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片側二車線、中央分離帯がある「信号がある横断歩道」は要注意。

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ちょっと気になる報道。

事故があったのは、釧路市昭和中央4丁目の押しボタン式の信号機がある横断歩道です。

12日午後1時前、横断歩道を渡っていた若い女性が、軽乗用車にはねられました。

警察によりますと、女性は頭から出血し、意識がもうろうとした状態で病院に運ばれました。

現場は片側2車線の直線道路で、警察は軽乗用車を運転していた中年の女を過失運転傷害の疑いでその場で逮捕し、事故当時の信号の色など詳しい状況を調べています。

押しボタン式信号機のある横断歩道で若い女性が軽乗用車にはねられ、意識もうろうとした状態で病院搬送 運転していた女を逮捕 北海道釧路市(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
12日午後、北海道釧路市で、横断歩道を渡っていた若い女性が軽乗用車にはねられ病院で手当てを受けています。事故があったのは、釧路市昭和中央4丁目の押しボタン式の信号機がある横断歩道です。


 

この事故の詳しい状況は不明なので評価しませんが、この横断歩道は要注意事項があります。

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残存横断歩行者

押しボタン式の信号がある横断歩道ですが、38条1項はあくまでも「適法に横断する歩行者を優先」する規定。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

青信号で横断開始したものの、途中で赤信号に変わってしまった「残存横断歩行者」は38条1項による優先対象です。
片側二車線、中央分離帯ありだと残存横断歩行者は起こり得る上に見逃すリスクがある。

 

38条1項って信号の有無が書いてないから勘違いしやすいけど、解釈はこう。

本来このような優先の規定は適法な歩行者にのみ適用になると解するのが当然のことであるので(注2)、今回の改正を機にこの区別を廃止したのである。

(注2)この点については、改正前の第71条第3号すなわち改正後の第38条第1項の規定についても、信号無視の歩行者に優先権を与えたものでないのは解釈上当然のことであると考えられていた。

「道路交通法の一部を改正する法律」(警察庁交通企画課 浅野信二郎)、警察学論集、p37、立花書房、1967年12月

歩行者に向けられた信号機の信号が赤であるためにそれが青になるまで待っている歩行者は、ここにいう「横断しようとする歩行者」に当たらない。

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月

青信号で「横断開始」した歩行者は適法横断歩行者なので、38条1項の対象。
ただし民事責任上は残存横断歩行者に対し過失相殺します。

実際の判例から

残存横断歩行者の判例はいくつかありますが、まずは刑事(業務上過失致死傷)。

 

○札幌高裁 昭和50年2月13日

論旨は要するに、原判決は、本件事故が被告人の前方注視義務および安全確認義務懈怠の過失に基因するものである旨認定するが、被告人は、本件当時前方に対する注視および安全確認を尽していたものであつて、なんらこれに欠けるところはなく、しかも、本件の場合、被害者側の信号は、計算上同人らが横断を開始した直後青色点滅に変つたものと認められるから、同横断歩道の長さ(約31.6m)をも考慮すれば、同人らは当然右横断を断念し元の歩道上に戻るべきであつたのである。青色信号に従い発進した被告人としては、本件被害者らのように、横断開始直後青色点滅信号に変つたにもかかわらずこれを無視し、しかも飲酒酩酊していたため通常より遅い歩行速度で、あえて横断を続行する歩行者のありうることまで予測して前方を注視し低速度で運転する義務はないから、本件には信頼の原則が適用されるべきであり、したがつて、被告人に対し前記のような過失の存在を肯認した原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認、法令解釈適用の誤がある、というのである。

(中略)

まず、被告人側の信号が青色に変つた直後における本件横断歩道上の歩行者の存否の可能性についてみると、司法巡査作成の「信号の現示と事故状況について」と題する書面によれば、本件横断歩道の歩行者用信号は、青色39秒、青色点滅4秒、赤色57秒の周期でこれを表示し、被告人側の車両用信号は、右歩行者用信号が赤色に変つてから4秒後に青色を表示すること、すなわち、被害者側信号が青色点滅を表示してから8秒後に被告人側信号が青色に変ることが認められるところ、横断歩行者の通常の歩行速度を秒速約1.5mとすると(交通事件執務提要305頁参照。)、歩行者は右8秒の間に約12m歩行することになるが、本件横断歩道の長さは前記のとおり31.6mであるから、歩行者がたとえ青色信号で横断を開始しても途中で青色点滅信号に変つたとき、渡り終るまでにいまだ12m以上の距離を残している場合、当該歩行者は被告人側の信号が青色に変つた時点において、依然歩道上に残存していることになる。
道路交通法施行令2条は、歩行者用信号が青色点滅を表示したとき、横断中の歩行者は「すみやかに、その横断を終えるか、又は横断をやめて引き返さなければならない。」旨規定するが、本件横断歩道の長さに徴すると、たとえ歩行者が右規定に従つてすみやかに行動するとしても、右残存者がでることは否定し難く、とくに本件交差点付近は前記のとおり札幌市内でも有数の繁華街「すすきの」に位置し、多数の歩行者が存在するばかりか、本件当時はその時刻からいつて歩行速度の遅い酩酊者も少なくないので、右のような残存歩行者がでる蓋然性は一層高いものといわねばならない

