、

自転車追い越し・追い抜きのルールについて改正道路交通法案が発表されました。
ちょっと前になりますが、自転車を追い越し・追い抜きする際の新ルールができると報道されてましたが、 追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同...

個人的な感想としては、自転車が何かをしなければならないわけではないのであまり気にする必要はないと思う。
読者様から質問を頂いたのですが、分かりやすくイラストにします。

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自転車が「違反にさせられる?」

例えば片側二車線の道路で、車道外側線と歩道の縁石まで1m程度あるとしましょうか。

交通量が閑散としている状態で、後続車が「側方間隔0.7m」「時速28キロ(速度差3キロ)」で追い抜きをした。

このような話になるか?↓

いろんな人
いろんな人
クルマは十分な側方間隔がないので安全な速度としてかなり減速したから18条3項に違反しません!
しかし自転車はもう60センチくらいは左側端に寄れたのに寄らなかったから18条4項の違反です!

第十八条
3 車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。)において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない。
4 前項に規定する場合においては当該特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄つて通行しなければならない

結論からいうと、自転車は違反になりません。

 

そもそもの話、「前項の場合」です。
前項の場合とは、これですよ。

特定小型原付等の右側を通過する場合において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないとき

さて、話を戻します。

先行する自転車からすれば閑散とした交通の状況。
なので後続車が追い抜きしていく場合、「十分な間隔を取れる状況」と認識するわけ。

 

右側を通過する車両が十分な間隔を取れないことを認識しない限り、自転車には18条4項の義務が生じない。
なので十分な間隔を取れるのに取らずに追い抜きしていくクルマがいたとしても、先行する自転車に何か義務が生じる余地がないと思いますが…

 

これが例えば、第2車線が混雑していたとかなら話は違うかもしれません。

そもそも、義務って状況を認識出来なければ生じるものではないので、十分な間隔を開けて追い抜きできる状況であれば自転車側に何か義務が生じる余地がない。

 

ちなみにこの規定、過失の処罰規定はありません。

あまり気にしないほうが

そもそも「できる限り」の意味を取り違えている人が多い気がしますが、

「できる限り左側端」とは「できない場合」を除外する意味。
さてさて、例のこれ。 第十八条 3 車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合(当該特定小型原動機付自転車等を追い...

できる限りとは、できない場合にまでムリさせないために書いたもの。
「できる限り」とつけないと、道路に穴があろうと左側端寄り通行の除外がないことになるので、

不可能な場合を除外する目的で「できる限り」としている。

「できる限り道路の左側端に寄り」とは

(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。

東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974

なので18条4項に違反する場合って、わざと後続車をブロックしてヒャッハーするような場合以外に思い付かない。

 

あとそもそもですが、日本の法律上、道路交通法だけ守れば安全…という考え方は取ってない。
過失運転致死傷罪の「過失」って、道路交通法違反のことではなく注意義務違反全般です。
道路交通法違反がなくても過失運転致死傷罪が有罪になることはあります。

 

例えば以前挙げた判例でこういうのがあります。

自転車追い抜き時に非接触事故の判例。
自転車を追い越し、追い抜きする際には側方間隔が問題になりますが、接触してないものの事故になった判例を。 非接触事故の判例 非接触事故の判例としてますが、事故態様には争いがあります。 判例は東京地裁 平成27年10月6日。 まずは大雑把に状況...

まずは大雑把に状況から。

この状況から後続車が右に進路変更して側方間隔約1.2mを取り追い抜き。
自転車はバランスを崩し10.8m進行してから歩道の縁石とガードレールに衝突した事故です。
(ただし自転車の主張は、車のサイドミラーが衝突して押し飛ばされたとしています。)

 

自転車の位置は車道外側線から内側に約30センチ、車道外側線と歩道の縁石の距離は70センチです。
車の大きさは省略しますが、貨物車。

時速15キロの自転車に対し、後続車は「側方間隔1.2m」「時速40キロ」(速度差約25キロ)で追い抜き。
これで非接触事故が起きてます。

 

民事の判例ですが、過失割合はこちら。

自転車 追い抜き車
40 60

被告は、被告車を運転して前方の原告車を追い抜くにあたり、被告車が箱形の荷台がついた貨物車であって、後方から自転車の側方を通過する際に自転車の運転者が風圧や狼狽などにより操縦を誤り転倒するなどの危険があるから、自車と自転車との間に相当な間隔を保ち、十分に減速して、自転車の動静を注視しつつ進行するなどの注意義務があるところ、被告の述べるところによっても時速約40キロで通過したものであり、原告車との間隔及び速度差、被告車の車種、追い抜く際の原告の様子に照らすと、被告車の追い抜きが原告車の走行に影響を与えるものであったことが推認され、被告には上記注意義務を怠った過失が認められる。

 

(中略)

 

もっとも、被告は追い抜きに当たり右に進路変更して側方に約1.2mの間隔を取っており、過失が大きいとはいえない。他方、原告においても、本件道路は片側2車線で歩車道が分離されており、車両が比較的高速で通行することが予測される道路であるから、車道を通行する際には四囲の状況に注意を払い、適切にハンドル・ブレーキを操作して運転すべきところ、被告車が相応の間隔を空けて側方を通過したにもかかわらず転倒していること、転倒したのは被告車が通過して約10m進行した先であること、原告に対する通行人の言動を考慮すると、原告にも自転車運転上著しい不注意があったことが推認される。これらの原告及び被告の過失の内容・程度を総合考慮すると、原告に生じた損害について40%の過失相殺をするのが相当である。

 

東京地裁 平成27年10月6日

側方間隔1.2mで吹っ飛ぶのか?と思う人もいるでしょうけど、現実に事故は起きてます。
原告の主張は「ぶつかった」ですが、警察の実況見分でも接触の痕跡は無し。

 

これが18条3項に違反するのかはビミョー。
側方間隔1.2m、速度差25キロ(40キロ-15キロ)。
けど、違反にならないギリギリのラインを狙ってもしょうがないし、こんな事故になって時間や手間を取られるなら減速する方がいいよね。

 

そしてこの場合、自転車に18条4項の違反が成立するとは解釈できません。
なぜなら、

十分左側端寄りだし、二車線あれば追い抜き車には十分な間隔があるので。
きちんと解釈すれば自転車にムリをさせるルールではないと読み取れますが、いまだに「自転車が横断歩道を乗ったままだと違反だ!」とか「自転車を追い越しする際にイエローラインを越えても違反ではない」などと珍解釈が横行する日本なので、他人がきちんと理解していることは期待できないのですけどね。

 

なので「わざと追い抜き妨害するようにブロックしない限り、違反にはならない」でしょう。

 

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