改正18条4項について質問を頂いたのですが、
これ、立法者の意図とは違う解釈をしてしまう人が多い気がする。
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「できる限り」の意図
立法者の見解です。
第213回国会 参議院 内閣委員会 第14号 令和6年5月16日
○酒井庸行君 いわゆる例外という部分で、これもそういう規定があるんでしょうけれども、これもある意味では大変危険な部分もあるのかなというふうに感じます。
またこれはそれぞれの皆さんからもいろんな形で質問はあるというふうに思いますけれども、次にもう一つ、私がちょっとうんっと思ったのは、今回のその法改正の中で、この十八条にあるんですけれども、当該の特定小型原動付自転車等はできる限り道路の左側端に寄って通行しなきゃならないと書いてあるんです。できる限りという表現が、よく、曖昧のような気がするんです。その辺をまたちょっと、御説明をしていただける時間、大臣に質問する時間がなくなっちゃうので短くお願いしたいと思いますけど、その辺をちょっとまずお伺いしたいと思います。○政府参考人(早川智之君) 自転車の側方を自動車が通過する場合のその義務に関する規定についての御質問でありますが、先ほどお答え申し上げたように、元々自転車は車道の左側端を走行しなければならないというような規定がございます。自動車が側方を通過する際は、自転車は元々車道の左側端、走行しておるんですが、可能であれば、可能な範囲で左側端に走行してくださいということで、本来、もう元々左側端を走行しているのであればそれで十分であるというような規定の趣旨でございます。
18条1項に基づき「左側端に寄って」通行しているなら「できる限り左側端」を満たすとしている。
問題なのは、なぜ「左側端に寄って」と「できる限り左側端に寄って」が同じなのか?
例を挙げます。
「給食は残さず食べなければならない」
「給食はできる限り残さず食べなければならない」
どっちが厳しいかと言われたら、前者。
前者は問答無用に残すことを禁じていますが、後者はやむを得ない事情があるなら仕方ないというスタンス。
要は「できる限り左側端に寄って通行しなければならない」(18条4項)は、「左側端に寄って通行しなければならない。ただし道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない」(18条1項)と同じ意味になる。
左折方法(34条1項)も「できる限り左側端に寄って」とありますが、これも意味は同じ。
「できる限り道路の左側に寄る」というのは、本来は、道路の左側端に寄ることが望ましいわけであるが、その車両の左側にさらに左折しようとしている車両がある場合、道路の左側端に障害物がある場合等を考慮して、「できる限り左側に寄る」とこととした。
宮崎清文、条解道路交通法改訂増補版、立花書房、1963(昭和38年)
「できる限り道路の左側端に寄り」とは
(イ)「できる限り」とは
その場の状況に応じ、他に支障のない範囲で可能な限り、行えばよいとの趣旨である<同旨 法総研125ページ 横井・木宮175ページ>。
左側に車両等が連続していたり、停車中の車両等があって、あらかじめ道路の左側に寄れなかった場合には、たとえ直進の位置から左折進行したとしても、本項の違反とはならないことになる<横井・木宮175ページ>。東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
なぜか「できる限り」が付いたほうがよりモリモリ食えよという意味と勘違いする人がいるけど、警察庁がなぜ上記の答弁をしたのかはそういう理由。
できない事情があるなら仕方ないというスタンスで「できる限り」をつけたわけ。
つまり改正18条4項は18条1項と同じ内容ですが、要は18条1項には罰則がないため、わざと追い抜き妨害するために左側端に寄らずに通行する自転車がいたら困る。
改正18条4項は一定のケースにおいて18条1項に罰則を設けただけで、解釈は何ら変わらないことになる。
ウッディタモリのデマ
先日からウッディタモリがデマを拡散してますが、
自転車が通行すべき幅は、道路構造令で、左側端から1mと決まっているのです。
自転車は、その幅で、ゆっくり走るものです。
ロードバイクで、高速で走ることは、想定されていないと思います。 pic.twitter.com/3I3IFAQ37d— ウッディモリタ (@woodymorita) October 31, 2024
なんでこの人ってカジュアルにデマを使うのか知りませんが、道路構造令では自転車通行帯は原則1.5m以上で、やむを得ない事情がある場合に1.0mに縮小できるとしている。
第九条の二
3 自転車通行帯の幅員は、一・五メートル以上とするものとする。ただし、地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合においては、一メートルまで縮小することができる。
道路構造令では「1.5m以上」とあるのに、例外規定の「1m」を持ち出し「道路構造令で、左側端から1mと決まっているのです。」という程度にデタラメを語ってますし、改正4項の「できる限り」についても理解してない様子。
自転車が、ちょっと中央寄りを走って、後続の車両が追越しをかけにくい状況をつくる「対抗策」とやらは、道路交通法18条に違反します。
改正道路交通法(R6法律34号)では、自転車が「できる限り左側端に寄って」通行する義務が、明文化されました(18条3、4項)。
「執務資料」は参考になりません。 https://t.co/4NFppF9u0V pic.twitter.com/QaZ09pGDiM— ウッディモリタ (@woodymorita) October 29, 2024
ド素人の独自見解は話にならないし、有識者の見解や条文と異なる話をする人なので、正しく理解するスタンスではなくデマの人と捉えるしかないのよね。
根拠のない話には十分注意しましょう。
「道路構造令では1mと決まっている!」と主張しても、わざわざ「原則」を無視して「例外」を引用するような恣意的な情報操作をする人だし、さっさとブロックするのが正解。
まあ、うちの記事を彼に送りつけた方々が何名もいるようですが、正しい内容は彼にとっては都合が悪いからブロックされるわな笑。
なおうちで引用した書籍等に疑義がある方は、原典を確認してください。
原典を確認できるように引用元を明示しているので。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
できる限りというのは、前提としてその人にとって安全に走行が出来ると考えられる範囲ですしね。
コメントありがとうございます。
法は無理難題を押し付けるものではないし、「できる限り」を取り違える人が多いんですよね。
ウッディ某氏、弁護士の方に対してまで、「お説教」してる。
と思ったら、ウッディ氏以外にも、この弁護士の方のツイートにケチ付けてますね。
なえ、みんなそんなに自信があるのでしょうか。
コメントありがとうございます。
自信を持つことと、過信することは違うという典型例なのかもしれません。