このような報道がありました。
弁護士の紀藤正樹氏(63)が25日「X」(旧ツイッター)を更新。自転車の交通ルール徹底を訴えた。
紀藤氏は路地裏を走る自転車が一時停止を無視して、通りに出て車に衝突する動画を貼付し「こういうのってもはや車のせいではないでしょう」と指摘。
その上で「車載カメラや監視カメラの時代に映像が残るようになりましたが、過去には膨大に『車側が悪い』と理不尽に批難された『冤罪』がたくさんあるのでしょうね。本当に絶望的になります」と嘆いた。
紀藤正樹氏 一時停止無視した自転車が車と衝突「もはや車のせいではないでしょう」(東スポWEB) - Yahoo!ニュース弁護士の紀藤正樹氏(63)が25日「X」(旧ツイッター)を更新。自転車の交通ルール徹底を訴えた。 紀藤氏は路地裏を走る自転車が一時停止を無視して、通りに出て車に衝突する動画を貼付し「こういうの
これの話らしい。
こういうのってもはや車のせいではないでしょう。車載カメラや監視カメラの時代に映像が残るようになりましたが、過去には膨大に「車側が悪い」と理不尽に批難された「冤罪」がたくさんあるのでしょうね。本当に絶望的になります。自転車の交通ルール徹底が必要、急務です。 https://t.co/nVsWVeDDhk
— 紀藤正樹 MasakiKito (@masaki_kito) September 24, 2024
事故 ドラレコ pic.twitter.com/C2qxLEGR5m
— タカ王子★ -旅人- 天空のキャンプ場 公開中 (@takaohjitabijin) January 12, 2023
一時不停止の自転車がアホという点は同意します。
これは優先道路がない交差点、しかも左右の見通しがきかない交差点なのでクルマには徐行義務(概ね10キロ以下)があり、徐行義務違反は明らかで徐行していたら回避できた事故なので過失運転致傷罪が成立する。
そもそも徐行義務が何のためにあるか理解することが必要です。
Contents
なぜ徐行義務があるのか?
今回は先に結論。
左右の見通しがきかない交差点で徐行義務を課す理由として、歩行者の安全を念頭にしているからという見解がある。
現在の徐行義務は「優先道路(交差点内にセンターライン)の場合」を除外してますが、
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
昭和46年改正以前は違いました。
現在と違い、「優先道路除外」とは書いていない。
第四十二条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの、道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近、勾配の急な下り坂又は公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めて指定した場所においては、徐行しなければならない。
この時代、42条の解釈に争いがありました。
②交差道路に一時停止がある場合、非一時停止側は徐行義務の除外ではないか?
これらは裁判で争われた。
車両等が道路交通法42条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その進行している道路が同法36条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度(同法2条20号参照)にまで減速する義務があるとは解し難いが、本件のように幅員約7.6メートルのあまり広くない道路で、これと交差する道路の幅員もほぼ等しいようなときには、これと交差する道路の方に、同法43条による一時停止の標識があっても、同法42条の徐行義務は免除されないものと解すべきである。なんとなれば、優先道路または幅員の明らかに広い道路を進行する場合には、その運転者にも、またこれと交差する道路を進行する車両等の運転者にも、当該交差点における優先通行の順位が明らかになっており、その間に混乱の生ずる余地が少ないが、本件のように、交差する双方の道路の幅員が殆んど等しいような場合には、一時停止の標識が存在しても、その存在しない方の道路を進行する車両等の運転者にとっては、その標識の存在を認識することは、必ずしも可能であるとは限らず、もし、右認識を有する者についてだけ、同法42条の徐行義務を免除することにすれば、当該交差点における交通の規整は一律に行なわれなくなり、かえって無用の混乱を生ずるであろうからである。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日
最高裁は当時の42条(徐行義務)の解釈として、優先道路/広路車の場合は徐行義務の除外だが、交差道路に一時停止がある場合については徐行義務があると判断。
要はこの解釈に至った理由なのよ。
