先日チラっと書きましたが、
なかなか不思議なのは、「グレーなことを問い合わせするとダメと言われるに決まっている!」みたいな主張をする人がそこそこいること。
そんなことはない実例まで挙げているのに、
全く同じ公安委員会遵守事項を持つ都道府県に以前確認したことがありまして、「ロードバイクに乗る人が常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで禁止しているわけではないけど、歩行者がたくさんいる歩車道の区別がない道路でドリンクを飲んだり、下り坂でスピードが出た状況で飲むわけじゃないでしょ?常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで規制したものではない」と言われまして。
広島県では自転車走行中に「サイクルボトル」から飲む行為が禁止に。こちらの記事にご意見を頂いたのですが、 広島県では県施行細則(公安委員会遵守事項、道路交通法71条6号)の改正により、自転車走行中にサイクルボトルからドリンクを飲む行為が禁止になるそうな。 ちょっとこれについて掘り下げようと思う。 公安委員...
フル無視して語り出す人はよくわからない。
そもそもその理屈って、「そういう場合もあるよね」程度の話でしかないのに、なぜか盲目的に信じる人がいるからややこしい。
自転車ライトの点滅問題
ある意味近い事例としては、自転車ライトの点滅問題。
点滅ライトが違反もしくはグレーだと思っている人は多いし、ライトメーカーの取扱説明書をみるとむしろ違反だと感じる。
では、警察庁や警視庁に問い合わせした実例を。
まずは警視庁(東京都)。
点滅式ライトの自転車が高速走行している件に対する御意見について、都の取組を御説明します。
まず、道路交通法第52条第1項では、自転車を含む車両等は、夜間、道路にあるときは、同法施行令第18条で定めるところにより、前照灯をつけなければならない旨が規定されています。
さらに、同法及び同法施行令を受けて、東京都道路交通規則第9条第1項第1号では、夜間10メートル先を照らすことができる明るさと、白色もしくは淡黄色の前照灯でなければいけない旨を規定しています。
したがって、夜間、自転車を走行する際には、点滅・点灯を問わず10メートル先を照らすことができる明るさと、白色もしくは淡黄色の前照灯をつけて走行しなければならず、御意見のあった点滅式ライトについて、この基準を満たしていれば違法ではありません。別紙 交通安全|東京都
このたびは、警視庁に対する御意見をいただき、ありがとうございます。
夜間における自転車の点滅式ライトでの走行について、警視庁の取組を御説明します。
点滅式ライトの使用自体は道路交通法等に違反するものではありませんので、同ライトの使用のみをもって取り締まることはできません。
なお、同ライトの角度や使用法等によっては、他の車両の運転者等をげん惑させるおそれがありますので、事故防止のため、引き続き、現場における指導を徹底して参ります。
今後とも、警視庁の活動に御理解と御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
(警視庁)
別紙 交通安全|東京都
幻惑灯火(道路交通法76条4項7号、公安委員会禁止行為)に抵触せず、前方10mを照らす白色もしくは淡黄色ライトであれば違反ではないとする。
警察庁(国)の見解はこちら。
前回回答のとおり、軽車両の灯火については、道路交通法施行令第18 条の規定に基づき、地域の実情に応じて、自転車の
運転者が前方を十分に視認できるよう、各都道府県公安委員会が定めることとされている。なお、道路交通法上、「灯火」には点滅も含まれ得る。各都道府県公安委員会が軽車両の灯火に関して定めた規定に該当するかどうかは、それぞれの都道府県公安委員会が判断すべきことであり、当庁が判断すべきものではなく、ガイドライン等を発出することは妥当ではない。具体的な事項については、前回回答のとおり埼玉県公安委員会に相談されたい。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/jyoukyou/2007/10/pdf2/vote/npa.pdf
グレーだと思っていることを行政に問い合わせしたら一律禁止になる…なんてことはないのよね。
刑罰法規解釈の話なので、違反だと断言することも問題があるわけ。
違反か違反ではないかを決める権限は本来警察にはなく、裁判所のお仕事ですから…。
ただし、警視庁が指摘するように幻惑灯火になりうる場合もあるので、眩しい使い方だと思ったときには停止させて注意指導することはあるでしょう。
違反になるかならないかの問題以前に、事故に繋がるおそれがあれば未然に注意指導することも警察さんの仕事ですし。
