なかなか興味深い記事がありました。
疑問に思っていることがありまして。
パリのレンタル廃止
パリでは昨年、住民投票の末レンタルの電動キックボードが廃止になりましたが、投票率が7.46%、しかも投票に行きにくい日程だったとの非難もあります。
個人所有の電動キックボードは禁止されていない。
パリでの事故件数ですが、2022年にパリで起きた事故件数は408件、死亡者3名、負傷者459名だそうな。
こちらの記事から数字を引用しました。
冒頭の東京新聞の記事では、なぜか昨年7月~今年5月分(つまり特定小型原付の施行開始から11ヶ月分)のデータを使ってますが、すでに警察庁は昨年7月~今年6月までの1年分のデータを公表してます。
特定小型原付の事故総数は218件。
分かりにくいのでまとめます。
相手当事者 | 件数(一年間) |
単独 | 78件(35.7%) |
4輪 | 67件(30.7%) |
歩行者 | 37件(16.9%) |
自転車 | 31件(14.2%) |
2輪車 | 3件 |
その他 | 2件 |
合計 | 218件 |
1年間の事故総数が日本全体で218件、パリ単独で408件。
日本全体といっても、164件が東京都(75%)、大阪府が38件(17%)、その他が16件。
東京都に集中しているのは単に普及している特定小型原付が東京都に集中しているのだろうと考えられますが、一番謎なのはこれ。
電動スクーターは、公共の場所のどこにでも放置されている、歩道で全速力で歩行者を追い抜いている、あるいは二酸化炭素排出量が少ないなどと、電動スクーターを批判する人たちから非難されている。誤って運転すると危険なこれらの二輪車は、セルフサービスであるかどうかにかかわらず、2022年にパリで408件の事故に巻き込まれ、当局によると3人が死亡、459人が負傷した。
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問題となっているのは、利用者のマナーの悪さだけでなく、観察された違法行為の数(歩道の交通、スクーター1台に2人の利用者、赤信号の無視、時には無秩序な駐車)でもある。
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パリの事例は、自転車レーンが未整備の道路にて歩道通行する電動キックボードが問題だったのか、インフラ整備しても歩道通行しまくるアホばかりだったのか、インフラ整備したから408件の事故で収まったのか(整備してなければもっとヤバかった?)、いまいち見えて来ない。
東京都とパリの規模を考えても、パリでここまで事故が多発した理由はなんでなんだろ。
単純に使う人が多ければ事故総数が増えるのは当たり前ですが、急速に整備を進めた自転車レーンとの関係性が気になる。
なぜ中途半端な資料を使うのだろう?
東京都内では1〜5月、電動ボード利用者が最も過失が重い「第1当事者」となった人身事故が56件発生。うち25%(14件)が飲酒運転だったことが分かった。1%程度の乗用車やバイクと比べて突出しており、気軽に乗れることが飲酒運転への意識を低下させているとの見方がある。
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「気軽に乗れることが飲酒運転への意識を低下させている」という指摘は、その通りでしょう。
だからさっさとアルコール検知器と電源を同期させて、アルコールチェッカーに引っ掛かった場合には電源が入らない仕組みにすべきだとだいぶ前から指摘している通り。
アホに順法を求めても意味がなくて、アホは物理的に遮断するのが基本。
けど若干疑問なのは、第一当事者のデータを使っている点。
特定小型原付の事故については、単独事故(自爆)が最も多いワケですが、
相手当事者 | 件数(一年間) |
単独 | 78件(35.7%) |
4輪 | 67件(30.7%) |
歩行者 | 37件(16.9%) |
自転車 | 31件(14.2%) |
2輪車 | 3件 |
その他 | 2件 |
合計 | 218件 |
1年分のデータがあるのに、「東京都内1〜5月の第一当事者」についてのデータを使っているのはよくわからない。
サンプル数が元々少ないのだから、さらに少ないデータとクルマの事故を比較するとさらに不正確になるような。
数字の大小についてはあまりあてにならないデータを比較しているように見えるので評価しませんが、「気軽に乗れることが飲酒運転への意識を低下させている」という指摘についてはその通り。
警察庁の有識者会議(パーソナルモビリティ安全利用官民協議会)は2023年3月7日、一応シェアリング事業者向けガイドラインが出している。
前記の対策に加え、シェアリング事業者は、その事業形態等に応じて、追加的な対策を併せて実施することが望ましい。
なお、その対策の一例は、次のとおりである。
