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事故ったら「できる限り安全な速度と方法で進行してなかった」として36条4項の違反。

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読者様から質問を頂いたのですが、

読者様
読者様
時々管理人さんが指摘しているYouTubeについて質問があります。
この動画について。

優先道路を通行していた単車と非優先道路を通行していた車の衝突事故ですが、行政処分の解説で「単車は交差点安全進行義務違反」としながら、非優先道路を通行していた車の付加点数を「専ら運転者の不注意」だと解説しています。
単車に交差点安全進行義務違反があると説明しているのに、車が「専ら運転者の不注意」とするあたりが理解できないのですが(「専ら」なのに相手に違反?)、そのあたりを解説して頂けないでしょうか。

この質問についてはまた別の機会にします。
どこの話なのかもあえて今回は触れませんが、あそこの人、

事故が起きたら「できる限り安全な速度と方法で進行してなかった」として交差点安全進行義務違反(36条4項)になる

と説明している。
そもそも、ちょっと考えてみましょう。

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交差点安全進行義務

では質問です。
上下道路は交差点内にセンターラインがある優先道路なので徐行義務はなく(42条参照)、指定最高速度は50キロです。
左右の見通しはあまりよくありません。

 

①A車は指定最高速度の50キロで通行中、交差点なので念のため40キロに減速して通行しました。
無事交差点を通過しましたが、これは交差点安全進行義務違反になるでしょうか?

②A車は指定最高速度の50キロで通行中、交差点なので念のため40キロに減速したところ、非優先道路からクルマが飛び出してきて衝突し、X車の運転者がケガをしました。

A車がX車の飛び出しに気づける時点では、すでに回避可能性はありません。
時速20キロ以下なら回避できたけど、A車が時速40キロで交差点に進入したことは交差点安全進行義務違反になるでしょうか?

 

さて、交差点安全進行義務の話。

(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない

この規定は昭和46年改正で新設されたものですが、安全運転義務(70条)の交差点特別バージョンとして新設。
なので安全運転義務(70条)とは法条競合の関係にあり、交差点内では安全運転義務(70条)を適用せず36条4項を適用する趣旨。

 

で、読めばわかるように「事故の発生」が要件ではない。
事故に至る可能性がある速度又は方法を規制する趣旨。

 

「事故が起きたら違反」というのは様々な解説書や判例でも示されているように間違いですが、ちょっと考えてみましょう。



どちらも同じ交差点を通行し、どちらも同じ速度。
同じプレイをしながら、②は違反、①は違反ではないなんて条文上あり得ないわけよ。
事故が起きたことが違反ではなく、事故に直結するリスクが高い速度又は運転方法を規制しているのが交差点安全進行義務。
仮に時速20キロ以下ならこの事故を避け得たとして、

時速21キロ以上なら「事故の発生とは関係なく」交差点安全進行義務違反と言えるの?という話になってしまう。
優先道路なので徐行義務はないし、交差点進入以前に具体的な危険(飛び出しなど)も視認できない。
同じプレイをしながら、一方が違反、一方が違反ではないなんて条文に反してますし、そもそもこの発想が間違いなのでは?

事故が起きたら「できる限り安全な速度と方法で進行してなかった」として交差点安全進行義務違反(36条4項)になる

運転行為として速度又は方法を規制し違反を取り締まる規定なのに、同じプレイをしながら一方が違反、一方が違反ではないなんてあり得ないわけでして。

交差点安全進行義務違反の具体例

交差点安全進行義務違反の具体例を挙げてみます。
判例は東京地裁 平成28年12月9日、運転免許取消処分取消請求事件です。
まずは事案の概要。

 

原告は優先道路を時速60キロで進行していたところ、非優先道路から優先道路を横切ろうとした自転車と衝突。
公安委員会は交差点安全進行義務違反(36条4項)と付加点数(「専ら以外」13点)とし運転免許を取り消しに。

