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マラソンレース中に選手をはねて、過失運転致傷で書類送検に。

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これは以前も取り上げてますが、

選手に大会運営車両が後ろから追突した事故です。
特に難しい要素があるようには思えないけど、選手の方は肘を骨折したまま10キロ走り完走しているのでびっくりしますよね。

 

まあ、大会運営車両に轢かれることが一番の驚きですが、前方不注視による事故でしょうか。

 

ところでちょっと話は変わります。
過失運転致死傷罪は不起訴率が85%近くある。
令和3年で不起訴率は84%。

これの理由はなんででしょうか?

 

過失運転致死傷罪は自動車運転処罰法に規定されてますが、問題になるのは但し書き。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる

「傷害が軽いときは情状により刑を免除できる」とあります。
これは執行猶予の話ではありません
「刑を免除」です。

 

たまに見かける判例で「有罪だけど刑を免除する」というのがあります。
一例↓

 

○横浜地裁 平成28年4月12日

この事故は交差点を左折したクルマと横断歩道を横断した自転車の接触事故ですが、当初「加療1週間の見込み」という診断書に基づいて不起訴。
しかし被害者から、症状固定長引いたため244日を要する肋骨骨折や頸椎捻挫の申告を受けて検察官が「過失運転傷害罪」として起訴した事案です。

 

これについて、有罪だけど刑の免除という判決が確定しています。

もとより、本件事故の発生原因に関し、被害者に落ち度があるわけではなく、また、被害者が、自己の傷害の内容について、殊更に虚偽を述べているとも認められないから、被害者が、本件事故により、症状固定までに約244日間を要する肋骨骨折等の傷害を負ったものとして本件を起訴した検察官の判断が、不当であったと即断することはできない。
しかしながら、検察官において、被害者にうつ病等の精神症状があることも踏まえて、関係証拠をより慎重に検討していれば、いったん不起訴処分となった本件が、そのまま起訴されなかった可能性も否定できない。
また、本件事故を起こした被告人の過失は、単純かつ比較的軽微なものであって、被告人が日常的に不注意な運転をしていたような事情もない。
そして、当裁判所が認定した限度では、被告人は、当初から事実をほぼ認め、被害者に謝罪もしていたところ、前科のない被告人が、長期間にわたって応訴を強いられたという訴訟の経過等にも鑑みると、被告人の判示所為は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律条本文に該当するものの、本件は、同条ただし書により刑の免除をするのが相当な場合に当たるから、刑訴法334条により主文のとおり判決する。

 

横浜地裁 平成28年4月12日

執行猶予は刑の執行を猶予する(刑法25条)、自動車運転処罰法5条但し書きは「刑自体の免除」。

 

軽症事案は仮に起訴しても、自動車運転処罰法5条但し書きにより「有罪だけど刑を免除する」となる可能性が高い。
なので検察官も軽症事案は不起訴(起訴猶予)にするのが通常。

 

令和3年の不起訴率は84%ですが、軽症事案はどれくらいあったのでしょうか?
警察庁の統計を確認します。

12.交通事故発生状況の推移(平成30~令和4年)|令和5年版犯罪被害者白書 - 警察庁
警察庁の令和5年版犯罪被害者白書を掲載しています。

 

令和3年でみると、負傷者が362,131人に対して軽症事案(加療30日未満)が334,927人。
負傷者のうち約92.5%が軽症事案ですが、これのうち悪質性が高い事故は別として、軽症事案を起訴しても「有罪だけど刑を免除する」となる可能性が高い。
なので検察官も起訴しない。

 

一つの事故で複数の負傷者がいたり、重傷者と軽症者が同時に発生した事故や、死亡者と軽症者が同時に発生した事故などもあるとはいえ、不起訴率が高い理由の主な原因は「軽症事案が多いから」と見て取れるでしょう。

 

今回の事故については、全治3ヶ月の重傷だったようだし、普通に起訴されるのかなと(略式起訴含む)。

 

ただし問題なのは、死亡事故でも不起訴になる場合もあること。
これについては、公判を維持するのに必要な証拠がないのかもしれないし、検察官的に難しいと思ったら不起訴にしてしまう問題もあるのですが…
刑事では合理的な疑いがない程度に過失を立証しないと無罪になりますが、証拠不十分で起訴して無罪になることは避けたいのでしょう。
日本の場合、起訴されたら有罪率は99%以上です。

 

一方では「なぜこれを起訴した?」と疑問に思えてしまう事例もあるので、あくまでも全体的な傾向という意味で捉えて頂ければ。

 

たまに「民事で示談すれば起訴されない」みたいな意見をみますが、被害者が処罰を望まない上申書を出していたりすれば多少は考慮される可能性もあるけど…不起訴理由は開示されないから不思議ですよね。

なお、道路使用許可を取り交通規制をしていても、道路交通法上は道路(東京高裁 昭和42年5月31日)。
運転者に対する行政処分は安全運転義務違反+付加点数(専ら運転者の不注意)になるかと。

 

道路交通法上の道路でも、適用する必要がある規定と適用する必要がない規定を分けて考えるので(東京地検交通部)、道路交通法の適用がある場所だからと言って「ランナーは歩行者だから車道通行は違反だ!」みたいな理不尽なことにはなりません。
マラソンとして許可したのだから選手に通行区分を適用する必要はないけど、大会運営車両について安全運転義務まで免除すると不合理なので適用される。

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しかし、大会運営車両がレース中に事故を起こすなんてあってはならないので、緩みがあったのかと心配になる。
それはツールド北海道も含めて。

 

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