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自転車とクルマが見通しが悪い交差点にて事故。

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このような事故はなぜ起きてしまうのでしょうか?

23日午前7時半ごろ、加賀市山田町の丁字路交差点で、自転車に乗っていた加賀市松が丘の中学1年生・田代夢來さん(13)が、交差点を直進していたワンボックスカーにはねられました。

(中略)

自転車が走っていた道路には一時停止の標識があり、警察が当時の状況を調べています。

事故現場はこちらです。

 

○クルマの進行道路

 

○自転車の進行道路

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勘違いしやすい「過失運転致死」

「過失運転致死罪」について勘違いする人がそれなりにいますが、その前に双方の義務を確認します。

 

クルマの進行方向はおそらくこっち。
なので事故態様のイメージはこう。

まずクルマの義務から。
現場は左右の見通しが悪い交差点なので、徐行義務があります(左右の見通しとは左/右のどちらかのみでも成り立ちます)。

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

「優先道路」とは、優先権がある側のことではなく、交差点内にセンターラインがある側です(36条2項)。
センターラインがない道路なので優先道路がなく、左右の見通しが悪い交差点なのでクルマには徐行義務がある。

 

自転車のほうは一時停止義務&交差道路の進行妨害禁止

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

まとめるとこうなる。

クルマ 自転車
義務 徐行義務 一時停止&交差道路の進行妨害禁止
法条 42条1号 43条
相対的優先 優先 劣後

一時停止側が劣後し、相対的にクルマが優先権を持つ。

 

で、過失運転致死罪について勘違いする人がそれなりに多い気がしますが、過失運転致死罪は「どっちが悪いか」を決めるわけではなく、「運転者の過失が死亡事故と因果関係があるか?」が問われます。
したがって徐行義務を怠っていた場合、「徐行義務を怠り漠然進行した過失」として有罪になる。
逆に徐行義務を果たしていたけど回避できなかった事故について、無罪にした事例もあります(大阪高裁 昭和59年7月27日)。

 

この手の事故について、非優先側の自転車に過失があることはまず間違いないにせよ、過失運転致死罪で問われるのは優先/非優先じゃないのよね。
徐行義務違反があったかなかったかが争点。

 

これって自転車対自転車の関係でも同じで、仮に自転車対自転車の事故であったとしても、徐行義務を怠って事故を起こすと「重過失致死傷罪」で有罪になります。
実例は普通にあります。

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なのでこの事故だけを見て「どっちが悪いか?」なんて話はどうでもよくて、この道路を進行することを想定して義務を考えないと無意味かと。
この場合の基本過失割合はこうなります。

クルマ 自転車(一時停止)
60 40

「優先権があるクルマに60%は理不尽じゃないか!」と考える人もいそうですが、要は基本過失割合として徐行義務を怠って交差点に進入した前提の過失割合だからです。
仮に徐行義務を果たしていたけど防ぎようがない事故だったなら大幅に修正されるでしょう。

 

まあ、一時停止側により強い注意義務があることは言うまでもなく。

起訴/不起訴と示談は関係する?

たまに「民事で示談していれば不起訴になる!過失運転致死傷罪の85%は不起訴だ!」みたいな論調を見かけますが、過失運転致死傷罪の不起訴率が高い理由はそこではない。

 

まず、令和3年の過失運転致死傷罪の不起訴率は84%です。

過失運転致死傷罪は自動車運転処罰法に規定されてますが、問題になるのは但し書き。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる

「傷害が軽いときは情状により刑を免除できる」とあります。
これは執行猶予の話ではありません
「刑を免除」です。

 

これってどういう意味かというと、軽症事案を起訴すると、「有罪だけど刑を免除する」という判決になる。
一例として横浜地裁 平成28年4月12日判決。

 

この事故は交差点を左折したクルマと横断歩道を横断した自転車の接触事故ですが、当初「加療1週間の見込み」という診断書に基づいて不起訴。
しかし被害者から、症状固定長引いたため244日を要する肋骨骨折や頸椎捻挫の申告を受けて検察官が「過失運転傷害罪」として起訴した事案です。

もとより、本件事故の発生原因に関し、被害者に落ち度があるわけではなく、また、被害者が、自己の傷害の内容について、殊更に虚偽を述べているとも認められないから、被害者が、本件事故により、症状固定までに約244日間を要する肋骨骨折等の傷害を負ったものとして本件を起訴した検察官の判断が、不当であったと即断することはできない。
しかしながら、検察官において、被害者にうつ病等の精神症状があることも踏まえて、関係証拠をより慎重に検討していれば、いったん不起訴処分となった本件が、そのまま起訴されなかった可能性も否定できない。
また、本件事故を起こした被告人の過失は、単純かつ比較的軽微なものであって、被告人が日常的に不注意な運転をしていたような事情もない。
そして、当裁判所が認定した限度では、被告人は、当初から事実をほぼ認め、被害者に謝罪もしていたところ、前科のない被告人が、長期間にわたって応訴を強いられたという訴訟の経過等にも鑑みると、被告人の判示所為は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律条本文に該当するものの、本件は、同条ただし書により刑の免除をするのが相当な場合に当たるから、刑訴法334条により主文のとおり判決する。

 

横浜地裁 平成28年4月12日

執行猶予は刑の執行を猶予する(刑法25条)、自動車運転処罰法5条但し書きは「刑自体の免除」。

 

軽症事案を起訴しても「有罪だけど刑を免除する」という判決になるので、軽症事案は不起訴率が高い。
さて、令和3年の不起訴率は84%ですが、軽症事案はどれくらいあったのでしょうか?
警察庁の統計を確認します。

12.交通事故発生状況の推移(平成30~令和4年)|令和5年版犯罪被害者白書 - 警察庁
警察庁の令和5年版犯罪被害者白書を掲載しています。

 

令和3年でみると、負傷者が362,131人に対して軽症事案(加療30日未満)が334,927人。
負傷者のうち約92.5%が軽症事案ですが、これのうち悪質性が高い事故は別として軽症事案を起訴しても「有罪だけど刑を免除する」となる可能性が高い。
なので検察官も起訴しない。

 

ただし、死亡事故の場合でも証拠不十分などの理由から不起訴になることはあります。

 

「示談していれば不起訴になる!」というのはちょっと無理筋で、被害者遺族側から「寛大な処分を望む」みたいな上申書が出ていれば検察官が考慮することはあるかもしれませんが、過失運転致死傷罪の不起訴率が高い理由は「軽症事案が多いから」なんだろうなと読み取れますし、示談すりゃ不起訴になるみたいなのはちょっと無理筋かと。

 

冒頭の事故については、双方やるべきことをやらないと被害者にも加害者にもなるよね、としか言えませんが、被害者のご冥福を。


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