ただし、個人的にはフロントの点滅ライトは推奨しません。
理由はシンプルで、見えにくくなるだけでメリットが乏しいから。
ブルベと道路使用許可の問題
時々「ブルベは道路使用許可を取ってないグレーなイベントだ!」みたいな主張をする人もいますが、そもそも77条1項4号は「その他これらに類する催し物」をするときには道路使用許可を取れという規定ではない。
一般交通に著しく影響する「その他これらに類する催し物」をする際には道路使用許可を取れという規定。
とくに「一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」でなければならないという条件が置かれたものと考えるときは、それ(前述の「一般交通に著しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に与える支障の程度)は相当高度のものを指すと解さなければならない。
東京高裁 昭和41年2月28日
同種判例はいくつもありますが、道路交通取締法→道路交通法に変わった際の改正史や判例などを見る限り、ブルベが道路使用許可の対象だとは思えませんが、実際に問い合わせした実例はこうなる。
最近クラブの代表になった人は知らないと思うので説明しておくが、2009 年、当時の AJ 副会長だった納見さんが埼玉県警と警視庁に赴いた。ブルベを主催するにあたり、警察や所轄官庁に対して道路使用許可の申請や何らかの連絡などを行わなければならないのか確認を取った。結果、道路使用許可は不要で、するとすれば(しなくても良いが)、各警察署に事前連絡しておく程度との回答を得ている。
https://www.audax-japan.org/wp01/Documents/141108-board-meeting_v1.pdf
ある意味では「グレー」だという思い込みとも言えるし、グレーだとしても問い合わせしたら「一律禁止にしておくか」となるわけでもないのよね。
もちろん刑罰法規なので、法改正もなく判例を無視して警察さんの一存で勝手に解釈を変えることはできない。
道路交通取締法から道路交通法に変わったときに、わざわざ「一般交通に著しい影響を及ぼす」ことを条件に加えたことからもそう解釈するのは当然。
道路交通法(以下単に法という)第77条第1項第4号により公安委員会が定めることを委任されている行為の範囲は、法自体において明示するところの、一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為であることを前提とするものであることは、法文上疑をいれる余地がないばかりでなく、道路使用の許可に関し規定した旧道路交通取締法第26条が「左の各号の一に該当する者は命令の定めるところにより警察署長の許可を受けなければならない」としその第4号において「道路において公安委員会の定める行為をしようとする者」と規定して右法条に基づき公安委員会が定めることのできる行為の範囲を法自体で何ら限定していなかつたのに対しこれを現行法のように改正するにいたつた立法の沿革に徴しても明らかであるから、法第77条第1項第4号の規定により公安委員会が定めた行為であつても、一般にそれが法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為に該当すると解することができなければ、法定の要許可行為とならないことはいうまでもない。
東京高裁 昭和41年2月28日
単なる思い込み
「グレーなことを問い合わせしたら一律禁止の回答がくるに決まっている!」みたいな意見をいう人がそれなりにいてビックリしましたが、それはたまたまそういう場合もあるよね程度の話であって、原則論ではない。
現に広島県のサイクルボトルの記事については、「そうではない実例」まで挙げているのに無視だからなぁ…
全く同じ公安委員会遵守事項を持つ都道府県に以前確認したことがありまして、「ロードバイクに乗る人が常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで禁止しているわけではないけど、歩行者がたくさんいる歩車道の区別がない道路でドリンクを飲んだり、下り坂でスピードが出た状況で飲むわけじゃないでしょ?常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで規制したものではない」と言われまして。
広島県では自転車走行中に「サイクルボトル」から飲む行為が禁止に。こちらの記事にご意見を頂いたのですが、 広島県では県施行細則(公安委員会遵守事項、道路交通法71条6号)の改正により、自転車走行中にサイクルボトルからドリンクを飲む行為が禁止になるそうな。 ちょっとこれについて掘り下げようと思う。 公安委員...
