以前書いた記事(順走自転車と逆走自転車の過失割合)についてご意見を頂いたのですが、

何を言いたいのかよくわかりませんが、「基本過失割合から修正して70:30」であれば、基本過失割合を適用していることになるわけでして…
基本過失割合から修正要素を加味するのはあらゆる事故で当たり前の話。
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要は「それぞれの事案次第」
こちらで挙げてますが、

そもそも自転車同士の事故って、基本過失割合が設定されてないパターンもあるし、事案の中身次第でこんだけ変わるのよ。
判例 | 順走 | 逆走 | 備考 |
横浜地H17.1.31 | 100 | 0 | 歩車道の区別がある片側一車線道路 |
大阪地H28.9.16 | 40 | 60 | 河川敷、逆走自転車は12歳・無灯火・2人乗り・友人と並走 |
東京地H6.10.18 | 75 | 25 | 生活道路 |
大阪地H30.11.16 | 40 | 60 | 狭い自転車道 |
東京地H20.6.5 | 50 | 50 | 片側二車線の幹線道路、逆走自転車は歩道から車道にノールック降臨 |
大阪地R1.9.12 | 0 | 100 | 幹線道路、順走側は原付 |
大阪地H14.6.11 | 0 | 100 |
これらからいえるのは、個別に状況を判断しているので逆走自転車の過失は0~100%まであるし、順走自転車の過失も同様です。
例えば横浜地裁 平成17年1月31日判決については、事故現場がここ。
事故態様はこう。
過失割合はこちら。
順走自転車 | 逆走自転車 |
100 | 0 |
なぜこうなるか?ですが、この事故については逆走自転車が停止してやり過ごそうとしていたけど、順走自転車が前方不注視のまま突っ込んできたから。
自転車はそもそもスピードが速くない前提になっているので、こんなレベルも回避できないのは重過失扱いされても何ら不思議ではない。
この判例があらゆる「逆走自転車事案」に当てはまると考えるのは、当然的外れですね。
で、その弁護士さんがどんな見解を述べているのか詳しくは知りませんが、例えば50:50を基本過失割合と判断した実例においても、前提は「狭い道路」。
足踏み式自転車においては、左側通行が徹底されているとはいえない現状であること、足踏み式自転車においては通常速度がそれほど速くないことから、自己の進路上に対向する足踏み式自転車が存在したとしても、停止や回避の措置により衝突を回避することは極めて容易であることなどを考慮すると、本件道路のような狭路で自転車が正面衝突した場合、過失割合は、基本的には五分五分と考えるべきである。
大阪地裁 平成28年9月16日
とはいえ、
①左側通行が徹底されているとはいえない現状
②足踏み式自転車においては通常速度がそれほど速くないことから、自己の進路上に対向する足踏み式自転車が存在したとしても、停止や回避の措置により衝突を回避することは極めて容易
については多くの事例に当てはまる話。
逆に「極めて容易とは言い難いケース」は別でしょう。
とりあえず思うのは、示談交渉で折り合いがつかないなら裁判するしかなく、実際の裁判でどのような過失割合が認定されたか?を確認しないから水掛け論にしかならないのでは?
判例を見る限り、50:50をベースにしたものもあるし、ベースにしてないものもあるし、事案次第で変わるとしか言いようがないのよね。
思うに
わりとややこしいのは、逆走自転車と衝突した順走自転車が書類送検されている事例すらあること。
今後自転車の違反に青切符が導入されても、事故の場合には青切符が適用されず書類送検になるわけでして…

とりあえず持論と持論をぶつけたところで堂々巡りにしかならないし、それなら逆走自転車事案の判例をたくさん集めて検討した方がいいと思いますが、判例上はどちらも0~100%まである。
それが現実。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
いつも参考にさせていただいています。
以前から気になってはいたのですが、質問してもいいでしょうか?
まぁ恐らく設置した時のミスだとは思うのですが、自転車の走行中にこのような一方通行の道を逆走した時に違反か否かを解説してほしいです。
https://maps.app.goo.gl/fjEtxJm4tM7znzun9?g_st=ac
一方通行(自転車を除く)を逆行するように走っていると、右側に一部(自転車を除く)の補助標識がついていない一通の標識が見えてきます。
これは自転車で逆行している人は、その標識を確認するまで走ってきたところが一方通行だとは認識できないのではないのでしょうか?
つまり知らない間に逆走しているという。
さすがに違反ではないと思うのですが、解説いただきたいです。(笑)
コメントありがとうございます。
すみません、Googleマップ上はかすれた補助標識があるようにみえますが、補助標識がないのではなく補助標識がかすれて視認できないという話でしょうか?
言葉足らずでした。
かすれた補助標識の次の標識には補助標識がありません。
あっ、わかりました。
結論からいうと、要は一方通行の矢印標識は交差道路を進行する車両に対し指示するだけで、この方向を通行する車両に対する規制をしたいなら通行禁止標識が必要になります。
補助標識の不備は好ましくありませんが、実務上は影響しないかと。