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「左方の一時停止車両」に対して、左方優先は働くか?

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ちょっと話に読者様から質問を頂いたのですが、以前記事にした記憶があるので改めて記事にするのはいいかな…と思ってました。
ちょっと違う観点から解説します。

信号機のない交差点は交差する道路の一方のみ一時停止指定されていることが特に住宅地では多いと思いますが、一時停止の指定がされていない方の道路を通行する車両(特にその道路に慣れている人)は、一時停止指定の交差道路から出ている車には、優先されているが如く優先的に通行する車が多いと思います。一方で一時停止指定がされている道路から来た車両はたとえ先に交差点に鼻先を出していたとしても、一時停止指定の側の車は、交差道路の車が少しでも見えていると、先に行かせる車両が多いと思います。
一方で道路交通法36条1項1号で左方優先が規定されていますが、ここには一時停止が指定されている道路のについては記載がないので、一時停止が指定されている側の道路としても、信号がない限りは左側の車両が優先されるような気がしますが、理解はあっていますか?

以下の動画の 6:22 あたりで、一時停止指定がされていない道路を「優先道路」としているようですが、そのような連続したセンターラインや標識はないですし厳密には優先道路ではないはずですが、一般的には「優先」として認識されているのが間違った解釈につながっているような気がしますが、気のせいでしょうか?

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「優先道路」は間違いです。
ただし、左方優先は働きません。

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「左方の一時停止車両」に左方優先?

要はこの状態で、A車は「一時停止&交差道路の進行妨害禁止」(43条)、B車は見通しが悪く優先道路がないので徐行義務になる。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない
優先道路とは交差点内にセンターラインがある場合を意味します。
「第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか」というのは、交差道路の進行妨害をした場合には36条2項の違反を適用するという意味。

問題なのはさらにB車に左方優先義務が働くか?

結論から言うと、左方優先義務は働かない。

 

違う観点から検討します。

昭和46年以前の43条

現行の43条は「一時停止&交差道路の進行妨害禁止」ですが、昭和46年以前はこうでした。

(指定場所における一時停止)
第四十三条
交差点に入ろうとする車両等は、公安委員会が道路又は交通の状況により特に必要があると認めて指定した場所においては、一時停止しなければならない。ただし、当該交差点において交通整理が行なわれているときは、この限りでない。

「交差道路の進行妨害禁止」が書いてない。

 

じゃあこの時代にこういうケースをどう処理していたのでしょうか?

左方優先で「A車」が優先なのかというと、違う。
判例は東京高裁 昭和41年11月22日(業務上過失致傷)。
事故の態様はこれ。

A車が被害車、B車が被告人。

ところで、道路交通法第35条第36条(昭和39年法律第91号による改正前のもの)が、交差点における互に違つた方向からこれに進入する車両相互間の優先順位を定めたものであるに対し、同法第42条は左右の見とおしのきかない交差点に進入する車両に対し総べての通行者との間の危険防止を目的として制定されたものであり、同法第35条第36条のように歩行者を除いた車両相互間の関係のみを規制したものではないのである。従つて、右法意に照らすと、たとえ、交差する車両に対しては優先する場合であつても、そのために同法第42条の一般徐行義務が解除されるものではなく、又同法第43条も公安委員会が特に必要があると認めて指定する交差点において、車両等に対して一時停止義務を課し(通行人にはその効力は及ばない)、これと交差する道路の車両等に優先通行を認めたに過ぎず、そのために優先車両に対し同法第42条の徐行義務までも解除したものとは解し難い。

東京高裁 昭和41年11月22日

一時停止規制した場合は交差道路が優先だとしていて、優先側の徐行義務は免除していないと説示
繰り返しますが、昭和46年改正以前の43条は一時停止を命じただけで、「交差道路の進行妨害禁止」とは書いていない。
しかし、

一時停止(A)vs徐行(B)の関係性においては、B車に優先権があるとしている。
他の判例もいくつ見ても、この関係性では左方優先なんて話題にもならず、一時停止規制側を劣後にしてます。
なので条文上は左方優先が残りそうに見えても、裁判所や警察はそのような考え方はしていないことに注意。