1 認定事実
掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件道路は,南西(α方面)から北東(国道○号線方面)にほぼ直線に伸びる片側一車線の道路であり,各車線の幅員は3.1mである。本件道路においては道路標識等により最高速度は指定されていないため,最高速度は60km毎時である。
本件交差道路は,南北に伸びるセンターラインのない幅員4.9mの市道であり,本件交差点において本件道路と交差している(以下,本件交差道路のうち,本件交差点から南に伸びる部分を「本件右方交差道路」という。)。本件道路は,本件交差道路に対して優先道路となっている。本件右方交差道路には,本件交差点の手前に停止線が引かれており,一時停止の交通規制がなされている。
本件道路をα方面から国道○号線方面に進行した場合,本件道路の右側に並行して本件道路より高い位置に常磐自動車道が設けられているため,常磐自動車道の土留めや樹木の存在により,右方の見通しは悪い。常磐自動車道の土留めは,本件交差点付近で切れており,土留めが切れた部分から,南に向けて本件右方交差道路が伸びており,本件右方交差道路は,常磐自動車道の下部に設けられたトンネルを抜けてさらに南に伸びている。
(2) Aは,本件事故当時,本件自転車を運転して,本件右方交差道路を南から北に向けて進行していたところ,本件交差点手前の停止線を少し超えた本件交差点手前の地点(以下「本件停止地点」という。)において一時停止した。
一時停止後,本件道路を国道○号線方面からα方面に向けて進行してきた1台の車両(本件車両の対向車線を進行していたことになる。以下「本件対向車両」という。)が,本件交差点を通過した。本件対向車両の通過後,Aは,本件自転車を発進させ,本件交差点に進入したところ,本件道路をα方面から国道○号線方面に向けて進行してきた原告運転の本件車両と,本件交差点の中の本件車両の走行車線(以下「原告走行車線」という。)上の地点(以下「本件衝突地点」という。)において衝突した。
本件停止地点から本件衝突地点までの距離は,4.7mである。
(3) 原告は,本件車両を運転して,本件道路の原告走行車線上をα方面から国道○号線方面に向け,約60km毎時の速度で進行していたところ,本件衝突地点の8.3m手前の地点において,本件交差点に進入してきた本件自転車を発見したため,急ブレーキをかけ,左ハンドルを切って本件自転車を避けようとしたが,間に合わず,本件衝突地点において本件自転車と衝突した

さて、これについて交差点安全進行義務違反を認めるかですが、被告(東京都)の主張は以下。

 

「ちゃんと前をみていれば余裕で回避できた」

(被告の主張)
ア 原告は,右方から本件交差点に進入してきた本件自転車に気付かなかったというのであるから,交差点の状況に応じ,交差道路を通行する車両等に特に注意しなかったといえる。そして,原告は,前方の安全を確認するという運転者としての基本的な義務を怠って本件交差点に進入し,その結果,本件事故を発生させたのであるから,原告に交差点安全進行義務違反が成立することは明らかである。
原告は,前方注視義務違反はないと主張するが,原告は,実況見分や司法警察員による二度の取調べにおいて,本件事故を起こした主たる原因は,自身が案内標識に気を取られていたことにある旨を供述しているから,原告に前方注視義務違反が認められることは証拠上明白である。
原告が案内標識に気を取られることなく,前方を注視しながら本件車両を運転していたのであれば,原告は,衝突地点から手前(α方面)に50m遡った位置からでも,本件交差点の手前で一時停止している本件自転車を容易に発見し得たものと認められる。そして,60km毎時の速度で走行する車両の停止距離は約33mとなるところ,衝突地点から手前(α方面)に33m遡った位置からでも,本件自転車の存在を容易に発見することが可能であったものと認められるから,同地点において急ブレーキ等の措置を講じていれば,本件事故を回避することは可能であった。
しかしながら,原告は,交差点安全進行義務を果たすことなく,本件車両を本件交差点に進入させたことにより,Aを死亡させる本件事故を惹起させたから,原告の交差点安全進行義務違反と本件事故の間には相当因果関係が優に認められる。

これに対し原告の主張は、「案内標識をみていたのはせいぜい2、3秒。自転車の発見が遅れた原因ではない」。
さて、裁判所の判断はこちら。

3 交差点安全進行義務違反の有無及び本件事故との間の相当因果関係の有無(争点2)について

被告は,交差点安全進行義務違反の具体的内容として,前方の安全を確認するという義務を怠ったこと,すなわち前方注視義務違反を主張するものと解される。そこで,以下では,まず,原告から見て本件自転車を視認することが可能であったか,仮に可能であったとした場合,視認可能な時点において適切な措置を執っていれば本件自転車との衝突を回避することが可能であったかを検討した上,これを前提として,交差点安全進行義務違反の有無及び本件事故との間の相当因果関係の有無について検討することとする

