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2輪車を押して歩くときの注意義務と、ケガさせた場合の責任。

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2輪車は押して歩くと歩行者扱いになりますが、わりと珍しい事例として2輪車を押して歩き歩行者をケガさせたものがあります。

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押して歩く2輪車と責任

わりと珍しい事例ですが、刑事事件です。
公訴事実はこれ。

被告人は、昭和58年6月4日午後3時10分ころ、東京都港区赤坂4丁目14番8号先の登り坂道路を一ツ木通り方面からコロンビア本社方面に向かい重量約164キログラムの自動二輪車を両手で押して惰力をつけながら登るに当たり、当時、進路前方約2.7mの地点に被害者(当時79年)が佇立しているのを認め、同人の側方を通行しようとしたが、同所は歩・車道の区別のない幅員約2.85mの狭隘な道路であった上、勾配100分の16の急な登り坂であったから、このような場合惰力によって、右自動二輪車あるいは自己の身体が、右被害者に接触する危険のあることが予測されたから警音器を吹鳴して自己の接近を知らせるはもとより、右被害者の動静を注視し、同人との間に安全な間隔を保持し、同人と接触しないよう安全を確認して進行するか又は同人の手前で一たん停止し、同人の避譲を待って進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、警音器を一回吹鳴したのみで、同人との間に安全な間隔をとらず、同人との安全を確認することなく、漫然時速約7キロメートルで同人の直近を進行した重大な過失により、自己の身体の左側を右被害者に接触させて同人をその場に転倒させ、よって同人に加療約6か月間を要する左大腿骨頸部骨折の傷害を負わせたものである。

検察官は重過失傷害(刑法211条後段)として起訴。
警音器を一度吹鳴しただけで漠然「歩行」したことは重過失だと主張している。

 

まあ、対高齢者だと転倒させると股関節骨折など重傷事故になってしまいますが、その点では被告人のプレイは迂闊だったかと。
接触が予見可能であれば注意義務があるのは当たり前ですが、問題なのは「過失傷害」と「重過失傷害」はだいぶ差がある上、過失傷害罪は親告罪。

 

裁判所は重過失傷害を否定してます。

ところで前示のように、急な登り坂の狭い道路で、しかも相当に重量のある自動二輪車を押し上げて歩行している被告人が、前方に佇立している人の直近を通行しようとするときには、その者の動き如何で同人と接触して転倒させるなどし、その身体に危害を加える可能性も予想されるのであるから、同人の動静を注視し、適宜停止ないしは同人との間に安全な間隔を保持するなどして進行すべき注意義務があるのであって、これを怠り、被害者を十分に注視せず、単に警音器を一回吹鳴させただけで、漫然被害者の直近を通過しようとした被告人には、被害者の負った前示傷害に対する過失責任を免れないというべきである。
しかしながら、前示の道路状況などに照らすと、被害者が被告人と接触して傷害までをも負うに至ることを、被告人が容易に予想しえたとまでは断じがたく、被告人の右過失が重大な過失とは評価しえないのであり、したがって、被告人の右所為が刑法209条1項の罪を構成することはあっても、同法211条後段の罪を構成することはないというべきである。

東京地裁 昭和61年3月12日

判決は「過失傷害罪で有罪」ではなく「管轄違」という珍しいものになっていますが、過失傷害罪は簡易裁判所の管轄なので地裁が勝手なことをすると違法だからです。

当たり前といえば当たり前

オートバイだけでなく自転車を押して歩く際にも、他人にぶつからないように注意して押し歩きするのは当たり前ですが、わりとちょっとの油断から全治6ヶ月の重傷事故になったりするのよね。
まさか「押し歩きは歩行者!道路交通法上、歩行者に注意義務はない!」などと言って好き勝手に押し歩きする人はいないだろうけど。

 

自転車の場合、押し歩きするときにペダルを引っ掛けることもあるから要注意。

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