この事故についてだいぶ疑問があるのですが…
3日深夜、広島市佐伯区の県道にある交差点で、横断歩道を渡っていた31歳の女性が車にはねられ死亡しました。
(中略)
警察は過失運転致傷の疑いで運転手の22歳の男を現行犯逮捕。今後、容疑を過失運転致死に切り替え捜査するということです。
現場は岡の下川沿いの県道の、横断歩道のある交差点で、事故当時夜間のため、自動車側の信号は黄色点滅、歩行者側の信号は消えていたということです。
点滅信号の横断歩道わたっていた女性が普通車にはねられ死亡 運転手を現行犯逮捕 広島・佐伯区(HOME広島ホームテレビ) - Yahoo!ニュース3日深夜、広島市佐伯区の県道にある交差点で、横断歩道を渡っていた31歳の女性が車にはねられ死亡しました。3日午後11時半ごろ、広島市佐伯区三宅の坪井橋西詰の交差点で、横断歩道をわたっていた近所に
事故現場はここ。
道路交通法上はだいぶ問題があるように思えるけど、黄色点滅信号の交差点は「信号がない交差点」になります。
そして歩行者用信号は消灯されていたと。
そうなると道路交通法上は「信号がない横断歩道」になるはずで、横断歩道標識がないと道路交通法上は「横断歩道が不正」で「横断歩道がない」ことになると思うのですが…
第一条の二
3 法第四条第一項の規定により公安委員会が横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)を設けるときは、道路標識及び道路標示を設置してするものとする。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、それぞれ当該各号に定めるところによることができる。
一 横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合 道路標示のみを設置すること。
なお、道路交通法三六条二項、三項にいう「交通整理の行なわれていない交差点」とは、信号機の表示する信号または警察官の手信号等により、「進め」「注意」「止まれ」等の表示による交通規制の行なわれていない交差点をいい、本件交差点のように、一方の道路からの入口に黄色の燈火による点滅信号が作動しており、他方の道路からの入口に赤色の燈火による点滅信号が作動している交差点も、これにあたるものと解するのが相当である。
最高裁判所第一小法廷 昭和44年5月22日
横断歩道標識もなく、信号がない交差点に付属した横断歩道はまずいんじゃないかと…
ただし、横断歩道がないなら38条の2になる。
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
けどこの規定、歩行者側に直前横断などがあるときは適用しないとされてますし、一般的注意義務として前方左右を注意しながら進行する義務があるとはいえ、この手の事故で問題になる「減速接近義務違反」が否定されてしまうのではないかと心配になる。
交差点内にセンターラインがないから優先道路がないと解釈しても、左右の見通しが効かない交差点(42条徐行義務)と言えるかもビミョーだし、横断歩道が不正扱いされたら民事の過失割合もおかしなことになりかねない気がしますが(ダイヤマークの有無も含め)、後々ややこしくなるからおかしな運用は避けたほうがいい気もします。
反対向きにも横断歩道の標識はありません。
黄色点滅信号は注意進行ですが、
具体的な内容を指示してないので弱い。
黄色点滅信号でも令1条の2でいう「横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合」と見なせるのかだいぶ怪しい気がしますが、どちらにせよ車道通行車両は黄色点滅だからと「進行してよい」ではなく「注意して進行できる」なので気を抜かずに…
けど、「信号がなく標識もない横断歩道扱い」だと、歩行者は横断開始する一方、車両には減速接近義務がないことになりかねないし、まずいんじゃないかと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
横断歩道と黄色点滅信号を表示する信号機についてですが、道路交通法施行令第1条の2第3項第1号の道路標識等併置の例外を認めた理由が「信号機が設置されている場所においては、横断歩道等の存在が認識されやすいと考えられた」(執務資料 道路交通法解説)であることから、その表示する信号の種類に関わらず、適法に設置された横断歩道であると思います。また、引用されている昭和44年5月22日最高裁判所第一小法廷(引用では「昭和47年5月4日」とされていますが、おそらくこれは昭和46(あ)1100の判例です)の判例では「交通整理の行なわれていない交差点」の意義を判示しており、「信号のない交差点」の意義とは異なると思います。あくまで私見ですので、誤っている部分等ありましたらご指摘ください。
コメントありがとうございます。
判決年月日の間違いは失礼いたしました。
おっしゃる通り、「交差点の信号」と「横断歩道を設けようとする場所の信号」の違いは気になったのですが、これは執務資料に令1条の2の解釈として書いてあるのでしょうか?
返信ありがとうございます。
「また、引用されている〜」以降に関しては完全に私見です。執務資料のものではございません。執務資料から引用した部分は、信号機が設けられている場合の道路標識等の併置不要の理由のみです。
黄色点滅信号でも併置不要か→執務資料を参考にすると、どのような信号を表示していても信号機である以上は併置不要であると思います。
「交通整理の行われていない交差点」と「信号のない交差点」→例えば赤色点滅信号と黄色点滅信号のみの場合、「交通整理の行なわれていない交差点」ではあるが、「信号のない交差点」ではないという完全に私の考えです。
コメントありがとうございます。
元々は信号がある横断歩道にも標識と標示の両方が必要だったものを、昭和38年に未舗装路に横断歩道を設置可能にする段階で、ついでに信号がある場合にも標識不要にしたと認識してます。
信号がある横断歩道に標識不要とした理由を考えると、信号により車両の進行を規制することが可能(つまり歩行者と交錯しない)だからわざわざ遠くから標識で視認できなくても問題ない…という意味なのかと思ってました。
もう少し調べてみますが、施行令の解説書ってないんですよね。
ご指摘の通り、最高裁判例が「交差点に信号があるか」の問題なのでビミョーに意味が違う点は気になってましたが、やはりそこにツッコミを入れる人がいるのかと笑。
黄色点滅信号でも今回のケースのように夜間に固定で黄色点滅にして歩行者信号を消灯しているパターンと
常時黄色点滅で歩行者信号が赤で、歩行者がボタンを押した場合に車道信号が赤に変わって歩行者信号が青になるパターンの2種類の運用が混在しているので
交差側の歩行者信号が点灯していない場合は減速接近義務が発生するというのは現実的ではないように思いますし
後者の場合で減速接近義務が発生するとしたら信号の設置意味が無いような気がします。
法律と運用との穴のような気がしますね。
コメントありがとうございます。
この件、広島県警本部に確認しました。
施行令でいうところの「信号のある場所」とは点滅信号も含む以上、この運用に問題はないそうです。
減速接近義務との関係から不適切では?と意見しておきましたが、おそらくは法律上のバグかと。