(1) 本件自転車の視認可能性及び結果回避可能性について
ア 本件自転車の視認可能性について
(ア) 証拠(乙14の写真④)によれば,本件視認可能地点から,本件停止地点に置かれた自転車及び本件交差点を視認することが可能であると認められる。
(イ) そこで,次に,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点における本件自転車の位置を検討する。
約60km毎時の速度で走行していた本件車両が50m走行するのにかかる時間は約3秒であるから,原告が本件衝突地点の8.3m手前の地点において急ブレーキをかけ,左ハンドルを切ったことを考慮しても,
本件車両が,本件視認可能地点から50m先の本件衝突地点に至るまでにかかる時間は3秒余りであったと認められる。
そこで,衝突の3秒余り前の時点における本件自転車の位置を検討すると,証拠(乙11)によれば,本件右方交差道路において本件自転車の後方を走行していた車両の運転者が,本件自転車が本件停止地点において一時停止した際,その後方において,ギアをニュートラルにし,サイドブレーキをかけて自らが運転する車両を停止させた事実が認められる。この事実からは,本件自転車が本件停止地点において停止していた
時間が相当程度あったことを推認できるから,本件停止地点から本件衝突地点までの距離が4.7mあり,その間を本件自転車が移動するのに一定の時間を要することも併せ考慮すれば,衝突の3秒余り前の時点に
おいて,本件自転車が本件停止地点に到達していなかったとは考え難い。
そうすると,衝突の3秒余り前の時点,すなわち,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点において,本件自転車は,本件停止地点において停止していたか,又は既に本件停止地点を発進して本件交差点に進
入していたものと認めるのが相当である。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)からすれば,原告は,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点において,本件停止地点において停止していたか,又は既に本件停止地点を発進して本件交差点に進入していた本件自転車を視認することが可能であったと認められる。
イ 結果回避可能性について
(ア) 本件視認可能地点から本件衝突地点までは50mという十分な距離があったことからすれば,本件事故当時に小雨が降っていたことを考慮しても(証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば,摩擦係数を濡れたアスファルトの0.45で計算した場合,本件車両の停止距離は約44mとなることが認められる。),原告は,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点以降,本件自転車の動静に応じて,必ずしも急ブレーキによらずとも適切な減速の措置を執っていれば,本件車両が本件衝突地点に到達する前に本件自転車が本件衝突地点を通過するなどして,本件車両と本件自転車との衝突を回避することが可能になったものといえる。
(イ) 前記ア及び上記(ア)を総合すれば,原告は,前方を注視していれば,遅くとも本件車両が本件視認可能地点に到達した時点において,本件停止地点において停止していたか,又は既に本件停止地点を発進して本件交差点に進入していた本件自転車を発見することができ,その時点以降,本件自転車の動静に応じて適切な減速の措置を執ることにより,本件自転車との衝突を回避することが可能であったと認められる。
