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「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」

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ちょっと前に取り上げた記事に質問を頂いたのですが、

横断歩道を通過した直後も横断歩行者に注意すべきか?
読者様から38条2項と対向車の関係について質問を頂いたのですが、それとはちょっと別の件を挙げてみます。 横断歩道を通過した直後の注意義務 今回は民事判例です。 事故の態様はこんなイメージ。 加害者は交差点を左折。 被害者は6才で、横断歩道付...
読者様
読者様
[3項にある「30条3号のほか」の意味を取り違えている人とかもいたような…]の取り違えとはどういう話ですか?
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。

30条3号は横断歩道手前30m以内での追い越し禁止。

(追越しを禁止する場所)
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分

取り違えとは何の話なのかと言いますと…

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「ほか」

なぜ38条3項にて「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」としているか?ですが、

※横断歩道がある前提で。

青車両が赤車両より前に出た場合、理屈の上では30条3号の違反と38条3項の違反が同時に成立する。
30条3号は追い越しにまつわる進路変更から側方通過までを規制し、38条3項は側方通過して前に出る行為全般を規制するのだから、両者は一部被る。

 

そして両者に重なる違反があった時に、どっちを適用して罰則を課すのか揉める原因になるから、「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」と付け足して「30条3号の違反があった時は、38条3項を適用せず30条3号を適用しますよ」という意味にしているわけよ。
つまり、意味合いとしては「30条3号の場合を除き」になる。

 

法律表現の「ほか」ってなかなかややこしくて、たまに「除き」の意味で使われる。
例えば43条後段。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

43条後段で「第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか」としているのは、優先道路の進行妨害があったときに43条後段と36条2項の違反が被るため、36条2項の違反があったときは36条2項を適用しますよという意味。
なので「36条2項の場合を除き」という意味合い。

赤車両に一時停止標識があった場合、一時不停止(43条前段)と優先道路の進行妨害禁止(36条2項)はそれぞれ成立するので、両者は併合罪となってます。
「第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか」というのは、事実上の意味は「第三十六条第二項の規定に該当する場合を除き」になる。
これは多数の解説書に書いてある通り。

その意味で考えると

3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。

「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」とあるから3項に対向車を含まない、みたいな話をする人もいますが、3項の立法趣旨として30条で規制しきれてない範囲を規制したのは警察学論集にある通り。
ちなみに46年改正以前の30条は、「追い越してはならない」となっていたため、横断歩道手前30m以内で「追い付く、進路変更、側方通過、前に出る」の全てが行われないと違反にならなかった点に注意。

 

現行法「追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない」

旧法「追い越してはならない」

 

この経緯は警察学論集(1967/12)や最新道路交通法事典(東京地検交通部)が詳しい。

 

で、38条3号で「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」としているのは、あくまでも「30条3号の違反があった時は、同時に38条3項の違反が成立しても適用せず30条3号を適用しますよ」という意味でしかない。
なのでこの表現が直接的に3項から対向車を除外する意味はなくて、

その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない

この表現に対向車を含むかの問題になる。
2項にて同様の表現を使いながら、3項は対向車を含まないというのは無理筋。

38条2項 38条3項
対象 横断歩道等又はその手前の直前で停止している車両等がある場合 横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分
義務 当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときその前方に出る前に一時停止 その前方を進行している他の車両等の側方を通過してその前方に出てはならない

???

 

もっとビックリしたのは、「その前方を進行している他の車両等」の「進行」とは前進しか含まないと主張する人もいるらしい。

 

通行と進行の違いは、こう。

通行 進行
前進、後退、横断、転回、右左折、停止などあらゆる状況 通行のうち、停止以外

たまに「通行と横断は別」みたいな珍説をみかけますが、

(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。

通行の中に横断が含まれるのは、63条の6~8を見ても明らかかと…
「通行禁止道路」をバックなら通れると思う人はいないだろうけど笑。
進行とは方向を問わず進んでいる状態なので、3項に対向車を含むかどうかは「その前方を進行している他の車両等の側方を通過してその前方に出てはならない」に対向車を含むかどうかの問題でしかない。

 

2項と同じ表現を使いながら意味が違うなんて、だいぶ無理筋だなあ…
他にも謎理論を語る人を見たことがあるけど、用語の意味を取り違えていたりするので信憑性がない。
法律表現の「ほか」って、意味を取り違えやすいから注意なのよね。
どの意味合いで使っているかは条文ごとに違うし。

コメント

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