 

してみると、本件のような道路、交通状況のもとにおいて、対面信号が青色に変つた直後ただちに発進する自動車運転者としては、特段の事情のないかぎり、これと交差する本件横断歩道上にいまだ歩行者が残存し、なお横断を続行している可能性があることは十分に予測できたものとみるのが相当であつて、特段の事情を認めえない本件の場合、被告人に対しても右の予測可能性を肯定するになんらの妨げはない。そして、以上のごとく、被告人が本件交差点を通過するに際し、本件横断歩道上にいまだ横断中の歩行者が残存していることが予測できる場合においては、当該横断歩道により自車の前方を横断しようとする歩行者のいないことが明らかな場合とはいいえないから、たとえ、被告人が青色信号に従つて発進し本件交差点に進入したとしても、本件横断歩道の直前で停止できるような安全な速度で進行すべきことはもとより、同横断歩道により自車の前方を横断し、または横断しようとする歩行者があるときは、その直前で一時停止してその通行を妨害しないようにして歩行者を優先させなければならない(道路交通法38条1項なお同法36条4項参照)のであつて、被告人としては、いつでもこれに対処しうるよう、本件被害者らのような横断歩行者との接触の危険性をも十分予測して前方左右を注視し、交通の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があつたというべきである。

 

札幌高裁 昭和50年2月13日

 

○東京地裁 平成8年3月6日(民事)

歩行者は青信号で横断開始。

第1車線を通行していたオートバイは、対面信号が赤なので減速したものの、青に変わったことから加速。
その際に残存横断歩行者と衝突。

オートバイはそのまま滑走し、違法駐車車両に激突して死亡。

被告Xは、本件横断歩道を開始するに当たつては、対面する本件歩行者信号が青色であることを確認しているものの、横断歩行者としては、対面する同信号の表示に注意を払い、青点滅の状態になつた場合には、速やかに横断行為を完了するか、それが困難であれば、元の歩道に戻るか又は本件のような中央分離帯のある中間地点に退避するかの行動をとり、歩行者用信号が赤色になつた後に青色となる本件車両信号に従つて本件道路を通行する車両の通行の妨げにならないように配慮すべきであるにもかかわらず、途中で本件歩行者信号が青点滅から赤表示となつたことに気付くことなく漫然と歩行を継続したために、被害車と衝突するに至つたものであるから、被告Xには、周囲の交通状況に注視、配慮すべき安全確認義務を懈怠した過失が認められる。
他方、Aも、本件横断歩道に差し掛かつた段階で、本件車両信号が青色になつたからといつてそのまま加速、通過するべきではなく、信号残りの状態で横断しようとする歩行者の存在を念頭に置き、左前方のみならず、右前方の交通事情に対しても注意して走行すべきであり、特に、本件では、中央分離帯にある植樹の存在や第二車線上に停止していた4、5台の車両の存在により右前方の注視が困難なのであるから、十分に速度を落とした上で本件横断歩道を通過することが必要であるにもかかわらず、減速するどころかかえつて加速して走行していたことについて、安全運転義務懈怠の過失を認めることができる。

 

東京地裁 平成8年3月6日

本件事故の発生に対するY、X、Aの事故当事者の各過失の存在が認められるが、Aの死亡という最も痛ましい結果となつたのは、加害車に衝突したときの衝撃が強かつたことによるものであり、それはまさにAが加速した被害車の速度が高かつたことに起因すること、道路を走行する車両にとつては、横断歩道を歩行する歩行者の安全確保が最も重要な注意義務の一つであるところ、信号残り状態で横断しようとする歩行者であつても、これは遵守されなければならないのであり、右注意義務をまずもつて守らなかつたAの過失が本件事故の最大の引き金となつていることを考慮すると、本件において、過失相殺されるべきAの過失割合としては、55%とするのが相当である(残り45%のうち、被告らが負担すべき過失割合は、被告Xが15%、被告Yが30%とするのが相当である。)。

 

東京地裁 平成8年3月6日

事故の原因はわかりませんが

報道の件は原因がわかりませんが、多車線の広い横断歩道で中央分離帯がある場合、残存横断歩行者が発生しやすい上に見逃すリスクが高まります。
わりと大事なので注意したほうがいい。

残存横断歩行者の事例では歩行者側にも過失がつくことはありますが、過失相殺って自分の過失を無くすわけでもないのよね。


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