ウ これに対し,原告は,原告走行車線の対向車線(以下,単に「対向車線」という。)を走る数台の対向車両の陰になって,本件交差点への進入を開始した本件自転車が見えなかった可能性が高いと主張するので,検討する。
(ア) 確かに,本件自転車が本件交差点への進入を開始する前に,対向車線(本件車両の進行方向を基準とすると,原告走行車線の右側を対向車線
が走っている。)上を走行する本件対向車両が本件交差点を通過しているため,原告から見て,一時的に,本件自転車が,本件対向車両の死角に入った可能性も否定できない。
しかしながら,本件車両も本件対向車両も本件道路上を互いに逆方向に進行し続けており,その間,本件車両から見たときの本件対向車両による死角は本件交差点から手前(α方面)に移動し続ける一方,本件自転車は本件停止地点に停止していたか,又は既に本件交差点への進入を開始し,死角の移動方向とは逆方向に動いていたはずであるから,本件車両の走行速度が60km毎時であったことも考慮すれば,本件自転車が本件対向車両の死角に入ったとしても,それは一瞬のことであったと推認される。そうすると,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点以降,本件自転車との衝突の回避が不可能になる時点までの間,ずっと本件自転車が,本件対向車両の死角に入り続けたとは考えられず,原告が本件自転車を視認することは可能であったと認めるのが相当である。
(イ) 次に,本件対向車両以外に,本件自転車に対する視界の妨げとなった対向車両が存在した可能性について検討する。
原告は,①対向車線は,国道○号線方面からα方面に向かう車両でかなりの通行量があり,大型車両も頻繁に通行している,②本件交差点の約200m先(国道○号線方面)に信号機の設置された十字路交差点が
あり(甲3の写真7,16),同交差点で赤信号により停止していた車両が青信号で一斉に発進して対向車線を走行するため,何台も続けてα方面に向けて本件交差点を通過することが多い(甲3の写真13から17まで),③このような車両の通行量を考えると,原告もAも本件事故直前まで互いの存在に気付かなかったのは,本件事故直前に互いの存在に気付かないほど多くの対向車両が,α方面に向けて本件交差点を通過したからであると考えるのが最も合理的である,と主張するが,推測を述べるものにすぎず,本件事故当時,本件対向車両以外に,本件自転車に対する視界の妨げとなった対向車両が実際に存在したことをうかがわせる事情とはいえない。
原告自身,平成26年9月15日の弁護士(本件訴訟の代理人)による事情聴取の際は,事故時には対向車両はなかったと述べていたものであり(甲8),同年11月11日の同弁護士との現場調査の際,対向車線
を車両が頻繁に走っている様子等を見て,対向車両の陰に隠れて本件自転車が動き出したのが見えなかったのではないかということに思い当たったというにすぎず(甲10,原告本人),実際に本件事故直前に対向車両が存在したことを目撃したわけではない。
むしろ,本件停止地点で停止していた本件自転車が,本件対向車両の通過後に本件交差点への進入を開始した事実は,少なくとも,本件対向車両の後続車両は存在しなかったことを推認させる事実であるといえる。
また,仮に本件対向車両以外に複数の対向車両が存在したとしても,上記(ア)と同様の理由により,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点以降,本件自転車との衝突の回避が不可能になる時点までの間,ずっ
と本件自転車が,これらの複数の対向車両の死角に入り続けたとは考え難い。
上記の検討からすれば,本件対向車両以外に,本件自転車に対する視界の妨げとなった対向車両が存在したとは認め難く,仮に対向車両が存在したとしても,原告が本件自転車を視認することは可能であったと認めるのが相当である。

