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死角から急に飛び出しでも、横断歩行者優先なのでは?

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先日書いたこちらについてご意見を頂いたのですが、

なお、この判例は「見通しが良好な横断歩道」にて「被害者が小走り」という事案ですが、「高度な死角から被害者が小走り」だと判断が変わる可能性があります(もちろんその場合は減速具合が問われる)。
要はこの事故の事例(事実認定の下)で判断したものなので、その意味でも事実認定を確認しないと何の意味もない。

控訴審判決の読み方と、横断歩行者妨害の話。
民事(行政)の控訴審判決を、一審判決を読まずに解説する人がいるのはなかなか凄い。 民事(行政)の控訴審判決って、一審判決を引用して補正する形になってますが、控訴審の判決文においては 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理...
読者様
読者様
「高度な死角から被害者が小走り」だと判断が変わる可能性があります(もちろんその場合は減速具合が問われる)

高度な死角から歩行者が小走りでも、横断歩行者優先は変わらないのだから判断が変わらないのでは?

これ、原則としてはその通り。
高度な死角だろうと横断歩行者優先は変わらない。

 

ただまあ、仮にですよ。
横断歩道左右に高度な死角があり、見通しが悪いところを最徐行進行(概ね5キロ以下)していたときに、歩行者が走ってきてクルマの側面に衝突したとする。
ここまで減速していて、横断歩道の左右を注視していても防げなかった場合、果たして運転者に何の不注意(過失)があったと認定するかは疑問。

 

一応、このような行政判例もあります。

横断歩道等における歩行者等の優先に関する車両等運転者の義務等を定めているのは、道交法が、歩行者等の横断の用に共するための場所として横断歩道等を設け(同法2条1項4号、4号の2)、歩行者等に対しては、横断歩道等がある場所の付近においては、当該横断歩道等によって進路を横断しなければならない義務を課していること(同法12条1項、63条の6)との関係で、歩行者等が横断歩道等を横断するときには歩行者等の通行を優先してその通行の安全を図るべきものとし、その横断歩道等に接近する車両等に対して、歩行者等の通行を妨げないようにしなければならない義務を課したものと解される。このような道交法の規定及びその趣旨に照らせば、同法38条1項にいう「横断し、又は横断しようとする歩行者」とは、横断歩道上を現に横断している歩行者等であるか、あるいは、横断歩道等がある場所の付近において、当該横断歩道等によって道路を横断しようとしていることが車両等運転者にとって明らかである場合の歩行者等、すなわち、動作その他から見て、その者が横断歩道等によって進路を横断しようとする意思のあることが外見上明らかである歩行者等のことをいうと解するのが相当である。

 

(中略)

 

原告は、道交法38条1項は、横断歩道等に「接近する」車両等に適用される規定であって、横断歩道上を既に進行中の車両等に適用される規定ではないから、原告車両が本件横断歩道上の進行を開始した後に本件車道の横断を開始した本件被害者は、「横断し、又は横断しようとする歩行者」に当たらないと主張する。
しかしながら、前記(2)で説示したとおり、原告車両と本件被害者は、本件横断歩道上か、又は本件横断歩道に極めて近接した地点で衝突しているのであるから、原告車両が本件横断歩道に接近した時点では、本件被害者は既に本件車道の横断を開始していたか、又は横断しようとしていることが明らかな状態にあったことが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。また、仮に、上記のような推認が及ばないとしても、横断歩道等によって道路を横断する歩行者等の安全を図るという道交法38条1項の趣旨に照らせば、車両等が横断歩道等を通過中に、その車両等の進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等が現れた場合であっても、例えば歩行者等が急に飛び出してきたなど車両等運転者が注視していても歩行者等の通行を妨げない行動に出ることが困難な場合を除き、車両等運転者は、同項に基づき歩行者等の通行を妨げないようにする義務を負うものというべきである。

 

東京地裁 令和元年12月19日

この判例は、刑事事件で「事故現場が横断歩道上か?横断歩道直近か?」が争われ、後者で確定(有罪)したことから「38条1項違反は成立しない」と主張した行政事件。

 

クルマが横断歩道を「通過中」でも

車両等が横断歩道等を通過中に、その車両等の進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等が現れた場合であっても、例えば歩行者等が急に飛び出してきたなど車両等運転者が注視していても歩行者等の通行を妨げない行動に出ることが困難な場合を除き、車両等運転者は、同項に基づき歩行者等の通行を妨げないようにする義務を負うものというべき

仮に最徐行進行し左右注視していても防げなかった場合ならこの判断もその通りなんですが、

管理人
管理人
現実的に事故になったケースは、減速不十分もしくは左右注視不足が容易に認定されるので、理屈の上ではこのようなこともあり得るけど現実には無いに等しい。

一時停止後に横断歩行者と接触した事故について、被告人の過失を否定した業務上過失致傷判例もありますが、

無罪になった判例から学ぶシンプルな話。
日本の刑事司法は99%以上の有罪率を誇りますが、過失運転致死傷罪はたまに無罪判決があります。 無罪だったね良かったね!で済ませたら、何の意味もありません。 無罪判決にも学べるポイントがあります。 横断歩行者妨害事故 横断歩行者妨害事故で無罪...

この事実認定の下では、最徐行し歩行者を注視していた被告人に過失は認められない。
ただまあ、この判例はだいぶ特殊事例でして、ほとんどの場合は「一時停止してない」、「減速が甘い」、「左右注視不足」なのよね。

 

法は不可能を強いるわけではないので、高度な死角を最徐行し左右注視をしっかりしていたけど事故ったなら…という話になりますが、そこまでしっかりしてないケースがほとんど。
なので理屈の上ではあり得るけど、現実的には無いに等しい話なのかも。

 

今回挙げた東京地裁の事例にしても、どのような事実認定の下で下された判断なのかわからないと、何を言わんとしているかよくわからないのよね。
気になる方は頑張って探して読みましょう。
たぶん公立図書館にいけば、判例検索を使えるところもあるので。

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