・ 利用者による違反の検挙事例、当該違反に関する罰則、事故事例等の情報をウェブサイト、アプリケーション等を通じ、利用者に対して提供すること。
・ 飲酒運転を誘発するおそれが高い繁華街等の貸出拠点について、夜間の運用を停止すること。
・ 飲酒運転で検挙された者が利用した貸出拠点について、一定期間、夜間の運用を停止すること。
・ 夜間、繁華街にある貸出拠点に従業員等を配置して、アルコール検知器等を用いて、利用しようとする者が酒気を帯びているかどうかを確認し、酒気を帯びていることが確認された場合には、サービスを利用させないこと。
・ 貸出拠点や車体にアルコール検知器を設置し、利用しようとする者が酒気を帯びていることが確認された場合には車体の電源が入らないようにするなど、サービスを利用することができないようにすること。
・ 車体に GPS機能等を付加して通行場所を把握し、特定小型原動機付自転車が通行することができない歩道等を通行している可能性のある利用者を確認した場合には、アプリケーション等を通じて警告音により警告し、利用者に対して違反行為を停止するよう求めるか、又は電子制御により、車体を安全な方法で停止させること。
・ ドライブレコーダー等の映像記録装置に記録された映像を踏まえ、利用者に対して適切な指導や交通安全教育を行うこと。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/newmobility0503.pdf
「貸出拠点や車体にアルコール検知器を設置し、利用しようとする者が酒気を帯びていることが確認された場合には車体の電源が入らないようにするなど、サービスを利用することができないようにすること」とありますが、今のところこの仕組みは導入されていないはず。
技術的な問題なのか費用的な問題なのかはわかりませんが、クリーン性をアピールしたいならさっさと取り組んだほうがよい。
まあ、アルコールチェック闇代打ちサービスなんかが爆誕しそうな気もするけど。
数字の引用方法には若干疑問がある報道なのですが、違反総数にしても1年分が公表されているのに11ヶ月分を使う理由がよくわからない。
交通違反の検挙総数は1年間で25156件。
昨年7月の施行開始時は検挙件数が405件ですが、ピークは今年4月の4084件。
これは単純に利用者の増加に比例していると思われますが、違反内容の55%を占めるのが通行区分違反(逆走や歩道通行)。
謎なのは、特定小型原付=電動キックボードと捉えている点
個人的に謎なのは、特定小型原付=電動キックボードと捉えている点。
「Lime(ライム)」が日本市場に参入することをきっかけにしているから「特定小型原付=電動キックボード」という前提になってますよね。
特定小型原付については電動キックボードタイプよりも、すでに着座型の方向に向かっていると思うのですが…
着座型のシェアサービスはあまり多くはなく、ハローサイクリングの着座型くらいしか思い付かない。
あとはLUUPの着座型か。
最近販売された特定小型原付の注目モデルは着座型だし、そもそも「特定小型原付=電動キックボード」という価値観を捨て去ったほうがいい気がする。
個人的に気になっているのは、自転車レーンを急速に整備したとされるパリで事故多発した理由。
いまいちここがわからないけど、信号無視が大多数なら自転車レーンの存在は関係ない。
パリの事故について細かいデータはないのだろうか?
ちなみに、東京新聞にある「ある警察関係者」みたいな内容は信憑性があるのかないのか判断つかないので評価しませんが、わりと不思議なのは信憑性不明な情報でも信じる人が多いところ。
兵庫県のパワハラ問題にしても、「ある兵庫県関係者」に聞いた情報が知事寄りの人だったら意味がないことはわかると思うけど、「ある警察関係者」の意見と警察庁の意見が同じとはわからないので、そんなどうでもいいところより前向きな議論をした方がいいんじゃないかな。
「電動キックボードに乗る奴はアホばかりだから廃止しろ」と考える人もいるみたいだけど、そもそも電動キックボードは特定小型原付施行前から合法的に存在しているのだし、特定小型原付=電動キックボードではない。
「アホばかりだから廃止しろ」が通るなら、よっぽど自転車の方がアホばかりなんじゃないのか?と思ってしまいますが(ちゃんとしているあなたのことではありません)、「自転車はアホばかりだから廃止しろ」という主張を耳にしないのはなぜだろう。
ちなみにスペインのマドリードでもレンタル廃止になるようですが、
日本の場合、自治体が「レンタル廃止」にする権限はないはず。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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