(中略)

(2) 交差点安全進行義務違反の有無について
ア 前記(1)アのとおり,原告は,本件車両が本件視認可能地点に到達した時点において,本件停止地点において停止していたか,又は既に本件停止地点を発進して本件交差点に進入していた本件自転車を視認することが可能であったにもかかわらず,前記1(3)のとおり,本件衝突地点の8.3m手前の地点に至るまで,本件自転車を発見できなかったものである。この事実自体,原告が前方を注視していなかったことを推認させるといえる。
このことに加え,原告が,実況見分(乙3)及び司法警察員による取調べ(乙5,9)において,本件衝突地点の102.9m手前(α方面)の地点に差しかかったとき,225.3m先(国道○号線方面)の上方に設置されている案内標識が目に入ったので,その案内標識の方に気を取られながら走って行った,そして,本件衝突地点の8.3m手前の地点に差しかかると,突然,横断してくる本件自転車が目に入ったとの趣旨の供述をしていることをも併せ考慮すれば,原告は,前方にある本件交差点を注視しなかったため,本件衝突地点の8.3m手前の地点に至るまで,本件自転車を発見できなかったものと認めるのが相当である。
これに対し,原告は,本件訴訟において,本件交差点に近づくに当たって,ずっと前方を見ていたと主張するとともに,案内標識を見ていたのは,せいぜい二,三秒程度の極めて短い時間であったと主張し,これらの主張に沿う供述をする(甲10,原告本人)。しかしながら,60km毎時の速度で走行する車両の3秒間の走行距離は50mであるから,仮に原告が主張するとおり,案内標識を発見した3秒後に案内標識から視線を外していたとしても,その時点で本件衝突地点の52.9m手前の地点を走行していたことになるが,そうであるとすれば,これまでの検討に照らし,本件衝突地点の8.3m手前の地点に至るまで本件自転車を発見できなかったとは考え難い。また,原告は,陳述書(甲10)及び本人尋問において,本件道路から左折すべき道が分からなかったため,案内標識を確認したいと考えていたところ,上記の案内標識を発見したものの,遠すぎて地名は読めなかった,地名がどうなっているか注視したのは事実であるとの趣旨
の供述をしており,そうであるとすれば,原告が,案内標識を確認することに気を取られ,前方にある本件交差点を注視しなかったということは十分にあり得るというべきである。よって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
イ 上記アに加え,前記2の検討,前提事実(1)及び前記1(3)の認定事実を総合すると,以下の事実を認定できる。
すなわち,原告は,本件車両を運転して,本件道路を進行し,前方にある本件交差点に入ろうとするに当たり,本件交差点は,右方に本件右方交差道路がある十字路交差点であったから,本件右方交差道路から本件交差点に進入する車両等に特に注意し,できる限り安全な速度と方法で進行すべき義務があるのにこれを怠り,本件右方交差道路上の本件停止地点に停止し,又は本件右方交差道路から本件交差点に進入してきた本件自転車に気付かないまま,適切な減速の措置を執ることなく漫然と約60km毎時の速度で進行し続けたため,その後に本件自転車を発見した時点で衝突回
避のための措置を執ったものの,間に合わず,本件交差点において本件車両を本件自転車に衝突させたものである。
原告のこの行為が,法36条4項の規定の違反となるような行為,すなわち,交差点安全進行義務違反に該当することは明らかである。

要はこれ、案内標識に気を取られていたから衝突地点の8.3m手前の地点に至るまで被害自転車を発見できなかったけど、案内標識に気を取られることなく前方注視していれば50m手前で被害者を視認できたもの。
視認可能なのに前方不注視のまま進行したわけで、「できる限り安全な方法(前方注視)で進行しなければならない」(36条4項)に違反して事故を起こしたとなる。

 

交差点安全進行義務違反って刑罰法規なので、回避不可能な場合にも「事故を起こしたなら違反」なんておかしな解釈にはならないし、こんな感じで詳細に判断されるのよね。

 

もし「どう頑張っても直前まで視認不可能」だと判断されたなら、交差点安全進行義務違反は成立しない。

そもそもの勘違い

そもそも質問を頂いた元ネタの動画主。
刑事/民事/行政の区別がついてないし、違反と過失の区別もついてないから矛盾した説明内容になっている気がします。
優先道路通行車と非優先道路通行車の基本過失割合は10:90ですが、これは優先道路通行車にも何らかの過失が認められることが多いからこのような基本過失割合を設定している。
しかし、優先道路通行車に過失がない場合にも基本過失割合を適用するのは不合理なので、わりと優先道路通行車の無過失を認めた事例はあるのよね。
最近の判例でも。

なぜ?20キロの速度超過でも無過失?
こちらで書いた記事に質問を頂いたのですが、 比較的最近の判例ですが、優先道路を時速70キロ(指定最高速度50キロ)で通行中に、左方道路から優先道路に進入したクルマが衝突した事故があります(神戸地裁 令和3年9月9日)。 左方道路から優先道路...
優先道路vs非優先道路。優先道路通行車が無過失になることはあるのか?
優先道路通行車と非優先道路通行車が交差点で衝突した場合、基本過失割合はこうなります(ともに4輪車の場合)。 優先道路通行車 非優先道路通行車 10 90 優先道路を進行する上では見通しが悪い交差点でも徐行義務はなく(42条1号カッコ書き)、...

条文や判例とは異なる解説が目立つチャンネルなのでそもそも大丈夫なのか心配になりますが、「事故ったら交差点安全進行義務違反」などということは全くないので、結局はスピードと前方注視をしっかりしましょうとしか言いようがないのよね。
やるべき注意を払っていて事故に至ったのか、やるべき注意を払わず事故ったのかでは全く違いますから…

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