赤信号無視はともかくとしてご冥福を。
3日夜、広島市内で車とバイクが衝突する事故があり、バイクの後部座席に乗っていた高校生(17)が死亡しました。
事故があったのは広島市中区舟入中町の国道2号です。警察によると3日午後11時45分ごろ、交差点を右折中の普通乗用車と直進のバイクが衝突。バイクの後部座席に乗っていた廿日市市に住む男子高校生(17)が頭を強く打ち死亡しました。運転していた男子高校生(17)も手首を骨折する重傷です。警察はドライブレコーダーの映像などから、バイクが赤信号で交差点に進入したとみています。
車とバイクが衝突 バイクの後部座席の高校生(17)が死亡 バイクが赤信号で進入か 広島市中区の国道2号(広島テレビ ニュース) - Yahoo!ニュース3日夜、広島市内で車とバイクが衝突する事故があり、バイクの後部座席に乗っていた高校生(17)が死亡しました。事故があったのは広島市中区舟入中町の国道2号です。警察によると3日午後11時45分ごろ
話を整理すると、直進バイクが赤信号無視で交差点に進入し、右折車と衝突した。
その結果バイクの同乗者が死亡、バイクの運転者がケガ。
ところで、バイクの同乗者が被害者になりますが、運転行為でバイクの同乗者を死亡させた人(いわゆる加害者)は誰になるのでしょうか?
これ、バイクの運転者と右折車ドライバーの両方です。
一般的に想定されるケースを考えてみます。
バイクの運転者 | 右折車ドライバー | |
刑事 | 信号遵守を怠り交差点に進入し右折車に衝突した過失により過失運転致死罪が成立する | 「特別な事情」がない限り、信号無視する車両を予見する注意義務はない(最判S43.12.24)ため、通常は不起訴 |
行政処分 | 信号無視+専ら不注意の付加点数 | 回避不可能なら点数無し |
民事 | ? | ? |
これ、書類送検(過失運転致死)はバイクの運転者と右折車ドライバーになりますが、過失運転致死罪に問われる可能性が高いのは信号無視したバイク運転者。
信号を見落としたのか、行けると軽信したのかはわかりませんが、同乗者を死亡させた罪に問われる。
お友達なんでしょうから、悲しい。
けどこれが日本の司法。
右折車ドライバーも過失運転致死傷で書類送検されますが、信頼の原則が働く場合と思われるため、「特別な事情」を立証できなければ無罪になる。
なので通常は不起訴。
本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
いわゆる安全運転義務違反についても、信号無視する車両を予見する注意義務がない前提で考えるので、回避可能だったとかじゃない限り右折車ドライバーには点数がつかない可能性が高い。
以前取り上げたこちら。
動画主の話によると、過失運転致傷で書類送検(不起訴)、点数はなんらつかずゴールド免許のまま、民事は右折車過失20%。
民事で「安全運転義務を怠った過失」がつくことと、刑事/行政で安全運転義務違反が成立することは別問題。
信号無視して同乗者を死亡させたことはおそらく本人も悔やんでいるでしょうけど、なんか切ない気持ちになるのは私だけでしょうか?
なお、理屈の上では民事責任上、バイク運転者も右折車ドライバーも加害者なのでどちらに対しても損害賠償請求は可能。
まあ、右折車に過失があるかはビミョーだし、バイク運転者に請求することになるだろうけど、こういう事故って防げた事故のはずなのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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