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論点がズレていた「パトカー逆走事故」、過失運転致傷で罰金30万の略式命令に。

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昨年ですが、愛知県警天白署のパトカー(非緊急車両)が一方通行を逆走して優先道路に無確認で進入して事故を起こしてましたが、

“タバコ少年”の追跡ルートは…パトカーが一方通行を『逆走』車と衝突し親子3人ケガ なぜ事故は起きたのか | 東海テレビNEWS
『“タバコ少年”の追跡ルートは…パトカーが一方通行を『逆走』車と衝突し親子3人ケガ なぜ事故は起きたのか』

この事故、「パトカーの逆走は合法なのか?」というどうでもいいところに論点を当てる人が続出。
逆走が事故の原因ではなく、非優先道路から優先道路に進入するにあたり無確認で進入した点が問題ですが、パトカーを運転していた警察官は過失運転致傷で罰金30万の略式命令になっていたそうな。

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問題は優先道路の進行妨害

※赤車両のサイズがおかしい点は気にしないこと

 

名古屋市天白区の市道交差点で昨年6月、愛知県警天白署のパトカーと軽乗用車が衝突し、軽乗用車の3人が重軽傷を負った事故で、パトカーを運転していた警察官(35)が、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の罪で罰金30万円の略式命令を受けていたことがわかった。事故から1年に合わせ、被害者側は署に再発防止策の構築などを申し入れた。

(中略)

名古屋区検は昨年12月12日付で、パトカー側の道路は建物で見通しが悪く、交差点前で徐行し、安全確認しながら交差点に進入すべきだったのにそれらを怠ったなどとして、警察官を略式起訴した。名古屋簡裁は翌13日付で罰金の略式命令を出した。

母子ら重軽傷事故、パトカー運転の警官に罰金の略式命令 名古屋簡裁:朝日新聞デジタル
名古屋市天白区の市道交差点で昨年6月、愛知県警天白署のパトカーと軽乗用車が衝突し、軽乗用車の3人が重軽傷を負った事故で、パトカーを運転していた警察官(35)が、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷…

被害車両側のドラレコ映像も出てますが、被害車両はさほどスピードが出ておらず、優先道路なので徐行義務もない。
通常なら過失割合はパトカーが90%ですが、優先道路対非優先道路の事故で非優先道路通行車を100%にした判例もまあまああるので、民事はどうしたのかわかりませんが過失運転致傷は有罪。

 

この事故、報道当初からおかしな方向に話になってましたが、事故の内容に「パトカーの逆走」はそもそも関係ない。
非優先道路から優先道路に進入するにあたり、確認を怠ったことが事故の原因ですから(36条2/3項)。

愛知県公安委員会規則では、「警察用車両のうち、専ら警ら活動のため使用する車両」については一方通行標識に従う義務がありませんので、逆走自体は問題がない。

 

優先道路の進行妨害が事故の原因なのに、「警察の隠蔽体質だ!」とか「警察が責任逃れのために逆走OKだとプレスリリースした!」みたいな話をする人すらいましたが、事故の原因は優先道路の進行妨害なんだから関係ないのよね。

 

そしてきっちり有罪。
優先道路に無確認で進入したら、そりゃそうなるわな。

優先道路の過失割合

優先道路:非優先道路の場合、基本過失割合は10:90。
ただし、一部の判例では信頼の原則から非優先道路側を100%にしている。

 

○名古屋高裁 平成22年3月31日

控訴人車は、優先道路を進行していたのであるから、本件交差点を進行するに当たり徐行義務(道路交通法36条3項,42条)は課されておらず、問題となるのは前方注視義務(同法36条4項)違反である。前方注視義務は、「当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等・・・に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」というものである。したがって、控訴人は、本件交差点を通過するに当たり、優先道路を進行中であることを前提としてよい。すなわち、交通整理の行われていない交差点(本件交差点もこれに当たる。)において、交差道路が優先道路であるときは、当該交差道路を通行する車両の進行妨害をしてはならないのであるから(同法36条2項)、控訴人は、被控訴人車が控訴人車の進行妨害をする方法で本件交差点に進入してこないことを前提として進行してよく、前方注視義務違反の有無もこのことを前提として判断するのが相当である。そうすると、優先道路を進行している控訴人は、急制動の措置を講ずることなく停止できる場所において、非優先道路から交差点に進入している車両を発見した等の特段の事情のない限り、非優先道路を進行している車両が一時停止をせずに優先道路と交差する交差点に進入してくることを予測して前方注視をし、交差点を進行すべき義務はないというべきである。本件においては、前示の事故態様に照らし、上記特段の事情は認められない。

 

名古屋高裁 平成22年3月31日

一審(名古屋地裁 平成21年12月16日)は10:90ですが、控訴審は0:100。

 

○静岡地裁 昭和52年7月20日

(一)  被告車の運転者である亡Bは、優先道路である県道を進行していたのであるから、交通整理の行われていない本件交差点の右側の見とおしが悪くとも、道路交通法第42条による徐行義務を負わない(最判昭和45年1月27日民集24巻1号56頁)ものと解すべく、しかも本件交差点の交通量が閑散であつた(前掲二第1号証の1によりこれを認める)ことを考慮すれば、同人が時速約36キロメートルで本件交差点に進入しようとしたことは、そのこと自体同人に過失があつたとすることはできない。

 

又、同人が原告車を発見したときの双方の位置及び交差点右側の見とおし状況を合せ考えると、同人は、原告車を発見しうる最初の時点においてこれを発見したものと認められるので、前方不注視の過失もなく、衝突を回避すべく急制動をかけた措置も適切と認められ、結局、同人には本件事故の発生につき過失がなかつたものとするのが相当である。

 

(二)  一方、原告車の運転者である亡Aは、交差点の手前に一時停止の標識が設けられていたのであるから、交差点直前の一時停止線において停止すべき義務(道路交通法第43条)があり、又交差道路が優先道路であるから、被告車の進行を妨げてはならない義務(道路交通法第36条第2項)があるにもかかわらず、そのいずれの義務も尽さず、本件交差点に進入した過失があり、本件事故はもつぱら同女の右過失によつて惹起されたものということができる。

 

4  なお、被告車に構造上の欠陥または機能の障害がなかつたとの抗弁事実は、原告らにおいて明らかに争わないところであるから、これを自白したものとみなす。

 

静岡地裁 昭和52年7月20日

映像を見る限り被害車両の運転に問題があったようには思えませんが、

母子ら重軽傷事故、パトカー運転の警官に罰金の略式命令 名古屋簡裁:朝日新聞デジタル
名古屋市天白区の市道交差点で昨年6月、愛知県警天白署のパトカーと軽乗用車が衝突し、軽乗用車の3人が重軽傷を負った事故で、パトカーを運転していた警察官(35)が、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷…

そもそも、パトカーはなぜ徐行も確認もしないまま優先道路に進入したのか原因はわかりません。
赤色灯+サイレンを鳴らして緊急車両化していても、徐行と確認は必要なわけで…緊急車両だったか否かも事故の原因とは関係がないはず。
無関係なところに論点が集中し、本質的なところは蔑ろにされた事故だったように思える。


コメント

  1. ゆき より:

    パトカーを運転しているのも普段は名古屋走りするドライバーだからとしか……
    パトカーの運転マナーは一般人よりは遥かにマシですが良いとは言えないです。
    特に緊急走行時の徐行による安全確認は微妙な感じ。
    先日の記事の栃木県小山市の事故と似た感じの、交差点に入る時だけ徐行で対向車線の死角に対するケア不足はよくある感じです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      名古屋走りだと、非優先道路を優先道路扱いにしそうですね笑

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