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道路交通法の「道路」と、根本的な矛盾。

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道路交通法の道路には「一般交通の用に供するその他の場所」を含みますが、

一 道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

以前挙げた件に質問を頂いたのですが、条文だけでは解決できない根本的な矛盾があるとしか言えないのですよ。

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「道路」の解釈と根本的な矛盾

事例を3つ考えてみます。

小学校の校庭は「道路」?

以前挙げた件になりますが、小学校の校庭を「一般交通の用に供するその他の場所(道路)」とし、無免許運転罪を認めた判例があります(高松高裁 昭和27年3月29日)。
この件は、土木事務所に勤務する公務員が校庭内で貨物車を運転し(おそらくは業務)、その際誤って児童に接触。
無免許運転罪と業務上過失致傷に問われたものですが、業過はともかくとして、校庭が「道路」に該当しないから無免許運転罪にならないはずだと主張したもの。

 

一審、二審ともに「道路」と認めたのですが、その解釈を取ると矛盾が起きる。

いろんな人
いろんな人
校庭が「道路」なら、「交通のひんぱんな道路において、球戯をし(76条4項3号)」に抵触するからまずいんじゃね?
読者様
読者様
校庭が「道路」だというなら、運動会をするのに道路使用許可(77条1項4号)が必要になってしまうよね?

矛盾が起きてしまいます。
まさか、校庭で運動会をするのに道路使用許可が必要になる…わけもない。

公園で「花見」

上野公園は「一般交通の用に供するその他の場所」として道路になるでしょうけど、花見(飲み会、催し事)をするには道路使用許可が必要…になってしまう。
もちろん、誰も道路使用許可を取るわけもないし、簡易テーブルを置いたりしているけど、警察は「道路使用許可を取ってないから違法」とは言わないし、「交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない」(76条3項)に抵触するから違法とも言わない。

 

道路なのに、ね。

 

一方で政治団体がデモをするなら、確実に道路使用許可の問題が発生する。

レースのために「交通規制」

道路使用許可を取り交通規制をした場所でも、道路交通法上は「道路」になりますが、東京高裁 昭和42年5月31日判決ではそのような場所も道路だとし、無免許運転罪が成立するとしています。
ツールド北海道事故は交通事故として警察が処理しているし、道路交通法の適用があるとしている。

 

じゃあ、レース中の選手が並走したり速度超過したら違法なの?と矛盾が起きてしまいます。

矛盾は解決できない

小学校の校庭を「道路」と認めた高松高裁判決に関連して、東京地検交通部はこのように説明している。

横井・木宮氏や法総研は、学校の校庭などを道路と認めると、77条(道路使用許可)なども適用しなければならなくなり不合理であるということなどを根拠に道路性を否定しているが、もともと、学校の校庭や工場の敷地などは一般交通の用に供する場所として設けられたものではなく、道路としての形態も備えていない。したがって、そのような場所で運動会を行ったり、工事をしたり、工作物を設ける場合に使用の方法や形態などについて警察署長の許可を得なくても道路交通の安全や円滑を損なうおそれはなく、77条の適用などはその必要がない
これに反し、64条(無免許運転の禁止)や65条(酒気帯び運転などの禁止)の規定などは、当該場所が現に公衆の通行の用に供されている以上その交通の安全を図るためにその適用が必要とされるのである。
かように、道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨にたちかえって考えれば、道路交通法の道路と認定された場所について、ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない。

東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974

危険行為に当たる無免許運転を規制する意味では道路と認定しても、あくまでも校庭なんだから道路使用許可を要求する必要がない。

 

レースとして使用許可を出し交通規制をしたのだから、レースとしての内容に道路交通法の規制をする必要がないけど、中継車が無免許運転や飲酒運転してもお咎め無しとはできないのであくまでも「道路」になります。
速度遵守や並走禁止などは交通の安全と円滑のためのルールだけど、レース中にそれらを適用する必要がないから適用しないだけで、あくまでも道路交通法の適用はある場所になる。

花見に「道路使用許可」などを適用しない理由は、おそらくは「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」(77条1項4号)とまでは言えないから適用しないのだと思いますが、東京高裁は「一般交通に与える影響が相当高度なものだけが要許可行為」としているので、相当高度と言えないから適用しないのでしょうかね。

 

範囲を狭めても、何の意味もない。
ちょっと前に道路使用許可について書きましたが、 いろいろご意見を頂いて、なかなか納得しない方もいたのですが、納得されたようなのでちょっと書いておきます。 道路使用許可 この規定の解釈ですが、 (道路の使用の許可) 第七十七条 次の各号のいず...

東京地検交通部が解説しているように、「道路」と認めたとしても全ての規定を適用するかは別問題。
安全と円滑を目的にした法なんだから、こうなる。

ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない

なので条文からすると当てはまりそうに見えても、道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨から適用するしないを考えるしかなく、法だけ読んでも矛盾があるのよ。

 

で、読者様からの質問は「道路交通法の適用がある場所なのに適用しないとする根拠」ですが、

道路使用許可がある場所で道路交通法違反が成立するか?
個人的にはそもそも論点がおかしいと思っているので、どうでもいい話になります。 ツールド北海道事故について、被害者さんが対向車線にはみ出したことを道路交通法違反だと考える人もいるのが事実。 個人的にはそこは論点になり得ないというか、集団落車な...

「道路交通法上の道路であること」と「道路交通法の適用がある場所であること」と「選手に具体的規定を適用しないこと」は、道路交通法の目的や立法趣旨からすれば何ら矛盾していないことになります。
条文「だけ」を考えても解決できないけど、そういうことです。

 

パレスサイクリングにしても道路交通法の適用があるので、理屈の上では「第1通行帯通行義務(20条1項)」や「並進禁止(19条)」などのルールがあるけど、あれだけ何車線も「自転車専用」にしたのに適用する理由も必要もないから適用しないわけで、道路交通法の目的と立法趣旨からすれば何ら矛盾していないことになります。
一方で「道路」であり「自転車専用」にしている以上、クルマなどが進入できないように規制する。

 

「第1通行帯通行義務(20条1項)」や「並進禁止(19条)」は混合交通の中で安全と円滑を達成するためにあるわけで、自転車専用道路にしたのに適用する必要がない。

 

条文だけみると違反が成立するように見えて、適用する必要がないものは適用しないという当たり前な話に落ち着くわけです。
まあ、条文だけにこだわる人がいたらややこしいのですが、検察庁の解説が一番納得しやすいかと。
それぞれのルールは「安全と円滑」・「事故防止」を達成するために設けているので、特殊な状況では全てを適用する必要がないことになります。

コメント

  1. 鉛の巨人 より:

    この件は取り締まり現場的な視点からは、「道路」と「一般交通の用に供するその他の場所」に分けて考え、後者は「みなし道路」すなわち本質的には道路ではない場所ということになります。
    ですので、みなし道路は通行の用に供することを主目的とした場所(=本来の道路)ではない以上、おのずと道交法の適用に制限があることとなり、適用する条文を限定的に解釈することになります。多くの府県警では、みなし道路でも適用できる違反をホワイトリスト的に列挙しています。
    ただ、あくまで「みなし」ですので違反があっても青切符措置とできるケースは多くなく、多くは基本送致となります。多いのは緊急用河川敷道路の無免許運転とかかな? やんちゃなガキが原チャで走り回るやつです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      その通りで、条文解釈を間違うとまあまあ意味不明になるんですよね。

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