なんとなれば、優先道路または幅員の明らかに広い道路を進行する場合には、その運転者にも、またこれと交差する道路を進行する車両等の運転者にも、当該交差点における優先通行の順位が明らかになつており、その間に混乱の生ずる余地が少ないが、本件のように、交差する双方の道路の幅員が殆んど等しいような場合には、一時停止の標識が存在しても、その存在しない方の道路を進行する車両等の運転者にとつては、その標識の存在を認識することは、必ずしも可能であるとは限らず、もし、右認識を有する者についてだけ、同法42条の徐行義務を免除することにすれば、当該交差点における交通の規整は一律に行なわれなくなり、かえつて無用の混乱を生ずるであろうからである。また、本件のように、あまり広くない道路で、しかも交差点の見とおしのきかない場合には、歩行者の安全も考慮しなければならないことは、原判決も説示するとおりであり、このことも前記解釈の根拠となり得るであろう。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日
同法第35条各項第36条第3項第4項は交通整理の行なわれていない交差点において、亙に違つた方向からこれに進入する車両間、或は路面電車との間における優先順位を定めた規定であるに対し、同法第42条は交通整理の行なわれていない交差点で、且つ、左右の見とおしのきかないものに進入する車両に対し、総べての車両並に通行者との間の危険防止を目的として徐行義務を課したものであり、前者の如く歩行者を除く車両相亙間の関係のみを規制したものではないのである。従つて、右法意に照らすと、左右の見とおしのきかない交差点においては、たとえ、交差する車両に対しては優先する場合であつても、そのために同法第42条の徐行義務が解除される訳のものではない。又、同法第43条は道路又は交通の状況により特に必要があると認めて公安委員会が指定した場所における車両等の一時停止義務を課し(通行人にはその効力は及ばない)、これと交差する道路の車両に優先通行を認めたに過ぎず、そのために優先車両に対し同法第42条の徐行義務まで解除したものとは解し難い。
東京高裁 昭和41年12月20日
最高裁が「交差道路に一時停止がある場合、徐行義務を免除」と認めなかった理由は、一時停止標識は交差道路側からは見えない上、一時停止義務は歩行者に及ばないことから歩行者の安全を考慮したものだとしたから。
歩行者も直前横断禁止があるとはいえ、生活道路では子供などは仕方ない面もある。
それらを考慮すると、非一時停止側は優先道路の場合以外は徐行義務を課さないと安全を確保できないのよね。
それを踏まえて
事故 ドラレコ pic.twitter.com/C2qxLEGR5m
— タカ王子★ -旅人- 天空のキャンプ場 公開中 (@takaohjitabijin) January 12, 2023
本来は一時不停止の自転車のために徐行義務を課しているワケではない気もするけど、要は結果論でみることが妥当なのか?なのよ。
クルマからすれば、歩行者が出てくるか、一時不停止の自転車が出てくるか、一時不停止のクルマが出てくるかは見えないのだからわからない。
だから徐行義務を課して警戒することにしたとも言える。
最高裁は「交差道路に一時停止標識があっても、優先道路じゃなければ徐行義務あり」としましたが、その判断理由として歩行者の安全を考慮しているとする。
結果的に歩行者なのかチャリカスなのかわからないから、一律警戒させたのが42条なのかと。
なお、警察庁はこの最高裁の判断に不満があったらしく、「広路車除外」を認めないために昭和46年に現在の規定に改正。
立法により論争を終わらせた形になる。
歩行者の安全を考慮したという解釈を見ると、結局は徐行義務って大事なのよね…
一説によると、左右の見通しがきかない交差点の徐行義務は38条の2(横断歩道がない交差点の歩行者優先)を担保するものとの見解もありますが、言われてみると確かにその通り。
一時不停止の自転車が悪いのは見りゃわかる。
クルマに過失がつく理由は、徐行義務違反があるから。
そして徐行義務を課す理由は歩行者の安全を考慮しているから。
ちなみに、きちんと徐行していたことを理由に無罪にした判例があります(大阪高裁S59.7.27)。
たまたま歩行者だから、たまたま自転車だから…というのは結果論の話。
結果論では事故は防げないのよね…
まあ、一時不停止で進入する自転車にはビックリするけど、他人に違反があることは、自分の徐行義務を帳消しにするワケではない。
要はこれ、両者違反なのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
この動画を観るたびに思うのが、オジサンの自転車が道路に出てから少なくとも2秒弱してから衝突してるので、自動車は前を見てないか全く警戒せずに田舎道を漫然と走ってきたとおもうんです。
農村の集落の田舎道でも50㎞/h爆走の軽トラも皆無では無いし、制限速度の40とか30㎞/hを守って、一旦停止でなく違法で無いからぶつかっても正義で許されるとの思考の運転手がいる事を認識していないと、一旦停止がいかに大切か思い知る結果がみえますね。
安全を他人任せにはしたくないです。
コメントありがとうございます。
この動画については明らかに双方ともに違反があるので、自分の違反を棚に上げて他人の違反を糾弾しても無意味なんですよね…