ちょっと前にも似たような事例を取り上げた気がするけど、
緊急車両が赤信号で交差点に入ることは可能ですが、これってどちらにも問題があるようにしか見えないのよ。
パトカーは交差点進入時には低速進入しているけど、交差道路左側に停止車両がいるわりには無警戒に加速したように見える(交差道路左側の停止車両の影に2輪車がいたら事故る)。
一方トラックはサイレンが聞こえていないのか、無減速で交差点に進入。
どちらにも違反も過失もあるように見えますが、こういうのってどっちかが悪いことにしたがりますよね。
以前挙げたように「両者有罪」ってあるのよ。
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千葉地裁 平成14年3月28日(刑事)は、赤信号で交差点に突入した救急車と、青信号で突入した貨物車が衝突した事故。
両者ともに業務上過失致死傷罪に問われた判例です。
救急車 | 貨物車 | |
信号 | 赤 | 青 |
交差点進入速度 | 20~23キロ | 77~92キロ(指定最高速度40キロ) |
その他 | サイレン&赤色灯 | 飲酒運転 |
判決 | 罰金50万 | 懲役2年 |
3 緊急自動車は緊急用務を遂行する場合は,信号機の表示に従わずに進行することができるが,その場合は他の交通に注意して徐行しなければならない。一般車両は緊急車両を優先させる義務があるとはいえ,緊急車両が信号表示に従わないで進行する際の運転には特に慎重を期すべき注意義務が課されているというべきである。被告人Aは,本件交差点に信号表示に従わないで進入するに当たり上記のように左右の交差道路を確認し,右方道路には車両はなく,左方道路には救急車を優先させるため停止していた車両を確認したが,再度右方道路を確認することなく本件交差点に進入したのである。被告人Aは当時は深夜で交通が閑散とし,右方道路は被告人Aから見て下りの坂道で一度は確認したとはいえ,見通しが良いとはいえないこともあるから,停止線を超えて交差点に進入するときに再度右方を確認をして徐行して進行すべきであった。そうすれば被告人Bの運転車両を避けられた可能性があったといえ,この点において,被告人Aの過失は軽微なものとはいえず,同人の負っていた救急隊員としての責務に照らし,また,発生した結果が重大なものであることから,同人の責任は軽視しがたいものがある。
4 被告人Bにおいては,飲酒の上,深夜の交通閑散に気を許し,制限速度のほぼ2倍の高速度で進行していたものであり,その運転自体が危険なものである。本件交差点では青色の信号表示に従っていたとはいえ,被告人Bの本件交差点までの道路は上り坂で同人から見て左方道路はやや見通しが悪い状況であったから,運転者としては交差点においては前方左右を注視し,起こりうる事態に対応できるように運転すべき注意義務があった。しかし,同人は判示のように漫然と高速度で進行したばかりか,上記のとおり衝突直前に至るまでサイレンを吹鳴し警光灯を点灯させていた救急車に気づかなかったというのであるから,その注意義務違反の程度は誠に重大というほかない。本件においては,酒気帯び運転が厳しく非難されるべきことはもちろんであるが,被告人Bが制限速度を遵守し,前方左右を注視して運転していれば,本件交差点付近で夜間に警光灯を点灯しサイレンを吹鳴していた救急車に容易に気づくことができ,それを優先させるべき運転者の義務を果たし得た,すなわち事故を容易に回避できたのであって,被告人Bの本件運転は極めて危険,悪質なものでその過失は大きい。それにより生じた結果を考えれば,同人の責任は極めて重大であるといわなければならない。千葉地裁 平成14年3月28日(刑事)
両者ともに有罪。
そりゃ罪の重さに差が出ることはあるにせよ、「どっちもダメ」というパターン。
映像を見ると、どっちもダメに見えますが。
他人がどうとかの前に、やるべきことはやろうねとしか言えない。
緊急車両が事故った話は最近多い気がするけど、緊急車両を優先しないクルマも多いし、一方では徐行せずに赤信号の交差点に進入する緊急車両もいる。
どっちもダメならそりゃ事故るのは当たり前ですが、緊急車両を優先しない風潮っていつかしっぺ返しがくると思うのよ。