点滅ライト問題もそうだし、ブルベと道路使用許可問題もそうだけど、行政に問い合わせしたらグレーがブラックに変わる…なんてことはなかった実例なんていくらでもあるし、施行細則の解釈も「常識的な範囲なら違反だと考えていない」と回答する都道府県もあるのが現実。
けど、謎の固定観念にとらわれているのか知らないけど、グレーなことを問い合わせしたらブラックに変わるのは当たり前だという考え方に執着する人もいるわけでして。
この問題って、全く同じ条文なのに都道府県によって解説が異なるところに問題があるのに、「問い合わせした奴が悪い」みたいな何の関係もない論点を持ち出す人はさっぱりわからん。
とりあえず誰かのせいにしておくか、みたいな他責思考ではないの?と疑問すらありますが、そうしたところで何も前に進まないのよね。
だってそもそも、「グレーなことを問い合わせしたらブラックだと回答するに決まっている!」ということが不正確なのだから。
こういう発想しかできない人が一定数いることを考えると、世の中には不正確なことを前提に話をしたがる人も一定数いるわけで注意しないとおかしくなるわな。
ひどいのだと、「グレーなことを問い合わせしたら禁止だと回答されることは小学生でもわかる話だ!」みたいなのもありましたが、
いや…そんなことはない実例を挙げている記事で、しかもそんなことはない実例なんていくらでもあるのに…
「小学生でもわかる」なんて強い表現にして、リアルな世界とは異なる話をされても、うわー…としか思わないのよね。
なんでもかんでも単純に図式化しようとする人がいるのは問題。
けど、この謎理論を信じる人は一定数いる気がする。
そんなもんケースバイケースで違うのは様々な実例を見ればわかりそうな話ですが、そういう主張をする人はやたら図式化したがり個別の問題と捉えないとか、そもそも情報を取捨選択しすぎているとか…
いろんなケースはあるだろうけど、リアルな世界とはかけ離れるのよね。
たまたまそういう場合もあるよね程度の話が、全てに当てはまるかのような錯覚に陥ってしまう。
とりあえず「質問した読者様が悪い!」みたいな謎ムードを作られても、その前提になる部分が不正確。
こういうのとかもそう。
広島県のドリンクボトル関連
世の中には
聞いちゃいけないこともあるのです許可を出す側は
原則NOとしか言いませんので— LinkTOHOKU (@LinkTOHOKU) September 3, 2024
NOと言われなかった実例を挙げているのに、「原則NOとしか言わない」などと語られても…
そもそも「許可を出す/出さない」の話ではないのに、なんでこういう人ってちゃんと読まないまま不正確な話を始めるのか不可解。
こういう人たちの謎主張により、本質的な問題となる「同じ条文なのに都道府県間で解釈が違う/温度差がある」が完全スポイルされましたが(笑)、笑うしかないわな。
しかし、仮にグレーだったとしてグレーをグレーのままにすべきという考え方も、問題を先送りしただけでしかないわな。
なお、同じ条文を持つ他都道府県の回答については、たった3都道府県ですが書いた通り。
行政と向き合うお仕事をすれば、「原則NOとしか言わない」という感想にはならない気がするけど(むしろ多いパターンは回答を濁すこと)、結局はちゃんと読まないまま持論を展開する人がいることが分かったのはある意味収穫かもしれません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
高はしです
グレーは仕方ないですよね〜。個別の事例ごとに判断すべきことがたくさんあるわけで。
よく言う「判例」だって、ホントに判例となってるものは、最判とメルクマールとなる高判の一部だと思うし。(判例ってより、判決文なのね)
くだんの点滅だって、あの説明からは、点滅が即違反とは言えないことに併せて、照らすことが出来るか?で判断される、ってことなので、まぁグレーって言うのか⋯。
判決文も、酷い作文のときもあるので、どこまで厳密に読み込むかは、アレなのですけどね〜
コメントありがとうございます。
ケースバイケースとしか言えないことはありますよね。あまり気にしないのも1つです。