執務資料には双方の「進行妨害禁止」が打ち消し合うみたいに書いてありますが、警察や裁判所はそのような考え方をしていない。

残る問題

ただし問題なのは、

B車視点から、交差道路に一時停止規制があることを知る術がないこと。
一時停止標識はB車から視認不可能。

 

結局この問題って、

A車が一時停止&交差道路の進行妨害禁止義務、B車が徐行義務を果たしていたなら事故が起きるわけもなく、左方優先が排除されることは結果論なんでしょうね。
B車からすれば、徐行義務があり、左方優先義務もあると錯誤する。
しかしA車が一時停止している以上、B車は徐行しながらそのまま通過できる。

 

要はそれぞれの視点で見える範囲で義務を負い、結果論として「交差道路に一時停止があるからB車が優先だね」となるけど、B車視点からはA車に一時停止があるかないかはわからない。
ある意味ではこの話に似ている。

結果論で考えない道路交通法の義務と違反。
道路交通法の一部規定には、義務の発生と違反の成立が一致しないものがあると思ってまして、違反の成立を基準に考えるといろいろ間違う気がしてます。 今回はそんな話を。 合図車妨害 たぶんこれが顕著に出るのは合図車妨害禁止の話。 (左折又は右折) ...

結果的に違反になるかの問題と、義務の発生地点が違う。
A車が一時停止して、B車が徐行してれば事故は起きないのだから、それぞれの立場でやることをやりましょうというだけなんでしょうね。

一時停止と左方優先の関係性。
こちらについて。 「左方優先、一時停止」を読みました。 例によって執務資料道路交通法解説にちょうど同じような場面の解説があったのです が、よく読むと、 「この限りではA車が優先的に通行することになる」までは良かったのですが、その あとの、 ...

判例から言えるのは、一時停止がある場合には他の規定を排除して一時停止側が劣後します。
ちなみに東京高裁判決や最高裁判例を見る限り、見通しが悪い交差点で交差道路に一時停止規制があっても徐行義務が免除されない根拠として「歩行者の安全」を挙げてます。

本件のように、交差する双方の道路の幅員が殆んど等しいような場合には、一時停止の標識が存在しても、その存在しない方の道路を進行する車両等の運転者にとつては、その標識の存在を認識することは、必ずしも可能であるとは限らず、もし、右認識を有する者についてだけ、同法42条の徐行義務を免除することにすれば、当該交差点における交通の規整は一律に行なわれなくなり、かえつて無用の混乱を生ずるであろうからである。また、本件のように、あまり広くない道路で、しかも交差点の見とおしのきかない場合には、歩行者の安全も考慮しなければならないことは、原判決も説示するとおりであり、このことも前記解釈の根拠となり得るであろう。

最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日

徐行義務は、38条の2(横断歩道がない交差点の歩行者優先)を担保する規定だと解説しているものもあります。
これらから言えるのは、結果論にとらわれずに「見えている範囲で義務を果たしましょう」にしかならないのよね。

 

徐行と一時停止のパワーバランスを考えると、一時停止側が劣後すると捉えるのは当たり前。
しかしそれは結果論。
B車からは、A車に一時停止規制があるかは知りようがない。

コメント

  1. きゃばりーのらんぱんて より:

    日本では「左優先」は、あんまり重要視されない(しない?)傾向ですが、フランスでは「右側優先」が絶対的に重要視されるから注意しなさい!と、現地の方からアドバイスされてました。
    特にランナバウトが自分には鬼門で、侵入はランナバウトを旋回中の車からはこちらが右側になるのでスンナリ入れるのですが、旋回しだすとどんどん中心に追いやられて、外に出れなくなってしまいます。
    イギリスの郊外はランナバウトだらけですが、旋回中の車が優先で運転しやすかったです。
    基本的に両国ともランナバウトの侵入側に一旦停止の標識も義務もないので、特にフランスで運転される方は注意してください。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      海外の場合、譲れ標識による制御が強いのかなと思ってましたが、右方優先も強いんですね。
      フランスの法律は以前調べたことがありますが、ちんぷんかんぷんでしてw

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