緊急搬送に時間が掛かり手遅れ(脳死)になった身内がいますが、そういうこと。
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2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
緊急車両を優先しない風潮、確かに感じます。
今日も後方から救急車がサイレンを鳴らしながら接近してきました。片側一車線の県道(神奈川県道402号)ですが、なぜかクルマは左に寄って救急車に道をあけない。速度は落としたのですが。。。
救急車はスローダウンした車列を追い越して行きました。
なんだかな〜〜〜
話は変わりますが私は今年の2月にいわゆる左折巻き込み事故にあいました。後方から追いついてきた軽自動車が私に被せる形で急に自宅敷地に入ろうとしたパターンでした。軽自動車が速度を落として私と並走した時にはウィンカー無し。せめて左ウィンカーを出していれば私が減速して回避できた可能性がありましたが。。。 ウィンカーを出さない、ウィンカーが遅いクルマって多いですよね。
なんだかな〜〜〜
コメントありがとうございます。
いつか自分に返ってくるだけなんですよね。
緊急車両を優先しないことは。
左折巻き込みですが、合図不履行や合図遅れは多いですよね。
あれもなんとかならないのかなと。
緊急車両のサイレン、最近は車両の防音性能が上がったり、サイレンの設置箇所が屋根じゃなくてフロントグリルやらバンパー裏になって他車が吸音材になったり、近所迷惑との声で指向性や周波数特性が変わったのか、昔より聴こえにくいのは現実として有るんですよね。
救急車の場合、後方40mまで近づいて、40km/hのロードノイズに勝てる程度しか聞こえないなんてレポート(DOI:10.11240/jsem.22.51の表3)が有ったりします。
オーディオや会話してると20mまで近づいても聞こえない程度だとか。
悪い事に5月29日って強風が残ってた日だったはずで、風向きによっては音が流されて減衰しますし。
あと、車は急に止まれない。
建物の陰から現れて2秒強で衝突なので、パトカーのサイレンや赤色灯を認知した時には重量物を積んだトラックは既に避けられない状態だった可能性は有るかと。
ノーブレーキって話も、空走距離なんてあくまで平均値ですし。
ドラレコ映像の手前で止まってる車は右折専用車線の車両なので青信号なのに止まってるのは普通のことですし。
後は、運転手が認知できるか怪しいサイレン(前述の音量や世の中は聴覚障害者も居る)と赤色灯のみ。
昼だし、事故現場は赤色灯が反射するような物がイマイチ足りない感じなのが……
V2VのITS Connectの緊急車両存在通知(現状救急車のみ)みたいな物が普及するとマシになると思うのですが、まだまだ時間が掛かるかと。
昔はカーロケの電波が出ていて、レーダー探知機が受信することでサイレンが聴こえなくても存在が確認できたりしたんですが、
犯人が逃走に悪用するのでカーロケの発信を止めたり、デジタル化で役に立たなくなりました。
サイレンや赤色灯が見える前に認知出来て便利だったんですけどねー。
コメントありがとうございます。
騒音が出る特殊車両を運転していてサイレンが聞こえなかったことから無罪にした判例もありますが、最近確かに「聞こえない」ケースはあるのかもしれません。
自動運転になると変わるのかも…
自動運転こそ、事前に後方含むカメラやマイクを装備した上で、事前学習やV2V含むV2X等で情報を拾わないと、そのまま緊急車両に突っ込むことになります。
全てが自動運転で、信号機不要レベルの協調制御まで行けば話は別ですが。
自動運転車がセンサー等で緊急車両の接近に気づけるなら、手動運転のみの車でも実装できない理由はないです。
コストの問題がありますが、衝突被害軽減ブレーキみたいな感じになるかも。
その為には緊急車両や道路側の対応が必要で時間とお金が掛かりそうです。
コメントありがとうございます。
手動と自動の掛け合わせならもう少しうまくいくのですかね。
確かに自動運転はトラブルがいくつか出てますしね。